あるプロジェクトマネジャーの“つぶやき”【第1回】
新しいプロジェクトメンバーを迎える際に気を付けたいこと
“きつい”“帰れない”“給料が安い”の「3K」ともやゆされるIT業界だが、毎年新入社員がやって来る。彼らが開発現場で即戦力になってもらうために、プロジェクト管理者は何をすればよいのだろうか?
初めまして。わたしはカブドットコム証券のシステム部門に所属し、プロジェクトマネジャー(PM)として、主に証券取引システムの開発・運用に従事しています。
本連載では、わたしが日々のプロジェクト管理業務を通して気付いたことや感じたことを、現在普及しつつある「Twitter」のように“つぶやいていこう”と思います。肩ひじ張ったような硬い内容は避け、プロジェクト管理者や開発メンバーの方々に気軽に読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いします。
さて、この記事が掲載される8月といえば、研修を終えた新入社員が開発現場に配属されて約1カ月が経過した時期ではないでしょうか。読者の中には「新しく加わったメンバーとの接し方が分からない」という方もいらっしゃると思います。
今回は、新メンバーを指導する立場のプロジェクト管理者や既存メンバーの方に向けて、彼らと一緒にプロジェクトを遂行する際に気を付けたい「4つのポイント」を紹介します。
1. まずは“やらせてみる”
プロジェクトでは、新メンバーにいろいろな業務の指示を出すことになります。やる気のある彼らですが、実際の業務の中にはどうしても「面倒くさい」と思われてしまう内容も含まれていることもあるでしょう。また、頼まれる業務が増えるごとに「本当にやる必要があるのか?」「もっと効率的な方法があるのでは?」と考え込んで、その作業を中断してしまうことがあるかもしれません。
既存のプロセスを疑うことは悪いことではありませんし、実際により良い改善策を思い付くこともあるでしょう。しかし、最初のうちは余計なことは考えさせずに「まずはやらせてみて、後からそのプロセスや結果を考えさせる」の方が吉だと思います。
なぜなら、彼らは「自分の担当する業務がプロジェクトのどの部分に役立つのか」など、プロジェクト全体を通した各業務のつながりが分からないことが多いからです。
例えば、彼らに依頼したタスクが完了した後にほかのメンバーの担当するタスクが開始される場合、前提となる作業の進ちょくが遅れればその分終了時期も遅れ、次の工程に影響を及ぼすこともあります。あれこれ悩む前に、まずは行動を起こさせるようにしましょう。
2. 必ず“タスクの期限(締め切り)”を確認させる
わたしはプロジェクト案件を進める中で、プロジェクトメンバーにいろいろと作業を依頼します。その際に「いつまでに終了すべきか」という期限を確認されないことがあります。指示されたタスクに期限が含まれていない場合は、その期限を必ず確認する習慣を身に付けさせることが大事です。
プロジェクトは基本的に、限られた時間の中で進められます。プロジェクトメンバーは、担当するタスクの期限を常に意識する必要があります。せっかく頑張って仕上げた作業でもその期限を大きく過ぎてしまった場合は、管理者という立場上、彼らを厳しく注意する必要があります。
また、タスクの期限を確認しないと、そのタスクの重要度や優先順位が分からないだけでなく、彼ら自身のスケジュール管理も難しくなります。特に、プロジェクトにおける“こまごまとした業務”を頼まれることが多い新メンバーにとっては「頼まれた業務がすべて重要に思えて、どれから着手すれば良いのか分からなくなる」こともあるのではないでしょうか。
このような場合、依頼されたタスクの期限を必ず明確にして、それを基に自分の中で優先順位を付けて管理させるようにしましょう。この習慣付けは今後、彼ら自身の生産性を向上させるスキルとしても非常に重要なことです。
とはいっても、最初は定められた期限を過ぎてしまうかもしれません。その場合でも「与えられたタスクの多くは、早めに相談・報告さえしておけばリカバリが可能である」ことを学ばせる機会になります。管理者側でもその点を考慮して、まずは失敗しても大きなトラブルには至らないような業務を依頼するべきだと思います。
3. 依頼された業務には“サプライズ”を添えて返させる
与えられた仕事を完ぺきにこなそうとする姿勢は、素晴らしいことです。期待する以上の内容であれば、プロジェクトメンバーは「でかした! 褒めて遣わす!」と言ってくれるはずです。
わたしが提案するのは、仕事に必ず“サプライズを添えさせる”ことです。特に強くお勧めしたいのは“時間のお釣り”です。つまり依頼者に「もうできたの?」と言ってもらえるように、“期限までに余裕を持って前倒しで進める”癖を身に付けさせましょう。
わたしは、新メンバーから上がってきたものが期待以上の完成度であればうれしいですが、想定以上に早く仕上げてくれることは、それと同じくらいうれしいことだと思います。例えば、ある業務を依頼された新メンバーのAさん、Bさんの行動について、どちらがプロジェクトメンバーにより喜ばれるでしょうか。
Aさん:「100点満点を目指し、期限ギリギリまで粘って提出」
