「ネットワークセキュリティ製品」を使い倒すには【第2回】
宣伝通りの効果が出ない? 次世代ファイアウォールやWAFの期待と現実
期待通りの効果を発揮してくれない――。次世代ファイアウォールやWAFといったネットワークセキュリティ製品に、こうした思いを抱くユーザー企業は多い。期待と現実の間に潜むギャップを探る。
第1回「次世代ファイアウォールやWAFが“期待外れ”な6つの理由」では、ネットワークセキュリティ技術の有効性に関する調査結果(調査概要は第1回記事を参照)から、ユーザー企業が最新のネットワークセキュリティ製品に満足できていない理由を紹介しました。第2回では、調査結果をさらに掘り下げ、
- 新しいネットワークセキュリティ技術に対するユーザー企業の認識
- ユーザー企業のネットワークセキュリティへの取り組みに対する評価
- 技術のセキュリティリスクに対する有効性
のそれぞれについて、ユーザー企業の考えを見ていきます。
連載:「ネットワークセキュリティ製品」を使い倒すには
ネットワークセキュリティの取り組みに満足できていないユーザー企業
ネットワークセキュリティの脅威に対する自社の取り組みについて10点満点で評価してもらったところ、「セキュリティの取り組みの効果」の平均点はわずか4.7点と、十分に効果が得られていないことが分かります(図1)。本調査では、ユーザー企業が過去12カ月で平均2件のデータ侵害を経験しているという事実も判明しており、ネットワークセキュリティの取り組みの効果に対する評価の低さを裏付けています。
また、「サイバー攻撃の検知能力」や「サイバー攻撃の防止能力」についても、いずれも4.8点と不十分だという評価を下しています。さらに、「誤検知を最小にする能力」も同様に4.8点と低い評価です。
実際に経験した最も深刻なサイバー攻撃について聞いたところ、「Webベースの攻撃」(62%)や「DoS攻撃」(60%)と、本来であればネットワークセキュリティ技術で対処すべきものが多く挙がっています(図2)。
ネットワークセキュリティの優先順位トップは「Webトラフィックの可視化」
ユーザー企業は、何をネットワークセキュリティにおける最大のリスクとして捉えているのでしょうか。潜在的なネットワークセキュリティリスクについての問いでは、「システムの接続性/視認性の欠如」(58%)や「スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイス」(同)が上位となりました(図3)。クラウドインフラやクラウドプロバイダー、内部関係者にまつわるリスクがそれに続きます。一方、ネットワークインフラにリスクがあるとの回答は27%と比較的少なく、データセンターやサーバ環境などはさらに少数です。
ネットワークセキュリティの優先事項について聞いたところ、ユーザー企業は、「Webトラフィックの可視化」(78%)や「新しい脅威の認識」(72%)を特に優先していることが分かります(図4)。一方、「誤検知率の低減」を優先したいという声は38%にとどまりました。
ネットワークセキュリティの取り組みの効果が十分でない原因は、技術や製品にあるのでしょうか。それとも、運用するスタッフにあるのでしょうか。ユーザー企業は、自社のITセキュリティ担当者の知識や技術については、比較的肯定的な評価をしているようです(図5)。ITセキュリティ担当者の知識や経験について10点満点で評価してもらったところ、4点以下だとの評価は28%にとどまり、7以上を付ける回答者は44%に上りました。
図には示していませんが、ネットワークセキュリティ技術の管理ノウハウについては、6.2点という比較的高い評価となっています。また回答者の約半数(49%)が、自社で利用する新しいネットワークセキュリティ技術を社内スタッフに依存していると答えています。こうしたことから判断すると、ネットワークセキュリティの効果が上がらないのは、スタッフではなく技術や製品に原因がありそうです。
新しいネットワークセキュリティ技術に関するユーザーの認識は?
