SSD購入のためのヒント集
フラッシュストレージのベンチマークテストが信用できないわけ
フラッシュベンダーのベンチマーク値がどのようなテストで出されたものかを理解することは重要だ。製品購入に当たっては、自分が求めるフラッシュ構成と同じ構成でテストされたベンチマーク結果を参考にすべきだ。
フラッシュベンダーが製品のテスト結果として、IOPS(1秒間に処理できるI/O数)を100万以上と発表するのは珍しくない。オールフラッシュアレイベンダーも、PCIe SSDベンダーも、さらにはハイブリッドベンダーもそうだ。最初に伝えておくと、私の勤務先の米Storage Switzerlandも、これらのテストの一部に参加している。
100万以上というIOPSは確かに素晴らしい数字に思える。だが、こうしたテストは、企業がフラッシュストレージをビジネスに活用する上で具体的に役立つのだろうか。結局のところ、どんなテストも、ベンダーの製品に有利になるように結果を操作できる。テスト結果は重要だが、テストがどのように行われたかの方がもっと重要だ。幸い、こうしたテストデータの一部は、テスト方法を調べることで実態を推測し、自社の環境に照らして評価することができる。
テストの有効性
テスト環境やベンチマークでは、企業固有の環境を完全にシミュレーションすることはできない。極めて重要な1つのポイントが、ベンダーのテストが「ベンダーソリューションのパフォーマンスの最大値を示すだけでなく、理想的ではない条件でソリューションがどのように機能するかも示すように設計されているか」どうかを判断することだ。
例えば、ハイブリッドフラッシュアレイ(ディスクが回転する従来のHDDとSSDから成るシステム)では、“キャッシュミス”(データがSSD内になく、HDDストレージから取り出す必要がある状態)をシミュレーションするのは非常に難しい。このため、ほとんどのベンダーのテストには、I/Oパフォーマンスに対するキャッシュミスの影響を再現する方法は盛り込まれていない。
実は、一部のハイブリッドフラッシュベンダーはそれどころか、オールフラッシュ構成でテストを行い、その結果を公表している。だが、ハイブリッドフラッシュが実際のデータセンターにこの構成で配備されることはまずない。これらのことから、エンドユーザーにとって重要なのは、「許容できるレベルのパフォーマンスを維持する上では、フロントエンドのフラッシュプールの背後で動作する従来のディスクストレージが、フラッシュプールと比べて大きな役割ではないにしても、同じくらい重要な役割を果たす」ことを理解することだ。
スペックのチェック
ベンチマークテストでフラッシュモジュールとHDDの組み合わせが使われている場合は、ドライブ構成を調べる。例えば、パフォーマンスを高めるために高回転のディスクドライブが非常に多く組み込まれていて、ショートストローク化されている(ディスクプラッタの最外周部のみを使うようにドライブが構成されている)のであれば、一部の購入者にとっては役に立たない可能性がある。こうしたソリューションはコストがかさむからだ。
低速なディスクバックエンドに付き物の遅延を減らすために、フラッシュと従来のディスクを組み合わせたハイブリッドアレイのアプローチを実装しているベンダーもあるが、このアプローチには課題がある。フラッシュと従来のディスクドライブでは、パフォーマンスが大きく異なることだ。フラッシュを使用するワークロードは、従来のディスクドライブを使用する同等のワークロードよりも格段に高速で実行される。問題は、ベンダーのベンチマークテストがこの違いを明示しているか、あるいは最良のシナリオに沿った結果を提供するにとどまっているかだ。後者のケースでは、全てのI/Oがフラッシュストレージに対して行われた場合のアレイのパフォーマンスが示されることになる。
ハイブリッドアプローチの場合、「ユーザーは、フラッシュと従来のディスクそれぞれのI/Oパフォーマンスの平均値を期待できる」という説がある。だが、この説は非常に誤解を招く恐れがある。ハイブリッドアレイが低速のディスクドライブ(7500rpmなど)と比較的少量のキャッシュで構成されている場合は特にそうだ。従って、「ハイブリッドアレイベンダーがどのようなテストを行ってパフォーマンス値を得たのか」を理解することが非常に重要になる。ベンダーがテストワークロードを、フラッシュを使用するもののみに限定している場合は、パフォーマンス値をうのみにしてはならない。実際のユースケースでは、そうした想定通りにはいかないからだ。
オールフラッシュアレイベンダーのベンチマークパフォーマンステストについても、購入決定を行う前に必ず調査するようにする。フラッシュアレイ製品には、SLC(Single-Level Cell)フラッシュモジュール(高パフォーマンス/高コスト)、MLC(Multi-Level Cell)モジュール(低パフォーマンス/低コスト)、両者の組み合わせのいずれかが搭載されている。
