Column
携帯電話による「注意欠陥症候群」が増加中?
生産性を高める目的で利用しているはずの携帯電話やPDA。だが、絶え間なく届くメッセージに忙殺されれば、かえって生産性を損なうことになってしまう。
ある深刻な問題が、至るところでプロジェクトを脅かしている。この問題は主に、管理注意欠陥症候群(MADS;management attention deficit syndrome)に起因している。つまり、モバイル技術中毒のような症状だ。MADSにかかったマネジャーは、常に「うわの空」で「不注意」だ。これは、プロジェクトの失敗をもたらす2つの特性と言えるだろう。ここでは、MADSがどのようにして大混乱を引き起こすかを説明しよう。
最近、ある製薬会社のCIOが数百万ドル規模のコンプライアンスプロジェクトをめぐる問題を私に打ち明けてきた。この16カ月に及ぶプロジェクトは、予算的にもスケジュール的にも当初の予定を大幅にオーバーしていた。このプロジェクトには未解決の重要な問題が多数残っていたため、このCIOは私に、チームマネジャーらがプロジェクトガバナンスの方法論を確実に理解できるよう、1日がかりでブリーフィングを行うよう依頼してきた。
このプロジェクトを取り巻く諸問題の根源は比較的すぐに判明した。アプリケーションマネジャーとその直属の部下4名は皆、ブリーフィングセッションに丸1日を費やすことなどできない、とかたくなに拒否してきたのだ。結局、グループの9人のマネジャー向けに半日間のセッションを行うことで折り合いが付いた。
セッション当日、私は午前8時からのブリーフィングのために午前7時半に到着した。私に入室許可を与える立場にいるコーディネーターはまだ来ていなかった。このコーディネーターが交通渋滞を言い訳にイライラした様子で到着したのは8時10分だった。そこで、われわれはブリーフィングルームに移ったが、そこには4人しかいなかった。先に到着していたほかのメンバーらは、ほかにやることがあるからと言って、すでに退室していたのだ。8時25分には、グループマネジャーが携帯電話で話をしながら現れた。コーディネーターは、ほかの参加者たちを探しに慌てて部屋を出て行った。ブリーフィングはようやく8時50分に始まったが、3人の出席者は結局見つからなかった。セッションの最中、グループマネジャーはかかってきた5件の電話のうち4件に応じ、そのうち3件については退室した。彼女は結局、全部で30分間、部屋を離れていた。もう1人のマネジャーはかかってきた3件の電話のうち2件に応じ、そのうち1件については退室した。セッション中、そのほかの出席者は携帯電話とBlackBerryでメッセージをチェックしていたが、部屋を出ていくことはなかった。
皆の注意がこのように散漫なのでは、プロジェクトが頓挫するのも無理はない。
リスクは誰もに
知らないうちにMADSにかかっている可能性は、誰にでもある。私が最近出席したマネジャー会議では、「生産性の改善のために効率的に技術を組み込むこと」をテーマに話をした人物が、自分がBlackBerryと2つの携帯電話で計16個もメールアドレスを持っていることを上機嫌で披露していた。
この人物は、自分が日ごろいかに大量のメールを処理しているかを自慢した。彼は毎日450通程度のメッセージを受信し、4時間かけて、そうしたメッセージのチェックや返信を行っているという。45分間のスピーチの間、この人物はBlackBerryを一度も手放さず、画面を確認するのに話を3回中断し、返信を打つために話を1回中断した。その間ずっと、彼はこの行為に対する周囲の反応、つまり完全な嫌悪感に気付かずにいた。彼がようやくそのことに気付いたのは、プレゼンテーションの最後になって、この会社の社長が出席者に対し、「拍手する代わりに、携帯電話でお礼のメッセージを送ろう」と提案したときだった。
モバイルツールやモバイルアプリケーションに依存している人にとって、表向きの目的は生産性を高めることのはずだ。だが実際には、デバイスを脇に片付け、目の前にあるタスクに注意を払えるようでなければ、かえって生産性を損なうことになってしまう。そして、損なわれるのは生産性だけではない。面と向かって直接話をできる会議の場でまで、モバイルデバイスを手放せないようでは、コミュニケーションも損なわれるだろう。そうなれば、プロジェクト自体が脱線したとしても無理はない。だからこそ、MADSは壊滅的なのだ。
MADSは注意散漫や不注意につながることが少なくない。だから、プロジェクトが頓挫するのも……あっ、ちょっと、すみません、電話がかかってきたのでここで失礼します。
本稿筆者のゴパール・K・カプール氏はカリフォルニア州サンラモンを拠点とするプロジェクトマネジメントセンターの所長。著書に「Project Management for Information, Technology, Business and Certification」がある。
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