景気後退時のIT戦略
予算削減はITイノベーション実現のチャンス
景気後退でCIOとしての未来が閉ざされるとは限らない。それどころか自分のキャリアにとって絶好のチャンスになるかもしれないのだ。
先ごろ開催されたあるCIOエグゼクティブリーダーシップサミットで、わたしはパネルディスカッションの共同司会者を務めた。テーマは、“転換と変革の代弁者としてのCIOの役割”について。カンファレンスは盛況で、全体で450人近い来場者があり、パネルディスカッションの聴衆は約120人だった。
聴衆から募った質疑応答の中で、興味深いトレンドが浮上した。多くのCIOが発展とイノベーションに力を入れたいと思っているのに、上層部からの抵抗に遭うケースが増えているのだ。実際、聴衆の中にはCFO(最高財務責任者)やCOO(最高執行責任者)から、経済状況を考えるとIT戦略はイノベーションのために追加投資をするよりも、現状のアプリケーションの維持中心にならざるを得ないと告げられた人もいた。
コスト削減と現状維持に重点が移る中、IT戦略の変化はCIOの役割にとって何を意味するのか、聴衆は知りたがっていた。IT幹部の存在感は予算と共に縮小していくのか。CFOがコスト中心の視点で直接ITを仕切るようになるのか。この姿勢の変化は、利益増大やコスト削減におけるITの実質的な貢献について理解できない、あるいは考えが及ばないCEOの間で、いら立ちが募っていることを物語るのか。
企業の情報担当幹部のカウンセリングを10年以上手掛け、CIOの役割とITの機能を決定・管理する責務を担った経営幹部と密に接してきた経験から、こうした問題は順調なときにも困難なときにも浮上することをわれわれは知っている。過去の景気後退の中でわれわれは、変化と不安定の時期にこそ途方もないチャンスが浮上することを学んだ。経済環境は厳しいが、CIOは一連のツールを使って会社に大きく貢献することが可能だ。
例えば、2000年から2003年にかけての景気減速は、CIOのリーダーシップにおける新たなパラダイムの形成に決定的な役割を果たした。景気が減速する以前は多くのCIOが、IT幹部としての社内での重要性を測る主な指標は予算と人数だと考えていた。予算の圧縮はこの時期を特徴付けるものだったかもしれないが、プロセス改善と技術革新の好機となったことで、小数で多くを実現することに重点を置くITモデルが形成された。大掛かりな予算と大量の人員は、多くのCIOが狙われる標的となった。これに目を付けた上層部はすぐに、新しい倹約指向のIT理念採用に踏み切り、結果として有意義な、差別化につながる事業価値を生み出した。
同じようなチャンスは今回もある。情報担当幹部はこのチャンスをとらえ、ビジネスパートナー、社内顧客、同僚の幹部たちに積極的に働き掛けるといい。リスク管理、ガバナンス、サプライチェーン管理、調達、イノベーションに再投資するためのプロセス改善とリエンジニアリングは、企業として前面に出すべき中心課題となる。こうしたプロセスと機能すべてを実現するのがテクノロジーなのだ。
従って企業の情報担当幹部には、こうしたチャンスを見極めて実行に移すため、社内で対話する責務がある。組織内におけるITの役割は、最大限の効率をどう引き出すかに応じて形成されるべきだ。特に、好景気下でテクノロジーによる貢献をほとんど無視してきた企業にはこれが言える。今回の景気後退は、ITが社内で一層目に見える役割を作り出せる新たなチャンスだ。そのことを理解しているCIOは、会社にとって一層魅力的なプロとしての価値を創出し、果たしていくことができるだろう。
本稿筆者のショーン・バネージ氏は米Russell Reynolds Associates技術部門にあるInformation Officers and Business and Professional Services Practicesの会員。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[ゾーホージャパン株式会社] サイバー攻撃からネットワークを守る上で確実に押さえておきたいポイントとは? -
事例
[アルプス システム インテグレーション株式会社] 中小企業でも安心して活用できる「手ごろなSOCサービス」とは? -
製品資料
[株式会社シーイーシー] 脱VMwareに成功した企業は何をどう実践した? 事例に学ぶ戦略立案&実装のコツ -
製品資料
[株式会社オービックビジネスコンサルタント] ランサムウェア攻撃を“二重の防御構造”で防ぐ、クラウド型基幹システムの実力 -
製品資料
[株式会社オービックビジネスコンサルタント] 動画で知るランサムウェア被害企業のリアル、会計データが無事だった理由とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
4
AIの導入効果はどう測る? DMM.comのエンジニア組織に学ぶ効果検証のノウハウ
-
5
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
6
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
7
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
8
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
9
新旧「Outlook」混在の恐怖を三星ダイヤモンド工業はどう乗り越えたか
-
10
「Excel管理」では限界――製造現場の改善が進まない“隠れた原因”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー