むやみなコスト削減には抵抗すべし
不景気下でIT予算削減を乗り切るために
景気後退局面ではIT業務に「“リーン”シックスシグマ」を適用しなければならないとForresterは助言している。
かつてやはり不景気だった時代に、ある大手生命保険会社がベンチマークコンサルタントを雇ってIT予算について検討させた。会社の売り上げの7%を占めるIT予算は一見削減できそうに見えた。幸い、その会社はITビジネスプロセス検討のため経営コンサルタントとも契約していた。ITで実現された超効率的なビジネスプロセスによって生み出される収益に比べれば、全社的なIT縮小によって削減できる金額などごくわずかにすぎないことが判明し、結局この会社は、その収益をもたらしてきたITサービスの縮小を思いとどまった。
このエピソードの教訓は何か。
会社から予算削減を課せられたCIOは、むやみな削減には抵抗しなければならないということだ。それよりも、コスト削減のコストをはじき出すことに時間を割くよう米Forrester Researchの専門家は勧めている。対象となるのは顧客、現在のITインフラ、会社運営と発展のために社内で必要な技術スキルに掛かるコストだ。
会社はいずれIT予算の規模について決定を下すことになるが、CIOには予算削減の影響について会社側を啓発し、利益増大やコスト削減につながる出費に重点を置く責務があるとForresterは言う。投資対効果検討書の作成に時間を割き、会社にそれを売り込むのはCIOの仕事だ。その際には数字のほかに、ドラマチックなエピソードや会社の将来像を盛り込むといい。
Forresterはこの助言を手始めに、1週間にわたるWebセミナーを実施した。その目的はCIOを支援して、今や疑いの余地がなくなった景気後退を乗り切ることにあった。
景気後退局面では、CIOはIT業務に「リーンシックスシグマ」の手法を適用しなければならないとセミナーでは説いていた。しかし「リーン」(Lean:スリム化)とはコスト削減のことではなく、単純に各事業部門で平等にITコストを削減することでもないと、Forresterの主席アナリスト、アレクサンダー・ピーターズ氏は解説。「リーンとは無駄を省くことだ」と力説した。
これを実行するのはアナリストが口で言うほど簡単ではないことも、ピーターズ氏は承知している。例えばインシデント管理、変更管理、リリース設定など、ITILのようなフレームワークで体系化され成熟したITプロセスの場合、リーン思考は適用されていて当然だ。一方でアプリケーション開発の場合は「動く標的」的要素が強く成熟度も低いため、リーン思考の適用ははるかに難しいとピーターズ氏は言う。しかし、価値を最優先することでこれを断行しなければならない。リソースはプロセスの価値を真に高められる人材に集中させるべきなのだ。
リーンなIT組織はシステムとプロセスに「行き過ぎ」がないかどうかも継続的にチェックしていると話すのは、主席アナリストのマーク・セセレ氏。行き過ぎの一例として、陣容700人のIT部門であらゆる決裁に18人の署名が必要といったケースを挙げた。さらに、どんな問題にも独自のプロセスが必要なわけではないともいい、「くだらない規則は廃止する」ポリシーをクライアントの1つに導入するようCIOに促した。
ただし、全社的なリーン原則を適用する場合、特にそれぞれビジネスニーズが異なる事業部が多数ある大企業の場合、IT部門が不利になることもForresterの専門家は認めている。実際、ITサービスとサポートへのリーンシグマ、あるいはシックスシグマの適用は、経営陣の強力なバックアップがなければ成り立たない。根深い序列が絡む中間管理職がさらに大きな障壁になることもある。
プロセス向上と研修の2分野は、景気後退局面では軽視されがちになると、ソフトウェア開発専門の主席アナリスト、デイブ・ウェスト氏は言う。「これは大きな過ちだ。プロセス向上は最優先課題として前向きに力を入れるべきもの」だとウェスト氏。プロセス向上の責任は1人の担当者に負わせるべきものではなく、経験豊富な開発者がチームで負担すべきものだ。ウェスト氏は企業顧客から、知識を持った少人数の開発者チームを相手にする方が、「知識も経験もない陣容を相手にするよりもいい」という話を聞かされるという。
プラットフォーム、設備、サービスのIT統合は会社の経費削減になる。しかし統合推進は標準化と、重複するプラットフォームの削減を伴う。そしてそれは資金と、経営陣と中間管理職の承認なしには実行できない。サーバの仮想化(これはCIOによる積極的な取り組みが不十分な部分だとForresterは指摘している)は、自動化ツールへの初期投資がなくては実現できず、通常は環境設定のためサードパーティーの手助けも必要になる。
会社とIT部門は時に同じ言葉を使っていても言っている内容が異なる場合があり、そのせいでコスト削減についての話し合いが泥沼化することもあるとForresterの専門家は言う。例えば会社側が「アジリティ」という場合、まず間違いなく新市場への参入や新規顧客獲得、新製品導入に当たっての機敏性を指している。しかしこの言葉はその会社のプロセスや製品向上のためのソフト開発能力に関連して使われることもあれば、不要になったビルを手放すこと、整理したい事業のITシステム処分に付随するコストに関連して使われることもある。CIOはこの種のアジリティのメリット、あるいはそれに投資しない場合の代償について、説く必要がある。
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