ベンチマークテストでうまくいくネットワーク機器選び【第1回】
知っている人は間違わない――今ベンチマークテストについて知るべき理由
多くのネットワーク担当者の頭を悩ませるのが製品の選定。カタログ情報は膨大に溢れていても、それだけで最適な選択をするのは難しい。そんなとき役に立つのが「ベンチマークテスト」だ。
例えば念願のマイホームを買うとき、読者の皆さんは何を基準に家を選ぶだろうか。一般的には、以下のような選定基準がある。
- 戸建かマンションか
- 立地場所、周囲の環境
- 価格、広さ、建築・販売メーカー
- 地震や災害に対する耐久性
選定の基準は人それぞれだろうが、いずれにしても、単に与えられた情報を比較するだけでなく、最後は自分の目で見て確かめ、購入の判断を下すという方が多いと考えられる。もちろん、「地震や災害に対する耐久性」のように、最終的に自分で確かめることができないような事柄については、建築メーカーが公表している情報を信じるしかない。それでも、ショウルームを見学するなり、営業マンの説明を聞くなりして、できる限りメーカーの発信する情報の根拠を探ろうとするのではないか。
住宅を例にしたが、これを自分の業務に置き換えて考えてみてほしい。企業が新たにネットワーク機器を導入するとき、ネットワーク担当者は何を基準に選定すべきなのだろうか。幾つかの例を見ながら考えていこう。
こんなにあった、カタログだけでは分からない事実
ネットワークには、それを構成するさまざまな種類の機器があり、機器を供給するベンダーがある。皆さんが必要とするネットワークを作る際には、どのようなベンダーのどのような機器が必要か検討し、何らかの理由があって機器を選択・購入しているはずだ。そのとき、皆さんの判断基準となるのはどのような情報だろうか。
ネットワーク機器の選択における代表的な基準を以下に挙げた。
- ○メーカー
- ○価格
- □使いやすさ(保守運用のしやすさ)
- ☆機能
- ☆性能とスケール(利用規模)
- ☆他の機器との親和性
※ ○:簡単に入手できる情報
□:今までの利用経験やトライアル評価などで、ある程度事前に入手できる情報
☆:場合によって入手できたりできなかったりする情報
「性能とスケール」は、実際に利用する際に意外と重要な判断基準であり、これが定まらないと製品選択自体ができない。例えば、必要なポート数やインタフェースのスピードなどはカタログやWebサイトから入手できるので、ある程度必要とする製品の目星は付けられる。
しかし、ここに1つの落とし穴がある。それは、カタログから得られる情報をわれわれが勝手に誤解してしまうことだ。例えば、サポートしている物理インタフェースの1Gbpsという記載をそのまま1Gbpsという最大スピードまで使用できると都合よく勘違いして購入した製品をいざ使ってみると、イメージしていたようなパフォーマンスが出ないということはよくある(一昔前、ADSLのスピードが広告値と実測値で大きく異なると問題になったことを記憶している読者も多いかもしれない)。
また、意思決定を大いに左右するような情報でありながら、カタログには書かれていない事柄もある。
ネットワーク担当者であれば、新規に機器を導入するだけでなく、運用中のネットワーク機器を新しい機器に買い替えた経験もお持ちだと思う。このとき、今運用中の機器と新しく購入を検討している機器との性能やスケールの比較ができると、選定の際の判断材料になるはずだ。しかし、そんな都合のいい比較データはそう簡単に入手できるものではない。
機器同士の相性に関する情報も、担当者としては知りたいに違いない。ネットワークは1台の機器で構成されることはなく、必ず2台以上の機器が組み合わさって動作している。機器同士の組み合せによって期待以上の効果が得られることもあれば、その逆に期待以下の効果となることもあり得る。だが、そうした情報をカタログやWebサイトで見つけることはほぼ無理だと思う。
このように、製品選択に当たっては、カタログやWebサイトだけでは得られない“隠れた”情報があるのだ。
実測値でなければ正しく判断できない
話を少し変えてみよう。あなたが会社で「5キロの荷物を運んでもらえるか」と先輩から聞かれたら、あなたは何と答えるだろうか。恐らく答える前に以下のようなことを先輩に確認するのではないだろうか。
- どんな形の物か
- いつまでにどこへ運ぶのか
- 運ぶための道具は使えるか
5キロという重さ、つまりスペックそのものは問題ないはずだと思っても、その形状や運び先によっては、先輩の期待に応えられない可能性も出てくるかもしれない。だから、引き受ける前に、複数の判断材料を用意して、実際の作業における負荷がどのくらいのものになるのか確認することが重要になる。
これは、ネットワーク機器を選択する際にも通じる話だ。機器を選ぶに当たり、カタログやWebサイトの情報、つまりスペックだけで判断するのは早計だ。そこで重要な判断材料になるのが、実際に測定した結果、つまり実測値である。
機器を選定するために見ているスペックから勝手に勘違いしてしまいがちなポイントの1つが、機器の性能とスケールだ。この2つをまとめて「機器のパフォーマンス」と称することがあるので、皆さんも耳にしたことがあるはずだ。例えば「1Gbps、8ポート実装」というスペックのネットワーク機器があったとしよう。ここで「1Gbpsのポートが8個あるから、パフォーマンスは8Gbpsである」と計算した読者は、正解であり不正解でもある。
まず、最大で8Gbpsのパフォーマンスが期待できるというのは理論的には正しい。ただし、誤解してはいけないのが、カタログ情報は「8Gbpsのパフォーマンスが出せる可能性を示唆してはいるが、それを保証しているわけではない」ということだ。その理由は、社内のシステム環境やネットワークの利用状況などによって、実際のパフォーマンスは変化するからである。
ベンチマークテストとは、学生時代のテストのようなものだ。授業を受け、テスト勉強も頑張っていれば、理屈の上では誰でも満点を取れる可能性がある。だが、実際にはなかなかそうはいかない。筆者も学生のころ、テスト結果、つまり実測値があまりに低くて苦労したことがあった。それでも、真の姿を知ることは、その次の対策を考えるうえで欠かせない情報である。ネットワーク機器の選定においても、理論値を見るだけでは十分でなく、やはり実測値を得ることで初めて判断材料にすることができるのである。カタログ情報だけを見て、誤解してはいけない。
多くの読者は「そんなことは分かっているよ」と心の中で思われたと思う。しかし、実際にこの誤解が原因で予定していたネットワークが作れなかったり、機器を買い直すということはしばしば起きているのだ。この記事を読む皆さんが同じ失敗をしないよう、あらかじめ押さえるべきポイントを知っておきたい。
これからの機器選定に確かな指標を
ネットワーク機器の真の情報を得るための手段が「ベンチマークテスト」だ。ベンダーのカタログやWebサイトを注意深く見てみると、何かの測定結果のようなデータが記載されていることがある。これらの多くはメーカーが自ら行ったベンチマークテスト結果である。だが、それらのデータがどのようなベンチマークテストで得られたのか、ほとんど説明されることはない。また、データの意味を正しく理解できなければ、せっかくのデータが、かえって誤解の原因にもなりかねない。
一方で、このベンチマークテストの結果を上手に正しく利用することができれば、今まで得ていた情報に加えて、より意味のある判断材料を手に入れることができるのである。
この連載では、さまざまな機器におけるベンチマークテストを紹介しつつ、そこで得られる情報とその意味について、分かりやすく解説していく。過去の失敗例あるいはベンチマークテストによって救われた例を交えながら、できる限り具体的に、読者の課題を意識して連載を進めていこうと考えている。
新規あるいはリプレース時にネットワーク機器を選
択する際、どういう情報があれば正しい選択ができるのか。もしくはネットワーク機器を販売する立場であれば、スペックだけに頼って販売すると、どのようなリスクがあるのか。あるいは、ベンチマークテストで得られる情報さえあればパフォーマンスを保証できるのか。こういった、重要だがあまり語られることがないがポイントにもスポットを当てていく。
執筆者紹介
中村彰宏 (なかむら あきひろ) 株式会社東陽テクニカ
検証用測定器のセールス、サポートを通じて測定の個別コンサルティング(プロフェッショナルサービス)を展開中。近年はIT機器ベンチマークテストサービス「@benchmark」を立ち上げパステルネットワークスと共同で運営。会員(有料)に対してベンチマークテストの実施、テストリポートの公開、技術情報の公開(リポートの活用方法、検証に関する技術情報)、コミュニティー(情報交換の場)といったサービスを提供している。
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ベンチマークテストでうまくいくネットワーク機器選び
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