CRMで本当に売れる仕組みを作れ!【最終回】
やがて消滅する、「見える化SFA」の未来
営業の売上を拡大するために、営業プロセスの可視化を追求したCRM、すなわち「見える化SFA」を取り入れているITベンダーは多い。しかし、見えるようにしただけでは売上は上がらず、無駄に終わる。では、どうすれば契約率が高まるSFAができるのか。営業マンが自ら使いたいと思うSFAとは。ビジネスプロセスを契約へと進捗させるBREA理論をひもとく。
データベースマーケティングをメインコンセプトとするCRMはなぜ限界があるのか。最近購入した顧客、頻度の高い顧客、購入金額の高い顧客は優良顧客であるという定義によるRFM分析には、明らかな問題点がある。これらを考察することなくCRMシステムを構築しても、それは売れる仕組みの構築にはならない。全4回の連載で売れるCRMシステムの仕組みを追求する好評企画。最終回のテーマは、売れるための真のソリューション力について考察する。
データベースマーケティングをメインコンセプトとするCRMはなぜ限界があるのか。最近購入した顧客、頻度の高い顧客、購入金額の高い顧客は優良顧客であるという定義によるRFM分析には、明らかな問題点がある。これらを考察することなくCRMシステムを構築しても、それは売れる仕組みの構築にはならない。全4回の連載で売れるCRMシステムの仕組みを追求する好評企画。最終回のテーマは、売れるための真のソリューション力について考察する。
ITベンダーに思考能力はあるのか?
SFAとは、営業マンのプロセス管理による営業プロセスと営業マン行動の可視化を追求したCRMである。
日本中、ITベンダーの話といえば「全国一斉 見える化運動の推進展開」ではないかと思えるほど、見える化一色である。ITベンダーには、思考能力がないのではないかといつも思う。
まともに考えれば、1社くらい違うことを言ってもよいのではないかと思うのだが、そんなことはお構いなしに、どのITベンダーも「全国一斉 見える化運動推進展開」をしている。したがって、SFAの世界でも見える化一色である。
しかし、見える化を進捗しても契約率は高まらない。見えるのはビジネスプロセスの進み具合と、営業マンの行動時間だけである。行動が見えれば上司は行動管理をする。「在社時間が長い。もっと外に出ろ」。これをITベンダーは販売生産性の向上と言っている。
私は断言する。「見える化SFA」はやがて消滅する。「見える化SFA」を推進しても、残るものは営業マンのモラル失墜だけである。営業マンのやる気と意欲が徐々に減退していき、不満だけが残る。試しにSFAを導入している企業に対して、営業マンのアンケートを取ると良い。全員がいやいやSFAを使っている現状が明らかになるはずである。「社長命令だから」、「SFAを使わない営業マンは人事考課に極端に反映させる」、「SFAを使わない営業マンはいくら目標を達成しても評価を下げるし昇進昇格させない」などと強制発動をするから、いやいや使って(記載して)いるだけである。
使っても契約率が向上しないSFAを営業マンは使わない。
営業マンの本質は猟師である。そのツール(武器)を使って契約率が高まるのであれば、今までのツールを投げ捨てても新しいツールを使う。自分の行動を管理され、叱られるためのデータを誰が積極的に作りたいと思うだろうか。
SFA導入を希望する経営者も本当は「見える化」がゴールではなく、見えたことを素材にして、契約をいかに高めるかを願っているはずである。
ITベンダーは「全国一斉 見える化運動の推進展開」をしているが、頭脳優秀な人をたくさん抱えているのに、少しはまともなことを考えられないのかと心底思う。
ITベンダーの人と個人的に話すと、彼らもこのことはよく分かっている。しかし、製品を企画する人たち、戦略を構築する人たちが見える化一色だから仕方がないのだという。
それではどうすれば契約率が高まるSFAができるのかBREA理論をひもといてみよう。
ビジネスプロセスを進捗しても顧客の状態は変わらない
そもそもビジネスプロセスとは企業側の勝手な理由で作られたものであり、顧客から見れば一切関係のないことである。購入しようと決めたら購入するし、他社製品がよいと思えば他を購入する。
営業マンが会社の命令でビジネスプロセスを進めても、顧客には何ら関係がない。あなた達が勝手にやっていることだろうと思うだけで、はっきり言えば、購入しようと考える顧客には売り手の都合で作ったビジネスプロセスなんて、存在していないものと同様なのだ。それを、嫌がる営業マンを力ずくで押さえつけて、「これを書け。そうすればビジネスプロセスがどこまで進捗しているかを把握できるから、それは製造計画にも反映できるから、営業マンの指導にも役立つものだから、つべこべ言わずに書け」と言っているのが実態なのである。
そこで営業マンは仕方なくビジネスプロセスを進めていく。「この工程まで進みました」この報告を受けて企業が満足していることがおかしい。全国一斉見える化運動推進展開の洗脳を受けて企業側の脳みそまでがスポンジ状態になってしまっているのだ。
大事なことは、企業が一番知りたいことは、ビジネスプロセスがどこまで進んでいるかではなく、契約締結に向けて顧客の状態がどこまで動いたかである。
だから、どこの企業でも「見える化SFA」導入を一番反対するのは営業部なのである。営業が一番知りたいのは顧客が契約締結に向けて心をどこまで動かしているかの進捗状態なのである。
営業部は「見える化SFA」を導入してもうまくいかないことを分かっているはずである。なぜならビジネスプロセスは顧客にとって関係のないことであることを、いやというほど体験しているからである。
「ビジネスプロセスとは見積書を作成するために、誤った見積書を書かないようにするために通過しなければいけないマイルストーンのことである」
私はビジネスプロセスについてそのように定義をしている。見積書を書けば契約ができるのであれば営業マンに苦労はない。しかし、契約をするためには顧客の心を動かしていかなければならない。だから、営業は難しいと言われている。
現状の「見える化SFA」は顧客の心を動かす部分がごそっと欠落しているのである。
Askということ
ビジネスプロセスを契約に向かって進捗させるにはAskが必須になる。Askとは、顧客を理解するために必要な質問事項、ビジネスプロセスを契約に向かって進捗させるために(見積書作成に向かってではない)必須な質問事項である。しかし、アンケートに答えるような質問内容ではない。
私は、これまで「そこまで聞ければ絶対契約できますよ」「でもそこまでは聞けないですよ」と、幾百人の営業マンからこう言われてきたことだろう。
ここがポイントなのである。営業マンと私のやり取りをお聞かせしよう。
「そこまで聞ければ絶対に契約できますよ」
「なぜ、そこまで聞ければ絶対に契約できるの」
「顧客と相当に信頼関係ができ上がっていなければ聞けないことですよ」
「信頼関係って何」
「信頼関係を何って聞かれても答えようがないですよ。信頼関係です」
以上の会話内容にこそ、契約率向上のSFAを作る鍵が隠されている。
そしてBREA理論はこの鍵の解明から構築されている。
(1)それが聞ければ契約できますよと営業マンに言わせるAskとは何か。
(2)でもそこまで聞けないですよと営業マンに言わせるAskとは何か。
(3)顧客と相当に信頼関係の構築が必要と言わせる信頼関係とは何か。
(4)これをシステムでいかに構築するのか。
以上に基づいてAskを解明すると、例えばこうなる。
1.設備を購入することは決定しているのですか。
2.導入時期はいくらで予算はいくらですか。
3.管轄する部署はどこですか。
4.関係者全員とその職位とキーマンを教えてください。
5.どのように決定をするのですか。
6.決裁者は誰で上申責任者は誰ですか。
7.設備導入の目的は何で、何を改善することを目標としていますか。
8.製品を選択する基準を明確に教えてください。
9.この設備導入後の計画を知りたいのですが。
「ここまで聞けたら絶対契約できますよ」「でも聞けないですよ」という質問を拾うと、例えば上記のような項目が思い浮かべることができる。
上記のAsk項目が正しいかどうかは読者の判断に委ねることにする。我が社ではAsk項目の設定はコンサルティングの一環として行っている。
信頼関係を構築するものは何か
信頼関係ができればAskは聞けると営業マンは誰でも言う。それでは、信頼関係を「科学」するとどうなるか。
言葉としては、信頼関係とは関係構築、人間関係を深めるなどという。それでは、人間関係を深めればAskが聞けるのか。人間関係を深めるのは一杯飲むことか。ゴルフをやることか。それも関係進化の1つだが、それだけではないはずである。