前述したハイブリッドアレイの例のように、フラッシュメーカーのベンチマークの値がどのような内容のテストによるものかを理解することが重要だ。購入決定に当たっては、自分が買おうとしているフラッシュ構成と同じ構成によるパフォーマンスベンチマークを参考にするようにする。つまり、MLCフラッシュアレイを買うときは、間違ってSLCフラッシュアレイのベンチマークテスト結果を判断材料にしないように注意する必要がある。
ワークロードに注目
調査が欠かせないもう1つのポイントとして、リード/ライトミックスがある。フラッシュストレージでは、リード操作とライト操作のパフォーマンスの違いが大きいからだ。実際のワークロードがリードのみでなければ、シーケンシャルリードのみのベンチマークはほとんど価値がない。同様に、ライトのみのワークロードも非現実的だ。要するに、各種のワークロードミックスをテストし、さまざまな結果を提供するベンチマークを参考にするとよい。
フラッシュベンダーのパフォーマンステストには、ほかにも注意点がある。それはベンダーがテストワークロードを作成した方法だ。データベースのストレステスト、エンドユーザーのデスクトップ操作のエミュレート、コマンドラインのI/O生成ユーティリティの利用など、さまざまな方法のどれが使われたのか。どの方法も悪くなく、それぞれに持ち味がある。
データベースストレステストやVDIシミュレータなど、特定のワークロードを使用するテストが最近、大きな注目を集めているが、こうしたテストも、フラッシュストレージには適用しにくい可能性がある。フラッシュは非常に高速であるため、ベンチマーク自体の弱点を露呈させることがあるからだ。コマンドラインテストツールとアプリケーションシミュレータは、どちらも不完全であり、弱点を理解する必要がある。
優れた設計が成功を呼ぶ
幸い、ハイブリッドアレイやオールフラッシュアレイが適切に設計され、補完的なストレージが適切に用意されていれば、エンドユーザーは高いIOPS性能を享受しながら、キャッシュミスに伴うパフォーマンス低下リスクを限定できる。このため、必ず各ストレージ層のパフォーマンスを考慮し、その短所を十二分に補うようにする。
ハイブリッドフラッシュアレイの場合、「鎖は一番弱い輪以上に強くなれない」という言葉がまさに当てはまる。そのため、最も低速なデータ層は、かなり強力なディスクバックエンドで構成する必要がある。例えば、一部のケースでは、キャッシュミス時のパフォーマンス低下を軽減する目的で、ディスク層に1万5000rpmの高速ディスクドライブを採用する。こうした積極的な対策を講じれば、フロントエンドキャッシュはそこそこの容量にとどめられるだろう。
また、HDD層が少数の大容量ドライブで構成されている場合は、フラッシュ層に保存されるデータが全体に占める割合が高くなるようにフラッシュ層を構成しなければならない。新しいストレージベンダーの製品の費用対効果を踏まえると、アクティブデータを全てフラッシュに保存し、キャッシュヒット率を90%台後半にできる可能性がある。
オールフラッシュアレイの方が、ベンチマーク評価はしやすい。複数の層という変数がないからだ。このアレイについては、SLCおよびMLCフラッシュの価値を理解することが重要になる。MLCフラッシュはSLCフラッシュよりも低速だが、HDDよりもはるかに高速であることを念頭に置くことが大事だ。場合によっては、MLCフラッシュを使うことで、必要な速度向上が得られる可能性がある。
この両方のフラッシュの機能を最大限に活用する方法は、両者を組み合わせることだ。一部のベンダーは、MLCとSLCの両方を採用したフラッシュを投入している。こうした製品では、ハイブリッドSSD/HDDと同様の変数が再び加わる。だが、この2種類のフラッシュは、適切に使われれば、相互で完全に補完し合える。両者によってアレイを階層化することが最適なアプローチだ。この階層化は、最もパフォーマンス要件が厳しいI/O(ライトや非常に頻繁なリードなど)用の小容量のSLCモジュールを、他のデータ用の大容量のMLCフラッシュアレイと組み合わせて行う。
いずれにしても、企業のIT環境では、予測可能なパフォーマンスが肝心だ。エンドユーザーは、パフォーマンスが期待を大きく下回ることを決して許さない。そのため、最悪の状況を想定してストレージソリューションを設計する必要がある。
結論
ベンダーのストレージベンチマークテストは、適切に調査して内容を明確に理解すれば、有効に活用できる。大方のテスト結果は、特定のストレージプラットフォームが維持できる機能について、パフォーマンスの最大値を示すことを目的としている。しかし、ほとんどのテストでは、そのプラットフォームが、低速なストレージメディア上のデータへのアクセス要求(アクセス先がSLCからMLCへ、あるいはフラッシュからHDDへ切り替わる)に伴うI/O遅延を、どれだけうまく管理できるかは不明だ。ベンダーのベンチマークは製品選択に役立てることができるが、全体的な意思決定プロセスにおける1つの要素にすぎない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Google Appsの企業利用を考える
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー