無駄のないSOA構築のために
SOAガバナンスに欠かせない6つの作業
SOAの導入準備段階であれ、SOAプロジェクトの方向を見直している段階であれ、SOAガバナンスを確立・維持する上で欠かせない6つの作業を紹介する。
SOA(サービス指向アーキテクチャ)の構築では、互いに隔絶した業務部門が重複するサービスを作成することがないようにするために、IT部門と業務部門との緊密な連携が必要とされる。SOAガバナンスはそのプロセスを実現するための手段である。その目的は、SOAの導入・運用が適切かどうかをチェックし、例えば、何百個ものサービスを作成したものの、そのうちの3分の1が重複しているといったような無秩序を排除することにある。
SOAの導入準備段階であれ、SOAプロジェクトの方向を見直している段階であれ、SOAガバナンスを確立・維持する上で欠かせない作業は6つある。
全体像の把握
「技術的な視点ではなくビジネス的な視点に立ち、達成しようとしているものの全体像を把握すること」──こう話すのは、年商110億ドルのアグリビジネス企業Monsantoのシニアエンタープライズアーキテクトで、「SOA Governance」(Packt Publishing刊)の著者であるトッド・ビスケ氏だ。
SOA構想を進めるに当たっては、IT部門は一部の業務機能だけを再利用可能なサービスに変換し、ほかの業務機能についてはそうしない理由を説明しなければならない。こういったガバナンスが欠落していると、ニーズが低いサービスを多数作成するといった過剰投資に陥ったり、作成したサービスが少ないために、ビジネスプロセスの改善やビジネス目標の達成を実現できないというリスクがある。
「技術的な修正によって連携を容易にするといった部分的改良を実現したとしても、それは業務プロセスの改革にはならない」とビスケ氏は指摘する。「ソフトウェアの開発とビジネスソリューションの実現に関して何を改革する必要があるのかといった総合的な見方が欠落していると、現在取り組んでいるプロジェクトが本当に業務改革につながるのか、それとも異なる技術を使って従来と同じ取り組みを繰り返しているだけなのか判断できなくなる」
Lockheed MartinでSOAアーキテクトを務めるティモシー・ビバート氏によると、SOA構想で達成すべき成果を明確に定義するには、ビジネスに及ぼす影響および設定した目標を達成するのに必要な技術を理解しているチーフアーキテクトの存在が必要だという。「業務部門のところに行って、いきなり“俊敏性を高めたいので、こういった変更を行うことになった”などと言うようなアーキテクトではだめだ。その変更がどのように顧客満足を改善するのか、あるいはメンテナンスコストを削減するのかを説明しなくてはならないのだ」と同氏は語る。
ポリシーに関する合意形成
効果的なコミュニケーションが欠落している場合は、SOAポリシーを策定・適用するためのCOE(センター・オブ・エクセレンス)や審査委員会を設立するだけでは不十分である。「個々のメンバーの意見や定義が異なっている可能性があるため、最初にポリシーを定義した上で、各ポリシーに関する合意形成を図る。その上で、審査委員会がこれらのポリシーに基づいてチームのメンバーの作業をチェックするという旨を伝える必要がある」とビスケ氏は話す。
ITガバナンスプロジェクトで採用したポリシーはSOA構想にも適用できる。最初に、プロジェクトに携わるチーム、関係するシステム、サービスによって影響を受ける可能性があるグループあるいは業務機能、影響が及ぶ可能性がある既存サービスを特定するとともに、将来的にほかの業務部門で同様のサービスが必要になるかどうか、どのグループの予算をどの構想に割り当てるのか、リソースを共有することは可能かといった点についても確認する必要がある。
利害関係者に対する教育と連絡
COEまたは審査委員会は、プロジェクトの進行中に適切な伝達形式でステークホルダー(利害関係者)に対する教育と連絡を行うこと。ビスケ氏によると、COEのメンバーがポリシーを内密にしている企業を見たことがあるという。その結果は悲惨なものになる可能性があるという。「ある程度の時間をスタッフの教育に割り当てないと、将来、さらに大きな問題に遭遇する危険性がある」と同氏は語る。
