ポイントはカスタマイズ、アドオンの抑制
【市場動向】導入100億円は昔の話? ERPを高くする技術、安くする技術
導入や運用保守に多額のコストが掛かると思われているERPパッケージ。かつては100億円規模の導入プロジェクトも走っていたが、現在はコストを抑える方法、技術が生まれている。低コストなERPを選ぶポイントとは。
ERPパッケージついての読者調査でERPについての不満点を尋ねると、コストに関する不満が多く集まる。ライセンスや運用管理、保守のコストを高いと感じるERPユーザーが多いようだ(参考記事:会員調査で浮かび上がるERPのコスト問題、IFRS対応への影響は)。 アクセンチュアのエグゼクティブ・パートナー 米澤創一氏と、シニア・プリンシパルの渡辺哲弥氏への取材を基に、導入、運用保守にコストが掛からないERPを選ぶポイントをまとめた。
かつてのERPは確かに高コストだった。1990年代の第1次ERPブームの頃にはERPの大規模導入プロジェクトで30億~100億円が掛かるケースが国内でもあった。当時はハードウェアが現在と比べて高額で、ERPの導入エンジニアが少ないこともあり、人月単価も高額だった。しかし、何よりもコストを押し上げていたのはERPのカスタマイズやアドオン開発だった。
ERPの導入では最初にユーザー企業が考える業務プロセスと、ERPが標準で持つ業務プロセスとのフィット&ギャップを行う。その後、判明したギャップをどう埋めるか考えるが、その際にERPをカスタマイズしたり、アドオン開発でギャップを埋めようとすると導入・開発のコストが大きく脹らむことになる。カスタマイズやアドオン開発を行うことで、開発期間も長くなり、それだけエンジニアのコストも増大する。
1990年当時は多くの日本企業の業績が好調で、自社の業務プロセスに自信を持っていた。そのためその業務プロセスをERPで再現しようとしてコストがアップするという構図だった。加えてカスタマイズやアドオン開発を行ったERPは改修やアップグレードが難しく、それだけ追加コストが発生する。アップグレードに新規開発と同じだけの金額が掛かったというケースも多く、「ERPは高い」というイメージが定着してしまった。
一方、フィット&ギャップの結果、そのギャップを自社の業務プロセスを変更することで埋めるという判断をした企業はカスタマイズやアドオン開発を抑えることができ、ERP導入・開発のコストを下げられる。ERPはできるだけ標準機能を使うことが、コスト低減のポイントだ。そのためERPを選ぶ際も、自社の業務プロセスとの適合率が高いERPを選ぶことがポイントになる。また、標準機能をベースにすることでアップグレードなども容易になり、ERPのライフサイクル全体のコストを抑えることができる(参考記事:シェア調査で浮かび上がるERP選びの「ニュースタンダード」)。
ただ、ERPの標準機能にこだわることでユーザー部門の負荷が高まったり、生産性が落ちてしまってはERP導入の意味がなくなる。そこで近年使われているのが業務や業種別のテンプレートだ。ERPベンダーの他に、主なシステムインテグレーター(SIer)がテンプレートを開発している。テンプレートを使うことでERPのカスタマイズやアドオン開発を大きく減らすことができる。
アクセンチュアの試算では大規模向けERPのテンプレートを使えば、ユーザー企業の一般的な業務の7~8割はERPの標準機能とテンプレートでカバーできるという。ユーザー企業は残りの2~3割について自社の業務プロセスを変更するか、アドオンを開発すれば対応できる。ERPの中で最も導入されている財務会計モジュールに限っていえば、その適合率は9割に上る。残りの1割も帳票など比較的小規模な開発で済むことが多い。ERPを選ぶ際はテンプレートの充実という観点にも注目したい。
カスタマイズやアドオン開発を避け、できるだけ標準機能を使って安くERPを導入する意識がユーザー企業の中に芽生えてきたのは最近だ。ERPは2000年問題の前後にも多く導入、改修されたが、その当時に導入されたERPはまだカスタマイズやアドオン開発が多く、高コスト体質。そのため、その当時のERPを今アップグレードしようとすると結局はもう一度新規導入するのと同じくらいのコストが掛かってしまう可能性がある。そうであるなら標準機能やテンプレートで業務プロセスをカバーできる、全く新規のERPを導入した方が割安という判断もある。
ERP運用に掛かるコストを抑える
次にERPの運用に掛かるコストを考えてみよう。ポイントになるのは、ERPの日々の運用保守コストと、サポート料金のコストだ。運用保守コストは、導入したERPの品質によって大きく変動する。例えば標準機能を多く使っているERPであれば、運用が安定し、不具合対応が減ると考えられる。そのためコストは低く抑えられる。一方、カスタマイズやアドオン開発をしたERPでは複雑性が増し、運用管理も煩雑になる。運用保守はユーザー企業が自社で行ったり、SIerに依頼するケースがあるが、いずれにせよコストは増大する。ERPの選択時には将来の運用保守も考える必要がある。
サポート料金のコストはユーザー企業にとって悩ましい。サポート料金は、購入したライセンスの15~25%程度が年間に掛かってくるのが一般的だ。例えば、1000万円分のライセンスを購入していれば、年間150万~250万円の負担となる。企業はこのサポート料金を支払うことで、ERPに適用する修正パッチや法制対応のパッチ、アップグレード、問い合わせ対応などのサービスを受けることができる。これらのサービスをフルで活用すれば適正なコストといえるかもしれないが、使わなくても掛かるコストは同じだ。仮に25%の課金だとすると4年で当初のライセンス価格と同じになる。IT部門はそのメリットを理解していても、数字だけを見ている経営層からすればサポート料金は単なる固定費と映り、削減対象となる可能性がある。
そのため企業によってはサポート料金を支払わないという判断をする企業もいる。当然、ERPベンダーからのパッチ提供などは受けられず、アップグレードも難しくなるが、改修予定のない“枯れた”ERPであればそのような判断も理解できないことではない。ただ、そのERPに起因するトラブルなどが発生した場合、対外的な賠償も含めて全てユーザー企業が対応をする必要があり、情報システムについてのリスクが高まる。不安定なシステムということで監査対応のコストも増大すると考えられ、上場企業であればなかなかできない選択だろう(サポート切れ業務アプリ、「取りあえず使用」の問題は)。
大企業におけるERPの導入率は既に8割以上(参考記事:在宅勤務の導入率は24%、変化する勤務形態とERPの利用状況は)。ユーザー企業の関心は既存ERPのコスト削減に向いている。TechTargetジャパンでは今後もERPのコストに注目した記事を掲載する予定だ。
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