3年間で10億ドルを投資
HDDはいずれなくなる――SSDとオールフラッシュアレイで変わる市場
新興企業を中心に活況を見せるオールフラッシュストレージアレイ市場。後発となるIBMは、今後3年間で新ソリューションの開発や自社の既存製品ポートフォリオとの統合に取り組み、市場に挑戦する。
米IBMは2013年4月11日(米国時間)、オールフラッシュストレージアレイプラットフォームを正式発表した。2012年に買収した米Texas Memory Systems(以下、TMS)の製品をベースにしたものだ。また、IBMは今後3年間で10億ドルを投資し、新しいフラッシュソリューションの開発と自社のストレージ、サーバ、ミドルウェアといった製品ポートフォリオへの統合に取り組むことも明らかにした。
「IBM FlashSystem」と呼ばれるこのストレージアレイプラットフォームは、TMSのハイパフォーマンスなRamSan製品ファミリーを改称したもので、IBMのストレージ仮想化アプライアンスであるSystem Storage SANボリュームコントローラー(以下、SVC)と統合されている。IBMはTMSを2012年10月に買収しているが、買収額は公表されていない。
FlashSystemは4モデルがラインアップされている。FlashSystem 820と同810ではeMLC(Enterprise Multi Level Cell)フラッシュが採用されており、FlashSystem 720と同710ではより高価で信頼性の高いSLC(Single Level Cell)フラッシュが採用されている。どのモデルもフラッシュチップを高密度なフォームファクタに収めている。
FlashSystemは、IBM初のオールフラッシュストレージアレイ。IBMはStorwize V7000、System Storage DS8870、XIV Storage Systemを、SSDとHDDを組み合わせたハイブリッド構成で提供している。
IBMはオールフラッシュストレージアレイ市場では後発に属する。新興企業の米Kaminario、米Nimbus Data、米Pure Storage、米Skyera、米SolidFire、米Tegile Systems、米Violin Memory、米Whiptailがオールフラッシュアレイを手掛けており、これらの企業の一部は1年以上前から出荷している。米EMCも最近、オールフラッシュストレージアレイのXtremIOの限定提供を開始。2013年後半に一般出荷を開始する予定だ。米NetAppはハイパフォーマンスオールフラッシュアレイのEF540を提供しており、メインストリームストレージ市場向けにFlashRayをプレビューしている。米Hewlett-Packard(HP)は、SANアレイの3PAR StoreServのオールフラッシュバージョンを販売中。(関連記事:専用ASICで高速処理を実現するミッドレンジ向け「HP 3PAR StoreServ 7000」)米Hitachi Data Systems(HDS)は、オールフラッシュアレイで使用する独自のフラッシュコントローラーを準備している。
フラッシュストレージは、HDDと比べて高価なことが普及の妨げになっている。しかし、IBMの幹部は、フラッシュはHDDよりもコスト効率が高いと主張し、その理由として、ストレージの利用率向上、CPUコアの利用抑制、データセンターの省スペース化に寄与することを挙げている。
「フラッシュは価格が高過ぎるという見方がある」と、IBMのシステムストレージおよびネットワーキング事業担当のゼネラルマネジャー、アンブシュ・ゴヤール氏は語った。「だが、Gバイト当たりのコストは少し高いかもしれないが、トータルなオペレーションを見ると、フラッシュは本格的な実用期に入っているといえる。フラッシュ自体ではなく、システムの最適化の観点に立つことが重要だ。われわれは、全てのオペレーション情報がフラッシュに格納されるようになると考えている」
IBM幹部は、IBMは全てのエンタープライズストレージ(Scale Out Network Attached Storage:SONASや、重複データ削減機能を持つバックアップディスクシステムであるProtecTierなどを含む)に加え、サーバとソフトウェアにもフラッシュ技術を統合すると語った。同社は、フラッシュを使ったデータアナリティクスアプライアンスも開発する計画だ。
「フラッシュの用途はストレージだけではない。その枠を超えた応用が可能だ。フラッシュの全面的な採用による最適化が焦点になる」と、IBMのフェローでストレージシステムの最高技術責任者(CTO)を務めるビンセント・スウ氏は語った。「われわれはフラッシュ製品ラインを拡充していく。フラッシュはリアルタイムアナリティクス用のアプライアンスに統合される見込みだ。将来、トランザクションデータは回転メディアには一切格納されなくなるだろう」
スウ氏は、フラッシュシステムは3年後には、1Uのデバイスの容量が数百P(ペタ)バイトになるだろうとの見通しを示した。
また、IBMは、世界12カ所にコンピテンシーセンターを開設し、顧客が概念実証のために、独自の構成でオールフラッシュストレージの利用によるパフォーマンス向上を測定できるようにする計画だ。これらのセンターは2013年末までに稼働を開始する見通しだ。
ハイパフォーマンスで高価なFlashSystem
IBM FlashSystemはパフォーマンスが重視されており、高価なSSDアレイの部類に入る。どのモデルも1Uサイズで、1ラックに42ノードまで収容でき、その場合のストレージ容量は合計すると最大約1Pバイト。
可用性の高いFlashSystem 820は、それぞれ2つのオールフラッシュカードを装着できる12スロットを備え、20Tバイトのストレージ容量を提供する。最大構成ではIOPS(1秒当たりの入出力操作)は最大52万5000(4Kバイト単位)Readの性能で、価格は30万ドル。ハイパフォーマンスなFlashSystem 720は10Tバイトのストレージ容量を提供し、Tバイト当たりのコストは2万~2万4000ドル。512Gバイトのオールフラッシュカードをそれぞれ2つ装着できる12スロットを備える。
FlashSystemはIBM SVCと統合されているため、顧客は複数のストレージシステムのストレージ容量をプールしてリアルタイム圧縮し、シンプロビジョニングやスナップショットレプリケーションの他、複数のプール全体にわたる階層型ストレージ管理を行える。
「われわれは、フラッシュの導入がいかに簡単かを示そうとしている」とゴヤール氏。「フラッシュを導入すれば、データセンターにおける機能変更を伴わずに、経済的に機能改善が得られる。アプリケーションに変更を加えたり、バックアップやアーカイビングのやり方を変えたりする羽目に陥ることにはならない」
フラッシュでアプリケーションの高速化を図るSprint
企業は現在、アプリケーションによっては1秒当たりのスループット向上を迫られている。このため、少量のフラッシュを利用してスループットの問題を解決しようとしている。米Sprint Nextelでは、7Pバイトに上るSAN容量のうちフラッシュは1%に満たない。
SprintのITオペレーションディレクターのカリム・アブドラ氏は、約2年前、TMSのRamSan-820システムを導入したと語った。SprintはEMC Symmetrix DMXシステムを使っていたが、Oracleデータベース上のTier 1データを扱うワークロードにおいて、このシステムのIOPSが80万という限界に達したからだ。
「われわれはEMCに、何か手を打ってもっと速くすることはできないかと尋ねた」とアブドラ氏。「だが、答えは『できない』だった。そこでわれわれは、フラッシュに目を向けた。ホットスポットを探し、それらをTMSフラッシュ上に移したところ、パフォーマンスが45倍も向上した」
アブドラ氏は、Sprintのデータセンターに合計150Tバイトとなる9つのフラッシュストレージシステムを導入し、電話アクティベーションアプリケーションのパフォーマンスを高める計画だとも語った。
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