Bさん:「期待された内容をカバー(90点)できたので、期限の少し前に提出」
わたしは、AさんよりもBさんの仕事の進め方が喜ばれると思います。なぜなら、実際の業務ではAさんが望んでいる「100点満点」を取ることはとても難しいからです。また、ここでの「100点満点」とはあくまでAさんが考えたものです。Aさんが「完ぺきなものだ」と自信を持って提出しても、皆さんがチェックするといろいろな不備が見つかることがあると思います。さらに、すぐに作業をやり直したとしても、その際にやり直す時間のロスが発生してしまいます。
一方、Bさんのように依頼した作業を期限前に完了すると、そこからさらにほかの業務を依頼したり、不備があった場合でも時間に余裕を持って取り掛かることができます。もちろんただ早いだけで内容が伴わないことは良くないので、提出する前の自己チェックは十分に行わせるべきです。
また、スピードに気を付けることは、前述した「まずはやらせてみる」「期限を必ず確認させる」の2つとも密接に結び付いてきます。こうした仕事の進め方は「つまらない」と感じる作業を行う場合にも役立ちます。“いかに迅速かつ効率よく処理できるか”という、ある種のゲーム感覚で業務を行えばよいのです。
逆に、自分が面白いと感じる仕事については別の注意が必要です。自分の好きな内容であればあるほど、いつまでも凝ってしまうからです。設定された期限よりも“少しだけ前倒し”を目標にして、業務を遂行させるようにしましょう。
4. 先輩には上手に甘えさせる
プロジェクトメンバーも人間ですので、「カワイイ」と思える後輩の面倒を優先したくなるのが当然です。飲み会や食事にも連れて行ったり、そこで自分の経験を踏まえた仕事の話をする機会があったりするかもしれません。
そうした人間関係の構築方法は、これまでの学校やサークルでのやりとりと変わらないと思います。ただ、ここでわたしが言いたいことは「“アフター5にプロジェクトメンバーと付き合うこと”も仕事の1つだ」ということではなく「“困ったときにすかさず聞ける”人脈を築き上げる」ということです。
管理者である皆さんは、新メンバーが1人で悩み込まずに周囲のメンバーに相談したり、その解決策やアドバイスを教えてもらえるような環境や雰囲気を作り出すことに努めましょう。
もちろん、単なる「指示待ち人間」にならないように、自分で考えさせることは大事なことです。また、何でもすぐに「教えて君」では、質問を受ける側も良い気分ではありません。しかし、プロジェクトでは総じて「分からないことはすぐに聞いた方がよい」場合が多いと思います。仕事が遅れて一番困るのは、プロジェクト全体を管理するあなたです。
新メンバーが悩むところは大抵、既存のメンバーも同じように悩んだ経験のあることが多いものです。皆さんの中にも「何時間も1人で悩んでいたことが、先輩に相談すればわずか数分で解決できた」という経験を持っている方もいらっしゃると思います。
新メンバーである彼らにも、分からないことがあったら「お忙しいところ失礼いたします。○○のことで教えていただきたいことがあります」と周囲のメンバーに声を掛けるように勧めてみてください。実際に多くの先輩もそうした道を通ってきたはずです。わたしも「先輩から受けた恩は後輩に返せ」と教えられてきました。
人類最速の男も“スタートダッシュは苦手”
今回は、プロジェクトの新メンバーと接する際に気を付けたい点を紹介しました。特に4番目の「先輩に上手に甘える」ことができる人は、周りの人の助力を得ながらプロジェクトで起こる大抵のことに問題なく対処できると思います。
逆になかなか相談できないという人は、少し心配です。彼らが聞きやすいと思うメンバーを探させたり、周囲のメンバーにも話しかけやすい雰囲気作りをするように配慮を促すなどを行いましょう。「わたしは今、○○のことで困っています」という意思表示が、結局はプロジェクトメンバー全員のためにもなることを理解させることが大事です。
具体的な業務の進め方はもちろんのこと、まずは業務を遂行する上で欠かせない“メンバー間のコミュニケーション”の基盤を築き上げることが重要です。とはいっても、最初はうまくいかないことも多いかと思います。焦らずに少しずつできるようになればよいのではないでしょうか。
ちなみに、先日までドイツのベルリンで開催されていた「世界陸上 2009」の男子100メートル走、同200メートル走で驚異的な世界記録をたたき出したウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)も、実はスタートダッシュが苦手らしいです。……って、このアドバイスはプロジェクトとはまったく関係ない内容でした。
<筆者紹介>
小崎敬介(こさき けいすけ)
カブドットコム証券株式会社システム本部システム統括部システム開発課
2005年カブドットコム証券株式会入社。広島県出身。オンライン証券取引システムの設計開発運用業務に従事。主に発注系システムを担当する。座右の銘は、「『負けました』と言って頭を下げるのが正しい投了の仕方」(棋士:谷川浩司)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー