2014年度も「Silver to Gold」戦略を継続
2025年、“課題先進国”日本の医療ITはどうなっている? GEヘルスケアの発表で占う
GEヘルスケア・ジャパンは4月7日、2014年度戦略発表と新製品群を発表。2025年を見据え、医療機器に加えて超高齢社会で求められる医療サービスの提供を目指す。
「2025年の新しい医療の姿を見据え、医療課題を解決するイノベーションの実現と、人に優しい医療の提供を加速させる“誰にもまねできない新しい製品・サービスの投入、施策の実施”によって、未来型ヘルスケアカンパニーを目指す」
GEヘルスケア・ジャパン 代表取締役社長 兼 CEO(最高経営責任者)の川上 潤氏は、同社が2014年4月7日に開催した「2014年成長戦略発表会」の場でこう発言した。
2025年は2000万人を超える団塊の世代全てが75歳以上となり、高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)が30.3%になると推測される。政府は2011年6月に「社会保障と税の一体改革案」を公表し、超高齢社会における社会保障制度の持続性を確保するための施策を進めている。その中では、病院の機能分化や医療・介護連携、地域に密着した包括的なエコシステム構築など2025年に向けた医療・介護のあるべき姿を提示している。
川上氏は「社会構造の大きな変化に対応するため、テクノロジーも変わらなければならない。2014年の成長戦略として、技術イノベーションや人に優しい医療の提供を加速させる新製品・新施策を投入する」と説明した。本稿では、同社の2014年成長戦略発表会の内容を踏まえ、同日発表した新製品・サービスを紹介する。
従来の医療機器メーカーという枠を超え、未来型ヘルスケアカンパニーに
GEヘルスケア・ジャパンは日本を“課題先進国”と位置付け、高齢社会に必要な解決策を提供する「Silver to Gold」戦略を2009年から展開している。2014年もその戦略を基にさまざまな施策を打ち出すという。Silver to Gold戦略は「疾患アプローチ」「シルバー機器開発」「プライマリケア/ホームヘルス」の3つを柱とする。
- 疾患アプローチ:高齢者を対象に認知症やアルツハイマー病、リウマチ、肝臓疾患などに関する製品・サービスを提供する
- シルバー機器医療開発:人に優しい医療機器を開発する
- プライマリケア/ホームヘルス:在宅医療で必要となるモバイルの超音波検査機器、身守り支援サービスなどを提供する
川上氏は「当社自身が従来の医療機器メーカーという枠を超える必要がある」と語る。そのため従来の軸である「診断・臨床機器」に加え、将来を見据えて「サービス&IT」「分子医学」の2つの事業にも注力するという。同社は3事業における新製品・サービスを展開することで、先述の未来型ヘルスケアカンパニーを目指す方針だ。
高度医療の提供を支援するCT装置
「診断・臨床機器」事業では、技術的な差別化を競争力の源泉として常に新しい技術を開発して市場に提供するという。その1つが、2014年4月11日に提供を開始したCT(コンピュータ断層撮影装置)の最上位機「Revolution CT」だ。
川上氏によると、従来は「分解能(画質)」「高速化(処理速度)」「カバレージ(撮影範囲)」のいずれかの機能要素を満たすCT製品が市場に多く存在し、それらの要素はトレードオフの関係にあり、製品によって開発思想や臨床に対する知見に基づき注力する要素が異なっていたという。その上でRevolution CTは「ハードウェア、ソフトウェア、アルゴリズムを刷新し、3つの要素の品質を最高水準で達成するCTの開発に成功した」と語る。
中でも、X線の散乱を抑えて高い画像性能を提供する「3Dコリメータ」が特徴。川上氏は、東京都日野工場でのみ3Dコリメータを生産していると強調し、「最も動きが激しく、画像診断装置にとって最も困難な臓器である心臓の検査にも効果を発揮できる。心拍数を抑える薬剤(βブロッカー)が不要になり、小児患者の撮影にも適するなど、従来のCTとは異なり、さまざまな診療科の検査ニーズに対応できる。最高レベルの医療水準が求められる高度急性期病院における高度医療の提供を支援する」と語る。
また、同社は全身麻酔装置の新製品「エイシスCS2」「アバンスCS2」2機種を4月10日に販売開始した。安全な麻酔管理に向けた機能が強化されており、低流量麻酔のリスクを回避するために必要な情報やコスト情報を管理する「ecoflow」機能、肺保護換気を簡便化する「肺リクルートメント」機能、1動作で固定できるブレーキ機能などが搭載されている。
その他、生体情報モニタリング装置製品群「CARESCAPEベッドサイドモニタ」の新機種「CARESCAPEベッドサイドモニタB450」を4月7日に販売開始。既存の同製品群「B650」「B850」と比べて小型化・軽量化を図り、院内搬送などの移動時にも使える。同社の麻酔装置とUI(ユーザーインタフェース)を統一し、操作者のストレスを軽減する工夫が施されている。
画像診断装置における放射線量の低減を支援
サービス&IT事業の新製品として、4月7日に販売開始したのが線量最適化ソフトウェア「DoseWatch」だ。これは、画像診断装置における放射線量の低減を支援するWebベースのシステムだ。
DoseWatchは、画像診断装置から線量情報を取得して各機器のデータを蓄積し、分析・評価、報告リポートなどの機能を提供する。同社によると、これまで患者の体形や撮影部位、検査対象などに応じて医師や放射線技師が個別に線量を調整していたため、その計測基準や線量評価などが施設や担当者によって曖昧だったという。
DoseWatchでは標準規格を採用することで、GEヘルスケア以外の検査機器の線量情報を取得し、検査や患者、撮影部位などの切り口でデータを分析・表示する。施設内の線量情報を可視化することで、線量超過の原因解析や改善、モニタリングなどに役立てられるという。
また、同社は4月7日に医用画像の外部保管サービスの新バージョン「医知の蔵 2.0」を提供開始した。医知の蔵は、GEヘルスケア・ジャパンのPACS(医用画像管理システム)のデータをソフトバンクテレコムのデータセンターに保管するサービスで2012年から提供している。
新バージョンでは、システム管理者向けツールとして「ILM」(Information Lifecycle Management)機能を搭載。「120歳を超えた患者のデータを削除する」「一定期間経過した他院から取り込まれた画像データを非可逆圧縮(アーカイブ)する」など特定の条件を設定することで、利用施設の管理者は条件に合致した画像を再圧縮したり、削除したりできるようになった。
サービスの提供形態として「医知の蔵ベーシック」を追加し、これまでのサービス形態を「医知の蔵プレミアム」に名称変更した。同社によると、医知の蔵ベーシックではセカンダリサイトをデータのバックアップ機能のみに限定することでコストを抑え、医知の蔵プレミアムではサービスの継続性を重視したサービスとして位置付けているという。その他、前月比で増加した量のみを課金対象とし、単価設定をTバイトからGバイトに改良するなど、導入、または運用コストにおける柔軟性を打ち出した。
アルツハイマー病の診断薬開発にも着手
分子医学事業では、PET(陽電子放射断層撮影装置)検査で使用されるβアミロイド検出用薬剤「Flutemetamol」の国内開発に向けて、日本メジフィジックスとの協業体制の構築を発表した。
Flutemetamolは、アルツハイマー病やその他の認知障害が疑われる患者の脳内に見られる老人斑の主成分であるβアミロイドの沈着を画像化する目的で開発された診断薬。既に米国ではFDA(米食品医薬品局)に認可されて、2014年4月に販売が開始されている。日本メジフィジックスは、2014年3月に英GE Healthcare Ltd.とライセンス契約を締結し、Flutemetamolの製造・供給を見据えて国内承認申請を目指している。また、GEヘルスケア・ジャパンも2014年3月、病院内での薬剤合成に向けた医療機器の変更に関する承認を申請している。
日本では、400万人以上いる認知症患者の60%がアルツハイマー病に由来するといわれている。川上氏は「診断薬ができることで、治療薬の開発が加速する。国内のより多くの施設でFlutemetamolを開発できる体制が整えることで、高齢者人口が増加する日本におけるFlutemetamolによるPET検査の普及促進や患者のQOL(Quality Of Life)向上にも貢献できる」と語る。
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