Case Study
GMのCIOが語る「ITはビジネスで主導的役割を果たさねばならない」
今日のITは、積極的にイノベーションを推進する必要がある。そうした主導的役割を担うためには大きな変革が求められ、勇気を持ったCIOが求められる――。フォレスターリサーチ主催のフォーラムで、GMのCIOとプロクター&ギャンブルの元CIOがそれぞれの体験を語った。
フォレスターリサーチのアナリストによると、従来のIT部門は、企業の各業務機能に合わせてシステムを構築していたという。伝統的なITシステムは、局所的かつ受動的で、コストセンターと見られていた。
IT部門がビジネスを推進する基盤となるためには、社内のネットワーク全体に目を向けるとともに、ITは成長を推進するエンジンであると見なされるようにしなければならない。そして、単にニーズに対応するだけでなく、イノベーションを主導しなければならないのだ。
2005年11月15日にボストンで開催されたForrester Research Executive Strategy Forum 2005では、あらゆるビジネスのグローバル化が進む中でITが果たすべき役割が話題の中心となった。このフォーラムに出席したGMのCIO、ラルフ・ジゲンダ氏は、1996年、経営不振にあえぐ同社に招かれ、ITシステムを刷新した体験を語った。また、営業および経営管理のバックグラウンドを持つプロクター&ギャンブルのスティーブン・デビッド元CIOは、業務部門を効果的に支援するには、ITとビジネスの連携が不可欠だと指摘した。
もしゼネラルモーターズ(GM)が破産するようなことがあったとしても、それはCIOのラルフ・ジゲンダ氏の責任ではないだろう。
経営不振にあえぐ自動車メーカーのITシステムを刷新するためにジゲンダ氏が招請された1996年以来、GMはデジタルネットワーク化された企業へと変身を遂げ、世界のどこでも自動車を設計、製造、販売することができるようになった。同社のITサイロ(情報の孤島)は取り壊され、約1000名のビジネス情報テクノロジストが採用された。その中には、製品のデザインからサプライチェーンに至る自動車ビジネスの重要な側面に関する専門知識を持ったPIO(プロセス情報責任者)と呼ばれるエリートたちも含まれていた。
ITシステムの改革は、さまざまな業務の効率化につながった。今日、北米で最も生産性の高い5つの工場のうち3つはGMの工場である。また、大幅な経費節減も実現された。ジゲンダ氏によると、1996年当時と比べると、今日GMがITに支出する金額は10億ドル減少したという。
個性派俳優リップ・トーンのような話しぶりと生真面目な性格で知られるジゲンダ氏は、2005年11月15日にボストンで開催されたForrester Research Executive Strategy Forum 2005にITリーダー著名人として出席した。このフォーラムでは、あらゆるビジネスのグローバル化が進む中でITが果たすべき役割が話題の中心となった。そこで示されたのは、「ITは企業のあらゆる部門に入り込み、あらゆるレベルにおいて業務のあり方を管理する必要がある」というメッセージだ。ITは各業務部門のニーズに受動的に対応するのではなく、積極的にイノベーションを推進する必要があるということだ。多くのIT部門にとって、こういった主導的役割を担うためには大きな変革が求められ、勇気を持ったCIOが必要とされる。
「時にはキャリアを賭けなければならないこともある」とジゲンダ氏は話す。
フォレスターのアナリスト、ボビー・キャメロン氏によると、従来のIT部門は、企業の各業務機能に合わせてシステムを構築していたという。伝統的なITシステムは、局所的かつ受動的で、コストセンターと見られていた。今日、IT部門が目指す「ビジネスイネーブラー」(ビジネスを推進する基盤)になるためには、社内のネットワーク全体に目を向けるとともに、ITは成長を推進するエンジンであると見なされるようにしなければならない。そして、単にニーズに対応するだけでなく、イノベーションを主導しなければならないのだ。ストレージ、データセンター、デスクトップといった基本的な(水面下の)技術機能をコモディティ化することによって、CIOが「水面上」に頭を出して戦略的な問題にフォーカスできるようにすべきだ、とキャメロン氏は指摘する。
プロクター&ギャンブルのスティーブン・デビッド元CIOによると、IT部門は情報(information)にフォーカスすることによって――同氏の表現を借りれば、「iT」(小文字の「i」と大文字の「T」)から「It」へと進化することによって――同社のビジネスの推進力になったという。営業および経営管理のバックグラウンドを持つデビッド氏は、業務部門が「最初と2番目の真実の瞬間」(これは同社特有の表現で、顧客が店の棚から商品を取り上げた瞬間と顧客がそれを使用した瞬間をそれぞれ意味する)で勝負するのをITが支援することを心掛けた。最初の瞬間で勝つためには、商品の在庫がなければならない。また、その商品を顧客に繰り返し選んでもらうためには、競合製品よりも優れた製品でなければならない。そのためには、ITとビジネスの連携が不可欠なのである。「この連携がなければ、失敗あるのみだ」と同氏は話す。
ITスタッフにプロクター&ギャンブルのビジネス目標を理解させるためにデビッド氏が用いた手段は、IT推進チームに利益と損失の責任を伴うビジネスを社内で運営させることだった。難解な専門用語を使って話すことも禁止された。「ITの神秘性を取り除かなければならない。そうすれば、CEOはITを使うのを恐れることなく、問題を解決するに当たってCIOと相談するようになる」とデビッド氏は話す。現在、プロクター&ギャンブルでは、ITはもはや特殊な機能ではなく、業務部門に組み込まれた機能として、また、ビジネスの変化・改革を推進する手段として見なされるようになっている。「かつて、販売やマーケティング、あるいは製品開発がプロクター&ギャンブルを新たな地平へと押し上げたときと同じく、現在はプロクター&ギャンブルにとってITの時代なのだ」と同氏は話す。GMのジゲンダ氏と同じくデビッド氏も、「こういった変革は必ず、変化を望まない人々の激しい抵抗を伴う」と指摘する。
デビッド氏とジゲンダ氏のメッセージに共鳴する意見を述べているのが、ヒューストンを本拠とするBJサービシズのビジネス開発ディレクター、ディーン・ビルデン氏だ。BJサービシズは、石油業界向けの圧力ポンプ運用サービス大手の1社である。年商32億ドルの同社は、全世界の主要な油田/ガス田地域で事業を展開している。
地質学者でもある勤続22年のベテラン社員、ビルデン氏が同社のソフトウェア開発の管理を任されたのは、7年前のことである。当時、社内で開発した大規模なITアプリケーションが正しく動作せず、これを修正するために同氏が呼ばれたのである。現在は、同社のビジネスとITの橋渡し役としてCEOに直属するビルデン氏は、同社のITを米国ベースのシステムからグローバルネットワークに移行させるというプロジェクトを統括している。同社のビジネスの40%が海外で展開されているのに対し、IT業務の約90%が米国内で行われているからだ。同氏によると、最大のチャレンジは、各地域マネジャーにITの管理権限を放棄させることだという。
しかしビルデン氏は、「CIOの仕事で最も重要なのはビジョンを持つこと、そしてはっきりと意見を述べる勇気である」というプロクター&ギャンブルのデビッド氏の言葉に勇気づけられたという。
(この記事は2005年11月16日に掲載されたものを翻訳しました。)
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