CRMで本当に売れる仕組みを作れ!【第2回】
これが営業マンも営業本部長も顧客も喜ぶCRMだ
CRMを導入しても期待したほどの効果が出ず、結局は使われなくなってしまうというケースは多い。このようなケースにおける問題の本質はどこにあるのだろう。最新の顧客マーケティング理論とITについて全4回の連載で徹底的に追求する。第2回のテーマは営業の現場が喜ぶCRMとは何か、その本質について考察する。
うまくいく方が不思議だ。CRMの真実
「なぜ当社のCRMはうまくいかなかったのか」という電話やメールでの問い合わせ質問が増えている。そんなことを質問されても答えようもないのだが、理由はわかっている。どこでも判で押したような同じ間違いをしでかしているのだ。どこの会社のCRMを見ても金太郎飴のようだ。だから、なぜうまくいかなかったのかという問いには明快な答えを出せる。
うまくいく方が不思議だ。CRMの真実
「なぜ当社のCRMはうまくいかなかったのか」という電話やメールでの問い合わせ質問が増えている。そんなことを質問されても答えようもないのだが、理由はわかっている。どこでも判で押したような同じ間違いをしでかしているのだ。どこの会社のCRMを見ても金太郎飴のようだ。だから、なぜうまくいかなかったのかという問いには明快な答えを出せる。
1つには、どの会社もCRMパッケージが持っている機能(スペック)に、忠実にSIをしていることだ。
売れる仕組みを作ることなんかまったく考えていない。売るためにはそれがSFAであろうと、店舗であろうと、ネットビジネスであろうと、売るためのプロセスというものがある。
言い換えればマーケティングをどのように展開して、目的を達成するのかという仕組みがある。それが一番大事なのに、パッケージが持っている機能についてだけ充足させようとしているのである。
導入する企業によって製品も違うし、したがって売り方も違うのだから、使う機能も違って当たり前のことなのだ。まったく不要な機能もあるだろうし、たまにしか使わない機能もあるだろうし、もっと充足させなければならない機能もあるだろう。その機能を組み合わせていかにマーケティングを進捗していくのか、契約に誘導するのかが大事なことなのだ。しかし、そんなことはまったくお構いなしに、パッケージが持っている機能を埋めることしか考えていないCRMが大部分である。
食事をするときにコース料理を選ぶことがある。洋食でも和食でも中華でも必ずルールがあって、順番通りに料理が出てくるものだ。私たちはその順番を知っているから、デザートとコーヒーが出たらこれで料理はおしまいと分かるわけだが、機能に忠実なCRMとはルールも何もないで出てくる料理みたいなもので、初めに焼きそばが出て、つぎにステーキが出て、その次には刺身が出て、次にコーヒーが出て、次に焼き魚が出て、次にイチゴケーキが出て、次に餃子が出て、次に中華スープがでて、次にパンがでるようなものだ。
これではいつまでたっても終わりようがない。したがって食べようがないのである。
CRMパッケージが持つ機能に、忠実に作られたCRMは、使いようがない。販売員は何の役に立つか、まったくもって分からない。
なぜなら自分達のマーケティングに必要な機能ではないからである。いわば北海道へ旅行に出かける人に世界地図を与えるようなものである。
なぜこうなるかと言えば、登載するべきマーケティング理論がないからである。ITベンダーでマーケティングを添えられるところはまずない。
ITベンダーは「CRMコンサルタント」という名刺を持った社員を抱えているけれど、彼等の多くは「ITコンサルタント」であって、契約できるように誘導できて、PDCAサイクルを回すようなマーケティングを考えたことがないから、あるいは企業ごとに異なる、売れる仕組みを定義し構築したことはないから、幾ら頭脳明晰であっても、結果としてやはりできないのである。
こうしてパッケージが持っている機能にだけ忠実に作成しても、営業マンや販売員は自分達の現実と乖離したシステムに入力することは、結局は嘘を入力することとなり、使っても使わなくても同じことで、ついには使わなくなるのである。
2つは、CRMを導入する人たちは営業マンや販売員が考える、あるいは実際に行っている現実のやり方をヒアリングして、実際に沿ったやり方をトレースしたパッケージを作るケースがある。
そもそも営業マンや販売員に企画力を求めても無理な話である。また現実にやっていることをパッケージに落としても、同じことをやるなら手帳に記録すれば十分なわけで、わざわざ入力をしてまでやりたくはなくなるのが普通である。
3つ目は、理想的なシステムを作りすぎているときである。
プロジェクトでこうあるべきだろうと理論優先型で作ったシステムは、現実との乖離がありすぎて営業マンや販売員は使えないのである。
4つは適切なCRMを構築しても、普及のための教育を徹底しなければ営業マンは使わないことが多い。システムを作ることと、それが使われるために普及活動をすることとはまったく違うことなのである。
CRMは本来アナログベースで考えるべきである
まずは私どものCRM成功事例から話を聞いていただこう。
ある大手ハウスメーカーの販売部門から、CRM導入の相談があった。その内容は住宅展示場での売り上げをアップしたい。ついてはコンサルティングをお願いしたいということであった。営業を統括する営業本部長までお越しいただいての話であった。
話を伺って、これはシステムを導入する話ではないと思った。ヒアリングをしてみると、この会社は営業プロセス管理を主体したSFAを導入していた。
ハウスメーカーのSFAは、現地調査をしたか、図面を出したか、資金確認をしたか、詳細打ち合わせをしたか、最終図面の承認を貰ったか、見積書を出したか、契約を交わしたかという彼等が考える業務プロセスを追求していくSFAであった。
このSFAは契約に有効かと聞くと、営業マンは首を横に振った。「あれは我々営業マンを上司が管理しているだけのものです」といった。
社内で検討をした結果、我々は次の提案書を出した。
1.システムは不要である。
2.営業に一切の負荷をかけない。その上営業マンから、これは有効だから止めないでくれと懇願するようなCRMを設計する。
3.仕事の範囲としては
(1)展示場に(視察に)来てアンケートを書いた顧客、(したがって住所氏名がわかる顧客)の契約率を高める
(2)展示場にきた顧客の契約率を高める
(3)建築工事現場の周辺顧客に対してアプローチをして契約を作る
(4)建てた顧客からの紹介顧客を増やす
4.以上をリレーションシップツールだけで仕組み化する
5.さらに契約に至る営業プロセスをシステム無しで可視化する
6.通常の営業活動での契約率を高める
この実現が本来の、営業マンも営業本部長も、顧客も喜ぶCRMなのである。
課題を解決するために何をやったか
上記(1)についてのソリューションは、女性だけのプロジェクトを作った。そして展示場に来てアンケートを書いていただいた顧客(正確には登録ノンカスタマー)に、女性チームが発行するニュースレターを毎月作成し郵送した。ここには一切の売り込みはなく、ただ女性チームが顧客に対してこれからの家作りのありかた、例えばトイレの方向性や、キッチンの方向性、リビングの方向性などを書いたものをニュースレターにして送った。
その結果、セールスマンからの売り込みではないことが顧客から受けて、このプロジェクトに反応が次々と返ってきた。
いま、毎月の受注の約40%がここから生まれている。これまでは捨てていた顧客なのである。
このやり方だと、営業マンに一切の負荷はない。支店長が冗談で「ニュースレターを止めようと思うのだが」と営業会議で話をしたら「それはないですよ、それは困りますよ」と、大反論があった。
支店長は服部さんの提案書どおりになりましたと笑顔で語った。
(2)については、これまで住宅展示場をのぞいた顧客はアンケートを書いてもらって訪問するけれど、客は本心を明かさないから、それで縁が切れることが多かった。
住宅展示場内では、丁寧に対応し、アンケートを書いていただけますかとお願いし、ていねいに対応すれば顧客も悪いと思ってアンケートに書いてはくれるが、ほとんどの場合、そこで関係はおしまいだったわけである。なにせ週末に顧客は集中するが、営業マン1人300人から800人くらいのリストができる。このリストをカバーしようがないのである。時折、近くに行ったのであの時展示場で親しく話した顧客の家に寄ってみようかとリストを引っ張り出して訪問してみると新築した家であったというケースが多々あったのである。それをおしまいにしなかったのが(1)のやり方なのだが、そこに留まらず、展示場で顧客と関係を深めて一気に契約へ持っていこうとするのが、この案である。
