ガートナー サミット 2014リポート
上司の“むちゃ振り”が育てた「ITアウトソーシング」が今、熱い
ITインフラのアウトソーシングへの意欲が今、企業で高まっているという。それはなぜなのか。アウトソーシングをするに当たって押さえておきたい4つのベストプラクティスと共に紹介する。
ITインフラのアウトソーシングというと、一昔前ならばホスティングサービスやハウジングサービスを指しただろう。ところが現在は、アウトソーシングの選択肢が多様化している。クラウドコンピューティング(IaaSおよびPaaS)の登場が、データセンターサービスに多彩なオプションを生み出したからだ。
ガートナー リサーチ バイスプレジデント フランク・リダー氏は、「クラウドを筆頭に、全世界でITインフラのアウトソーシング意欲が高まっている。しかし、IaaSからその効果を引き出すのは容易ではない」と述べる。
本稿では、2014年6月11日に開催された「ガートナー アウトソーシング & ITマネジメント サミット 2014」のリダー氏の講演から、ITインフラのサービスプロバイダーを評価/選定するためのベストプラクティスを紹介する。
アウトソーシングが“コスト削減”と“価値向上”のギャップを埋める
リダー氏によれば、企業でアウトソーシングの意欲が高まっている背景には、経営層がIT部門に求める2つの要件への圧力があるという。その2大要件とは、「コスト削減と、ビジネスにもたらす価値の向上」(リダー氏)である。IT予算は年々切り詰められ、ITに掛かるコストを下げるように求められる一方で、ITによってコスト削減以上の新たな価値(ビジネスへのインパクト)を生み出すことが期待されている。だが実際、コスト削減と価値向上は相反する目標であり、その間には大きなギャップがある。そこで、このギャップを埋める役割をアウトソーシングに求めるというわけだ。
リダー氏が引用したガートナーの調査によれば、データセンターサービスを導入する主な要因として、回答者の5割が「コスト削減」、3割が「ITプロセスの改善」、約25%が「主要ビジネスにおける主導権」を挙げている。「かつてはコスト削減が最も大きな要因だったが、近年になり、ビジネスにおける主導権を理由に挙げる割合が増えている。コモディティ化されたITインフラ業務はアウトソーシングし、市場で差別化を図れる業務を自社でインソースしようと考えているからだ」(リダー氏)。
冒頭で述べたように、現在、ITインフラのアウトソーシングには多様な選択肢がある。古くはデータセンターのアウトソーシング(ホスティング、ハウジング)から始まり、仮想化基盤提供サービス、専有環境の貸し出しサービス(マネージドホスティング)を経て、現在はIaaS、PaaS(クラウド)などがある。また、多数のプロバイダーが多様なサービスを提供している。ユーザー企業は、どのような視点でサービスやプロバイダーを選定すべきなのだろうか。リダー氏は「自社に必要なサービス形態を決めた上でベンダーを選定すること。コスト削減だけでは経営陣を納得させられないため、そのサービス形態を選ぶことで得られる新たな価値を明確にすることが大切」とアドバイスする。
リダー氏が引用したガートナーの「2012年ITアウトソーシング調査」によれば、「ITインフラのサービス形態として何を選択するか」という設問に関して、40%は「社内サービス」を選択しているが、28%が「従来型のアウトソーシング」、18%が「プライベートクラウド」、14%が「パブリッククラウド」を選択しているという。そして、ITインフラを外部に預ける際、プロバイダーに求める要件では、43%が「モバイルソリューション」と「IaaS/IU(Infrastructure Utility)」への対応を求め、33%が「グローバルデリバリ」に対応していること、32%が「クラウドサービスブローカー」の役割を担っていることを重要な購入基準に挙げている。
4つのベストプラクティス
リダー氏は、ITインフラのサービスプロバイダーを評価/選定するための4つのベストプラクティスを紹介した。
ベストプラクティス1:主要なプロジェクトでソーシングリスクを評価する
1つ目は、リスク評価だ。ITインフラをアウトソースした際に、どのようなリスクが考えられるだろうか。それをサービス形態ごとに明確化する必要がある。
例えば、コロケーションサービスでは「変更管理やエスカレーション管理のプロセス」、ホスティングでは「早期終了のリスクとイノベーションの可能性」、パブリッククラウドでは「サービスの契約義務と価格」、プライベートクラウドでは「SLA(サービスレベル保証)」を契約交渉時に明確にしておくべきだと述べる。
全てに共通して最低限、考慮すべきポイントは、「情報セキュリティとコンプライアンス」「国家的リスク」「成熟度」「コンピテンシー(管理に必要な技術的スキルなど)」「業務運営上のリスク」だという。
ベストプラクティス2:ベンダー選定用のスコアカードを作成する
2つ目は、ベストプラクティス1で特定したリスクに確実に対処するため、ベンダー選定における評価基準をスコアリングすることだ。
アウトソーシングサービスの契約では、プロバイダー側の担当者と人間関係ができてしまい、合理的な決断が難しくなることがある。そのため、評価基準と各加重度合い、ベンダーごとのスコアを明確にし、判断が狂わないように気を付けることが大切だという。
ベストプラクティス3:交渉時のポイントを明確にしておく
3つ目は、交渉時のポイントを明確にしておくことだ。「アウトソーシングではベンダーとサインをしたら終わり。サインをする前に、要望は必ず交渉しよう」(リダー氏)
図1のパーセンテージは、ガートナーの調査で「ベンダーと交渉した」と回答した分野の割合を指す。例えば、セキュリティに関して交渉した割合は14%となる。
ただし、リダー氏は、「全てを交渉するのは時間の無駄。ポイントを絞って交渉することが大事」だと指摘する。
ベストプラクティス4:要件に沿ってSOW/SLAチェックリストを作る
4つ目は、要件に沿ってSOW/SLAチェックリストを作ることだ。SOW(Statement Of Work、作業範囲記述書)/SLAチェックリストは、備忘録といっていいだろう。アウトソーシング形態に従って、図2のようにチェックリストを作成する。
リダー氏は最後にまとめとして「希望するサービス形態を決めてからベンダー選定をすること。自社のニーズに合ったSLAと価格モデルを策定し、得られる価値と掛かるコスト、リスクを明確化すること。実行に移した際には、定期的にその戦略が現在も有効かを検証すること」を提言した。
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