1回きりのプレゼンテーションで十分だと考えてはいけない。SOAのように広範な組織改革につながる可能性がある複雑なプロジェクトの場合は、なおさらそうだ。プロジェクトの目的を繰り返し伝え、各業務部門および各従業員に周知徹底させる必要がある。
大企業の場合、ある種の伝達形式(ブログなど)は従業員全員に認識されるとは限らない。Monsantoでは、社内ブログに加え、電子メールの一斉送信や昼休みの勉強会といった伝達手段も活用している。「あらゆる伝達ツールを利用し、組織のすべてのメンバーを考慮に入れる必要がある。SOAに関して部門マネジャーに伝える内容は、開発者に伝える内容とは大きく異なるからだ」とビスケ氏は話す。
SOAガバナンスでは、コミュニケーションがとりわけ重要である。SOAの主要なメリットの1つが再利用可能なサービスであるからだ。一部のグループが、複数の業務機能で利用可能なサービスではなく、自分たちのグループでしか使えないようなサービスを開発する恐れもある。「再利用はSOAの大きなメリットだ。ほかのグループによって既に開発されたサービスを別のグループが開発しているというケースを何度も目にしたことがある」とビスケ氏は話す。
「新たなサービスの開発を始めるに当たっては、盛り込むべき要件がまだあるかどうかをほかのグループに確認すべきだ」(同氏)
教育を通じたポリシーの適用
罰則ではなく教育を通じてポリシーを適用する。ビスケ氏は自己評価方式を積極的に活用している。これは、プロジェクトチームのメンバーが、「これこれの条件をクリアしたか?」といった質問を記載した得点表に記入するというものだ。
「得点表を回収して、ポリシーのどの部分が守られていないかという傾向を把握し、対策を検討するのだ」とビスケ氏は説明する。そのほかのアプローチとしては、プロジェクトに指導者を割り当てるという方法がある。プロジェクトの指導者とポリシー適用責任者を兼務してポリシー順守に説明責任を持つ人を指名するのもいい。
リポジトリの重視
リポジトリの必要性を過小評価しないこと。ランタイム管理(サービスの業務実績評価指標を収集)、ならびにレジストリ管理(再利用を前提としたサービスの業務運用情報を保存)は、SOA構想における重要な側面だ。しかしこれらの情報は、ほかの情報やドキュメントが保存されているビジネスサイドのリポジトリでは見過ごされることが多い。
Lockheed Martinのビバート氏が所属していたチームでは、3つの異なるプロジェクトの成果を統合した3種類のツールのランタイム実績評価指標の統合リポジトリを開発した。これらのプロジェクトで作成されたサービスは、単一のリポジトリ内で公開された。このリポジトリには、SLA(サービス品質保証)、ランタイムポリシー、実績評価指標が含まれている。こうすることで、認可された再利用サービスを選ぼうとする人は、これらの複合的指標に基づいて最も適切なサービスを選択できるのだ。
「単なるレジストリではそういったことは無理だ。追加機能を盛り込むには、リポジトリが必要だ」とビバート氏は話す。「レジストリだけでは、PowerPointのドキュメントや利用計画情報、法務関連文書などを保持できない。こういった情報は、従業員が適切な決定を下すのに役立つ。
プロジェクト進行中の効果測定
プロジェクトの進行中にSOA構想の効果を測定することにより、目標到達への軌道から外れていないことを確認するとともに、成果の達成度を評価する。最初に設定した目標を常に再確認し、次にどの方向に進むべきかを判断すること。「当初の目標を達成できていない場合は、効果的な教育をしていないのではないかと自問する必要がある。ポリシーの適用方法が効果的でないのかもしれない。あるいは、作成したポリシーに問題があり、変更しなければならないというケースもあるだろう」とビスケ氏は語る。
ビバート氏の経験では、成果を測定するロードマップ方式は成熟度モデルよりも分かりやすいという。成熟度モデルでは、数段階の達成度を示した膨大なテキストを参照しなければならないからだ。それよりも、マイルストーンを達成したかどうかがはっきり分かる図式化されたロードマップを利用する方が、より柔軟で現実的なアプローチだといえそうだ。
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