私は信頼関係の構築をエモーション「理」と「情」で実現することとした。エモーション「理」と「情」をシステムに登載することを可能にしたわけである。
エモーション「理」と「情」が進捗すれば、Askは聞ける。Askが聞ければビジネスプロセスは契約に向かって進捗していく。
エモーション「理」とは
エモーション「理」とは、製品カタログ以外のデータを使って、企業の理念、開発者の理念、業界の歴史、製品の歴史、市場の要求、ライバルとの関係、製品の特長などを顧客に伝える活動のことである。この活動を我が社では「顧客学習」と名付けている。
顧客はそもそも製品について未認知、未理解部分が多い。営業マンは製品カタログでしか製品の説明をしないし、後は使用ユーザー見学会などで顧客に語ってもらうことくらいで製品の認知・理解活動を具体的にしていない。
だから、提案時の製品に対する顧客の知識といえば、どのコンペチターも似たり寄ったりなのである。
エモーションの「理」とは、「理」で顧客と親しくなることを意味している。「理」とは製品、商品のこと以外にない。製品、商品で顧客と親しくなるにはエモーション「理」というプロセスを展開し、エモーション「情」のプロセスで顧客と親しくなることだ。
我が社はこのIT化と、リレーションシップツール化に成功している。だから契約率アップについて、驚くほどの成果が実現しているのである。
契約に至るプロセスは立方体である。3点の交点に契約がある
BREA理論ではエモーション「理」と「情」をプロセス化し、Ask進捗を契約に向かって進捗させるというSFAを構築している。
ビジネスプロセスを可視化できるのだから、エモーションプロセスとAskプロセスの進捗を可視化できないはずがない。こうして3点の交点にある契約地点を目指してSFAを展開すると、驚くほどに契約率はアップするのである。
BREA理論を支えているものは、以上の営業マン支援とプロセスごとのリレーションシップツールである。そして我が社は、エモーション、Askの2つを称して「関係構築プロセス」と呼んでいる。
繰り返す。「見える化SFA」はビジネス阻害システムである。見える化を営業支援に使わないで、営業マンの油を絞る管理に使おうとするからである。営業マンの士気は低下し、結果としてビジネスを阻害する要因となる。見える化を使って契約率を向上するシステムにすることをITベンダーは実現しなければいけないのである。
それには知恵がなさすぎる。全国一斉見える化運動の旗を早く降ろしてほしいものだ。
そして、「見える化SFA」を営業マンから「苦」を取って「楽」を与えてあげるシステムに変えていかなければいけないのだ。
それはできる。エモーションの「理」と「情」をITに登載できるようにして、「Ask」の進捗を手助けしてあげれば契約率は確実に高まるのである。
ITベンダーが「ソリューション・課題解決」というからには、営業活動とは何かにもっと知恵を使わなければいけないのだ。
服部 隆幸
CRMコンサルティングの第一人者として広く知られている。1985年の創業時から、一貫して顧客数を拡大することにより売上を拡大する方法を実施。現場での積み重なった事実を理論化し、BREA LOGIC(BREA理論)として集大成した。顧客育成、今月顧客創造、Lテレビを追求する全く新しいIT「BREA」を開発。大手旅行会社、大手百貨店、流通小売業、大手ハウスメーカー、国内自動車メーカー、外国自動車メーカー直営販売会社、食品メーカー、有名アパレルメーカー、建築資材メーカーなど幅広い業種業界で売れる仕組み、契約がアップする仕組みを導入し、成功に導いている。
主な著書
『売れる仕組み、そのお客様をつなぎ止めろ』(共著)、『お客様づくりハンドブック』(社内共著)『One to Oneマーケティングすべてが分かるQ&A100』(共著)(以上、ダイヤモンド社)、『2倍売れる営業プロセス』、『ワントウワンマーケティング文庫版』、『入門ワントウワンマーケティング』(以上PHP研究所)、『脱片想いマーケティング』(日経BP社)、『製造業のCRM』(共著)(日刊工業新聞社)ほか多数
株式会社ブレアコンサルティング
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