そこで、展示場で他社と圧倒的に差別化を図る接客とツールを準備することを提案し、その仕組みを作った。
結果は成約率の平均値が25%程度上がった。
上記(3)については、建築現場はクレームが必ず発生していたことでクレームを減らそうという考えもあったし、同時に展示場は自社の建物をアッピールできるチャンスという考えもあった。そこで我々は「建ててる途中新聞」を作った。そして近隣に配布したのである。主人公は工事責任者である。工事責任者がきちんと挨拶をして、今の建てている途中の状況を知らせた。これが大受けした。工事現場に見学に来た人たちは、新聞を見て着ましたと挨拶をして工事現場を見学した。工事責任者は、いかに素晴らしいのかを現場を指差しながら語った。職人も気合が入った。職人が止めるクルマを巡ってクレームが起きているのが工事現場の常であったが、クレームが激減した。そればかりか、うちにも営業を回してくれと言う近隣顧客が増えてきた。職人の意識が激変した。これは大ヒットになった。
(4)については、営業マンごとの新聞を作成し、2カ月に一度、建築をした顧客に送った。これも大ヒットをした。1つの展示場で成約する棟数以上の紹介契約があった。
これはすごいことなのである。
以上はほんの一部の話であるが、これこそが営業マンも望む、営業本部長も望む、顧客も喜ぶCRMなのである。営業マンのどこにも負荷がかかっていない。それでいて売上げが増える。
ハウスメーカーのSFAでは、営業プロセスを追いかけても契約には結びつかない。
しかし、これまで見落としていたプロセスの細分化をコンサルティングで実行し、必要なリレーションシップアクションを行ったことによって、誰もが喜ぶCRMが、システムなしで実現し、驚くべく成果が表れたわけである。
ITに携わる人はこの事例をよく考えて欲しいのである。IT業界では見える化といっているけれど見えても売上げは増えないのだ。そして、売り上げを増やすためには、売り上げを増やすためのマーケティングシナリオが必要なのである。
それはシステムにのせなければできないのか。システムがなければできないのか、あるいはシステムがなくてもできるのかをよく考えて欲しいのである。
CRMは本来アナログベースで考えるべきなのである。紙でもできる。システムがなくてもできる。紙で設計したものを実行して成果が出て良いとなり、それがシステム化したらよりよくできるとなればシステム化すればよい。営業マンはもっと喜ぶであろう。
それが、パッケージが持っている機能を充足することだけを考えて作るから、役立たずCRMになり、結局は使われない運命になるのだ。
服部 隆幸
CRMコンサルティングの第一人者として広く知られている。1985年の創業時から、一貫して顧客数を拡大することにより売上を拡大する方法を実施。現場での積み重なった事実を理論化し、BREA LOGIC(BREA理論)として集大成した。顧客育成、今月顧客創造、Lテレビを追求する全く新しいIT「BREA」を開発。大手旅行会社、大手百貨店、流通小売業、大手ハウスメーカー、国内自動車メーカー、外国自動車メーカー直営販売会社、食品メーカー、有名アパレルメーカー、建築資材メーカーなど幅広い業種業界で売れる仕組み、契約がアップする仕組みを導入し、成功に導いている。
主な著書
『売れる仕組み、そのお客様をつなぎ止めろ』(共著)、『お客様づくりハンドブック』(社内共著)『One to Oneマーケティングすべてが分かるQ&A100』(共著)(以上、ダイヤモンド社)、『2倍売れる営業プロセス』、『ワントウワンマーケティング文庫版』、『入門ワントウワンマーケティング』(以上PHP研究所)、『脱片想いマーケティング』(日経BP社)、『製造業のCRM』(共著)(日刊工業新聞社)ほか多数
株式会社ブレアコンサルティング
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