ここで、ユーザー企業が新しいネットワークセキュリティ技術をどう認識しているかを確認しておきます。新しいネットワークセキュリティ技術が有効活用できる対象について聞いたところ、「一般的なマルウェア」(80%)や「rootkit」(61%)を挙げた回答者が多いのが現状です(図6)。一方、思想的な動機に基づいて攻撃を仕掛ける「ハクティビズム」や「SQLインジェクション」に効果的だとの回答は、それぞれ35%、34%とそれほど多くありません。
最も効果的なセキュリティ技術を5点満点で回答してもらったところ、「侵入防止システム(IPS)」(4.31点)や「ファイアウォール」(3.92点)が効果的だという回答が多い結果となりました(図7)。「URLコンテンツフィルタリング」は1.79点と、それほど効果があると捉えられていないようです。
回答者の過半数である53%が、「新しいセキュリティネットワーク技術は、内部情報の外部流出といった『インサイドアウト型攻撃』の対策であって、外部から内部への攻撃といった『アウトサイドイン型攻撃』の対策ではない」と考えていることも見逃せない事実です(図8)。ユーザー企業は、主にインサイドアウト型の脅威の最小化のために新しいネットワークセキュリティ技術を利用しており、ネットワークセキュリティ製品が従来担ってきたアウトサイドイン型の脅威に役立てようとする動きは比較的少ないのです。
さらにユーザー企業は現状、サイバー攻撃の脅威を緩和する上でポイントソリューションを優先することが比較的多いようです。「総合的な対策を優先して検討する」と回答した利用者は41%にとどまります。
期待に応えられていないネットワークセキュリティ技術
こうした現状を踏まえた上で、新しいネットワークセキュリティ製品/技術がユーザー企業の期待に応えているのかどうかを見ていきましょう。新しいネットワークセキュリティ技術に関する意見を尋ねたところ、回答者の61%は、「新しいネットワークセキュリティ技術がサイバー攻撃には部分的にしか効果がない」と答えています(図9)。また回答者の大半(56%)は、Webトラフィックのセキュリティが一番のセキュリティ課題だと考えています。
その他、回答者の過半数は、新しいネットワークセキュリティ技術の問題として、誤検知率の高さ(57%)やベンダーの約束通りの効果が得られていないこと(56%)を挙げました。また回答者のほぼ半数(48%)は、Webアプリケーションやインターネットトラフィックをダウンさせる攻撃を最小限に抑えることに、新しいネットワークセキュリティ技術がそれほど有効ではないと考えています。こうしたことから、ネットワークセキュリティ製品が、導入初期に期待していたほどの効果を発揮していないことが分かります。
監視用にしか利用されないNGFW、原因は設定負荷や性能劣化
個別の製品分野について、利用実態と評価を見てみましょう。新しいネットワークセキュリティ製品の代表例である次世代ファイアウォール(NGFW)には、プラスの評価とマイナスの評価があるのが現状です。
NGFWには、アプリケーション単位でトラフィックを制御できるアプリケーション制御機能があります。ただし、NGFWのアプリケーション制御機能は、モニタリングやリポーティングのためだけに利用されることが多いのが実態です(図10)。
きめ細かいアプリケーション制御がNGFWのメリットの1つであるにもかかわらず、モニタリングやリポーティングの利用にとどまっている理由は何なのでしょうか。管理者にとって、制御レベルの設定が必要なことが、NGFWで詳細なアプリケーション制御をする際のハードルとなっているようです(図11)。また、詳細な設定をするとパフォーマンスが劣化する懸念があることも問題視されています。
NGFWの中には、中核機能の1つとしてIPS機能を搭載する製品もあります。しかし、回答者の半数以上(53%)は、NGFWでIPS機能を展開する際にパフォーマンスの低下に苦しんでおり、21%はパフォーマンスが不確実だと感じていることが分かりました。上述したように、IPSは最も効果的なセキュリティ機能だと捉えられているにもかかわらずです。
WAFの利用が進まない要因は誤検知への懸念
次に、Webアプリケーションファイアウォール(WAF)についての利用実態と評価を見ていきましょう。回答者の58%は、WAFをブロックモード(不正な通信を遮断するモード)で運用していないと回答しています。WAFをブロックモードで運用する際の最大の懸念は、誤検知率が高く、顧客など正常なユーザーのアクセスをブロックしてしまう可能性があることです(図12)。それに次ぐ理由として、ブロックルールの設定や更新の煩雑さが挙がっています。
WAFは、セットアップだけでなく、ルール/ポリシーの設定や更新に多大な時間を費やす必要があることも負担となります。例えば、2~3時間の間にWAFの設定・構成ができると回答したのは、全体のわずか25%にとどまります(図13)。回答者の大半は、WAFの設定には少なくとも数週間かかると回答しています。
また、各WAFのルールやポリシーを更新するために、毎月何日も費やしているユーザー企業は少なくありません(図14)。
IPアドレスブロックにも課題が
特定IPアドレスからのアクセスのブロックが効果的なセキュリティ対策であるかどうかについては、回答者の意見が分かれています。回答者の47%は効果的だと答え、44%は効果的ではないと回答しています。
ユーザー企業がIPアドレスによるブロックをためらう大きな理由は、誤検知によって正当なトラフィックがブロックされる可能性があることです(図15)。そのため、IPアドレスよりもさらにきめ細かい攻撃者の追跡方法が求められています。
調査結果からも分かるように、ネットワークセキュリティ技術には期待と現実のギャップが発生しており、ネットワークセキュリティ製品の活用においてさまざまな課題が生じています。次回以降は、調査結果を基に、主要なネットワークセキュリティ製品分野を導入・運用する上で留意すべき点を解説していきます。
執筆者紹介
森本昌夫(もりもと まさお) ジュニパーネットワークス株式会社
サーバ、ストレージ、セキュリティビジネスにおけるマーケティングおよびセールスの幅広い経験を有する。特に近年は、外資系ベンダーのセキュリティ部門のカントリーマネジャーを務めるなど、セキュリティに関する活動にフォーカスを置いている。現在はジュニパーネットワークスのセキュリティソリューションズ統括部長として、クライアントデバイス向けからデータセンター向けまでの広範なセキュリティ製品/サービスの普及、促進をミッションとする。
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「ネットワークセキュリティ製品」を使い倒すには
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