CRMで本当に売れる仕組みを作れ!【第1回】
流行の「見える化」を追いかけて本当に正しいのか?
CRMの世界は「見える化」の大ブームである。しかし本質は、見える化を「売上化」にどうつなげるかなのである。見える化を追いかけるだけで、本当に目的を達成できるのか。ITマネジャーは真剣に考えてみよう。
IT業界は営業プロセスや顧客の見える化を積極的に推進している。見えることは非常に革新的な発明のようだが、見えないものを見えるようにすることは決して目新しい話ではない。ものごとを数値化して集計すれば、見える化が実現するのは当り前のことなのである。見える化を達成したはよいが、売上は一向に上がらないという事態に落ち込んでいる企業は多い。あるいは、システム自体が実態として、ほとんど使われなくなっているというケースもある。一体、問題の本質はどこにあるのだろう。CRMコンサルティングの第一人者として広く知られる服部隆幸氏が提唱するBREA理論をもとに、CRMで本当に売れる仕組みを構築するにはどうすればよいのか、最新の顧客マーケティング理論とITについて全4回の連載で徹底的に追求する。
魚群探知機で魚は釣れない
海の中で深く泳いでいる魚の群れを見付けるには、魚群探知機が必要になる。
魚群探知機があれば今まで肉眼で見えなかった魚が画面上に見えるようになる。ところが見えたからといって、魚を手にすることはできない。見えることと釣ることは別のことである。
テレビ番組で青森県大間のまぐろ釣りのシーンが放映されていたが、あの釣りの光景を見れば一目瞭然で、魚群探知機で魚の群れを見つけると漁船はマグロの先回りをして、タイミングよく針の付いた餌を放り投げる。このタイミング次第でマグロが釣れたり、釣れなかったりしている。見えた魚を釣り上げるには、魚に合わせた釣りざおと仕掛けと餌が必要になるのだ。
魚探機だけで魚は釣れない。これが真理である。
IT業界は営業プロセスや顧客の見える化を積極的に推進している。見えることはよほど革新的な発明のようであるが、見えないものを見えるようにすることは決して目新しい話ではない。ものごとを数値化して集計すれば、見える化が実現するのは当り前のことである。
よく考えれば誰でも分かることだが、例えば南の海でグラスボートに乗れば、さんご礁で泳ぐ魚を見ることができる。しかし、見えた魚をゲットできるとは、誰一人思っていない。
山歩きをして、清流に川魚が泳いでいるシーンを見かけても、見えたら瞬間に釣れるとは誰一人思っていない。
営業マンは受注することが目的で営業活動をしている。プロセスが見えることはゴールではない。言うまでもなくCRMのゴールは見える化ではなく「売上化」である。
導入企業は営業の見える化を、深く考えたことはあるのか?
ITベンダーの展示会は「見える化」一色である。どこもかしこも見える化で進めている。営業プロセスが見えることは、なぜ大切なのか。
プロセスが見えたら、いかに契約率の向上につなげていくのか、それが大切なところである。
それが現状は、営業プロセスの見える化を実現したけれど売上は一向に上がらない。営業部からも「売上が上がらないなら使うのを止める」と言われ困っていると、導入を決断した情報システム部の人から相談を受けるようになった。
釣果が上がると思って購入した器具が実は魚群探知機であり、探知機を導入したことで、魚影は見えるようになったが、見えても釣り方が分からない漁師のようなもので、全くおかしな話になっているのである。そもそも魚群探知機だけでは売上は伸びないのである。
ムードと言うものは恐ろしいもので、どこもかしこも「見える化」と言っていると、見えることがゴールのような錯覚を起こしてしまうものである。
見えないより見えたほうがよいのだが
見えることは、見えないことよりも一歩前進である。
確かに製造部門のプロセスを見えるようにすれば、工期、コスト、品質の改善に向けて課題が発見できるので改善を進捗することができる。しかし、営業部門のプロセスを見えるようにしても売上化することには直結しない。
経営者が指示命令を下すことができるのは社内だけであって、社外の顧客に対し指示命令を下すことはできない。
社内とはコストに相当し、利益は顧客がもたらすものである。買うと決めるのは顧客であって、営業プロセスが見えて、見積書を提出するプロセスまで進捗したからといって、顧客にこの商品を買いなさいと命令することはできない。
社長は製造部(社内)に、プロセスが見えたから無駄も見えてきた、無駄をなくしてコストを下げなさいと命令すれば、社内は社長命令だから指示に従う。その結果、製造生産性はアップするだろう。
しかし、営業部は社内組織だが、営業部がお付き合いするのは顧客なのである。顧客が全てを決めるのである。
もう一度考えてほしい。見える化と売れる化は全く別なことであり、見えても売れないのである。見えたら売上が上がり、見えたら契約率が上がるのであれば、マーケティング担当者も営業マンも苦労はない。情報システムを導入するだけで売上が伸びることになるからである。
結局のところ、営業マンのプロセスが見えた企業が、何をしているかと言えば営業マンの行動管理なのである。
言葉では販売生産性の向上ということだが、プロセスにかかわる時間を数値化して比較し、余剰時間を搾り出し(無駄を排除し)、販売生産性を上げ、搾り出した余剰時間で顧客訪問件数を増やせと指示を出すケースや、営業マンが虚偽を記入しないように、すべての営業活動における面接報告書を作成し、顧客と会った日時、内容などについて顧客のサインを貰った書類だけが顧客と会った事実にするなどの事例が、見える化の実態を如実に物語っている。
アメリカの営業マンは、契約社会に慣れ親しんでいるので、こうしたことは当然のようにやっているが、日本の営業マンは細かく管理されるのが大嫌いである。
ここがアメリカで生まれたSFAが日本になじまない一つの理由である。
「見える化SFA」(プロセスや営業行動を可視化できるようにした営業マン向のCRM)を導入して見えるものは、営業プロセスや時間である。そこで企業は営業マンの行動を厳しく管理して、搾り出した時間をさらに営業活動に費やせと、英知のかけらも見えない前近代的な労働強化指導をしているのが実態である。
企業も「ちょっと変だな」と思いつつも、営業効率を追求するしかほかに方法もなく、そのうちにできる営業マンからの造反にあって頓挫しているのが現実なのである。
営業マンが求めているのは、被管理ではなく支援である。このシステムを使ったら契約率が高まったということになれば、営業マンは今までのやり方を投げ捨てて、新しいやり方を導入する。
営業マンはいわば狩猟民族だから、これまで信じてやってきたターゲットを捕らえる方法が、別のメソッドにより改善できれば、すぐにそのやり方を採用するものである。
例えば、釣りをしている人が2名いて、一人は次々と釣るけれど、もう一人は釣れないでいる。釣れる人が、釣れない人の仕掛けを見て、「その仕掛けでは釣れないよ。僕の仕掛けを使ってごらん」と新しい仕掛けを差し出したとしよう。釣れない人が新しい仕掛けを使ってどんどんと釣れだしたら、その人は前の仕掛けは投げ捨てて新しい仕掛けを使うはずだ。
日本でSFAを成功させようと思ったら、契約率が高まるSFAを導入し、成功事例を出さなければいけないのである。
流通業は昔から見える化であった
見える化では売上が増えない例について、流通業を事例に語ろう。
流通業界は早くから、取引全データをデータベースに蓄えてRFM分析や、さまざまな集計分析を行ってきた。最近ではビジネスインテリジェンス(BI)ブームでOLAP分析やデータマイニング、多変量解析などを駆使して見える化が進んでいる。
このため百貨店などの小売流通業は、とうの昔から「顧客の見える化」は実現している。
流通業は、さまざまなトライアルを重ねた結果、見える化では売上が増えないことをいやというほど体験している。
それでも見える化を売上化にしたい。データ分析をして売上を伸ばしたいという思いは強く、バスケット分析などいろいろな分析アプリが生まれた。
紙おむつを買うお客はビールも買うという一斉風靡した、見えることによる売上アップの事例はアメリカのバスケット分析の成果である。
それでもなお、見える化を売上化することはいまだ困難を極めている。
紙おむつの横に缶ビールを置いたスーパーマーケットも出てきたが、面積がアメリカのように広大ではない日本のスーパーマーケットでは、わざわざ紙おむつの横に違和感のある缶ビールを並べなくても、顧客はすぐ近くにある酒売場に行って冷えているお好みのビールを購入している。顧客マーケティング界にとって、見える化を売上化することは、長年の課題であり、実際のところ、果てしない願望だったのである。
見える化を売上化にすることができるようになった。
しかし、長年の夢がとうとう実現したのである。いわば魚の見える化機能と釣り上げる機能を併せ持つ理論とITができ上がったのである。それが、次号から3回にわたってご紹介するBREA Logic(ブレア理論)である。これは、既存のCRMに失望していた超大企業が、BREA理論を聞いて「これこそ待ち望んでいたCRMだ」と、その場でシステム導入を決定したという実績もあるものだ。
見えることと、売上を上げることとは全くやり方が違う。魚群探知機と釣りざおセットくらい違うものである。見えなければ契約率は上がらない。だから見える化は当然必要である。見えることをいかに契約率アップ、売上アップにつなげていくか。BREA Logicは販売現場で生まれたマーケティング理論である。見える化を売上化につなげる新しい理論だ。次回からは、このBREA Logicについて詳細に説明をしていこう。CRMにより本当に売上をアップする仕組みに気付くはずである。
服部 隆幸
CRMコンサルティングの第一人者として広く知られている。1985年の創業時から、一貫して顧客数を拡大することにより売上を拡大する方法を実施。現場での積み重なった事実を理論化し、BREA LOGIC(BREA理論)として集大成した。顧客育成、今月顧客創造、Lテレビを追求する全く新しいIT「BREA」を開発。大手旅行会社、大手百貨店、流通小売業、大手ハウスメーカー、国内自動車メーカー、外国自動車メーカー直営販売会社、食品メーカー、有名アパレルメーカー、建築資材メーカーなど幅広い業種業界で売れる仕組み、契約がアップする仕組みを導入し、成功に導いている。
主な著書
『売れる仕組み、そのお客様をつなぎ止めろ』(共著)、『お客様づくりハンドブック』(社内共著)『One to Oneマーケティングすべてが分かるQ&A100』(共著)(以上、ダイヤモンド社)、『2倍売れる営業プロセス』、『ワントウワンマーケティング文庫版』、『入門ワントウワンマーケティング』(以上PHP研究所)、『脱片想いマーケティング』(日経BP社)、『製造業のCRM』(共著)(日刊工業新聞社)ほか多数
株式会社ブレアコンサルティング
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