顧客対応スタッフのウケは良かったが
iPadは仮想デスクトップクライアントとして使える? 使えない?
iPadはVDIクライアントとしてデスクトップ端末に取って代わる存在になり得るか。顧客サービスセンターへの導入で成功した事例とともに、残る課題を考えた。
iPadをVDI(Virtual Desktop Infrastructure)クライアントとして有効に活用できるのは、一部のユースケースに限られる。だが、そのシナリオが適切であれば、iPadによってモビリティと生産性を向上させることができる。
iPadが優れたVDIクライアントになり得る第一の理由は、現在のタブレットが、数年前のデスクトップPCに匹敵する画面解像度を提供することだ。iPadのディスプレーは、デスクトップアプリケーションをユーザーに表示するタスクに対応できる。また、モバイルネットワークが2Gから4Gに移行しており、LAN並みの通信速度が得られるようになっている。このように、ノートPC以外の端末から企業デスクトップへのモバイルアクセスに必要な要素がそろってきていると考えられる。
誰がiPadをVDIクライアントとして使うか
しかし、iPadの社内展開を始める前に、社内の誰がiPadを必要としているかを見極めなければならない。一部の企業では、勤務時間が一定でなく、いつ呼び出されるか分からない従業員がそうだ。経営幹部、プロジェクトマネジャー、オンコールスタッフ、カンファレンスの現地担当者が明らかなユーザー候補といえる。こうした社員は、iPadをどこにでも持ち歩き、一般にノートPCを常に携帯することを好まない。彼らはiPadを使ってVDIセッションに接続し、すぐにWindowsデスクトップにアクセスできる。
多くの人にとってiPadデスクトップは、適切なキーボードとマウスで大きな画面にアクセスできないときに使う、セカンダリVDIクライアントという位置付けになる。だが、通常はノートPCやiPadを持たず、デスクに向かってPCを使っている社員にとってはどうだろうか。
VDIクライアントの事例:顧客サービス
私は最近、多くの顧客サービスセンターへのVDIの展開を成功させた同業者と話した。このプロジェクトは、iPadをVDIクライアントとして採用したものだった。これらのサービスセンターでは、スタッフはカウンター越しに顧客と対面し、デスクトップコンピュータを使いながら応対する。この会社がiPadを展開したのは、スタッフがカウンターの外で顧客とやりとりしながら、随時詳しい情報を示すこともできるようにするためだ。スタッフはiPadデスクトップを使って、PCで利用できるのと全く同じCRM(Customer Relationship Management)アプリケーションにアクセスできる。
このVDIクライアントプロジェクトについて聞いたとき、私は、これは最近はやりの典型的なiPad絡みの取り組みであり、実際の運用をほとんど理解していない取締役レベルで構想されたものと考えた。スタッフが、「iPadのデスクトップとキーボードでWindowsアプリケーションを使うのは大変なので、毎日フルタイムで使うのは無理だ」と思うのがオチだろうと予想した。
だが意外にも、サービススタッフの顧客対応で非常に有益な成果が上がっているため、システムが使えなくなると、ヘルプデスクは対処に大わらわだという。サービススタッフがiPadをVDIクライアントとして使うと、顧客ははるかに多くの質問をして、そのつどすぐに答えを聞ける。最も重要なのは、スタッフが全ての企業アプリケーションにアクセスできることだ。大規模アプリケーションを新しいプラットフォームにネイティブ対応させるには膨大な労力が掛かるが、この事例ではその必要はない。ネイティブなiPadアプリを使っていたら、ビジネスニーズを満たすことはできなかっただろう。また、モバイルアプリケーションでは、機能がかなり限られることが多い。
VDIクライアントとしてのiPadの課題
しかし、iPadは常に優れたVDIクライアントなのだろうか。iPadに対するよくある不満は、iPadデスクトップは画面が小さく、マウスをサポートしないというものだ。また、VDI OS(Windows XP/7)は、タッチインタフェースが充実しておらず、リモートプロトコルでうまくサポートされていない。iPadをフルタイムのVDIクライアントとして使いたい人はいないと思う。
それでも、iPadはVDIクライアントの有効な選択肢になり得る。前述の顧客サービスセンターの事例では、iPadはうまく機能した。また、カンファレンスに行き、企業アプリケーションにアクセスする必要に迫られても、iPadさえ持ってきていれば問題ない。iPadは、インターネットカフェに行って怪しげな端末やWi-Fiを使って企業システムにアクセスするよりも好ましい選択肢だろう。
iPadがほとんどの人のデスクトップシンクライアントに取って代わることはないはずだ。だが、このVDIクライアントは、さまざまな状況で企業デスクトップへのアクセスを可能にする。iPadからVDIを使うのは、最適な技術ソリューションとはいえないが、最適なビジネスソリューションになり得る。今後、顧客サービススタッフ向けにiPadを展開して歓迎されても、驚くには当たらない。また、彼らが機能の貧弱なモバイルアプリケーションを使うと決めつけるのは早計だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
肥大化した「SFA」の沼 4カ月でBigQuery×AppSheetの新システムを構築した方法
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
8
AIの導入効果はどう測る? DMM.comのエンジニア組織に学ぶ効果検証のノウハウ
-
9
「何から始めればいい?」 情報漏えい対策で悲鳴を上げる中小企業のリアル
-
10
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
4
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー