米Googleが明かす障害復旧の舞台裏
Gmail消失事故で分かった「だからテープバックアップが必要なんだ」
米Googleで発生した2011年のメール障害。そこから得られた教訓は、実に興味深いものだった。Googleスタッフが明かした障害復旧の舞台裏を示す。
最近、英ロンドンで私の得意とするトピックである「Software-Defined Everything時代の障害復旧」についてのプレゼンテーションを準備していた。その間に私は、2014年に私の仲間が講演したセッションの動画リンクを偶然見つけた。
米ニューヨーク市で開催された富士フイルムの年次イベント「Global IT Executive Summit」で披露され、特に啓発的で興味深かったそのセッションは、米Googleのスタッフでサイトリライアビリティエンジニアであるレイモンド・ブルーム氏によるものだ。私は、全ての人にそのセッションを聞くことをお勧めする。
2011年のGmailデータ消失事故から得た教訓
これは、Googleやクラウドバックアップに関するよくある宣伝ではない。ときに私は、重要なビジネスデータの保護と障害復旧について考える。これらビジネス継続性機能には、プロセスの実施と予行演習に加え、インフラの整備や制御の仕組みなどが必要となる。近道はない。
Googleが2011年に直面したメールサービス「Gmail」の障害では、多くユーザーのメールを紛失し、それをすぐに復旧する必要があった。その障害から得た教訓は、とても興味深いとブルーム氏は言う。
ストレージ機能をソフトウェアで制御する「Software-Defined Storage(SDS)」の推奨アプローチである冗長化は、「データの完全性や永続性の保証が必要な障害復旧戦略としては、ひどく不十分だ」とブルーム氏は述べる。複製とミラーリングは障害復旧を約束しないという、単純な真実を認めることが必要だ。なるべく幾つかのデータを、できればテープにバックアップをする必要がある。そう、テープバックアップが必要なのである。
冗長性に対して人々が考えていることは、必ずしも真実ではないとブルーム氏は強調する。「ミラーリングをしているディスクでデータを5回コピーした場合、5個の不良コピーが生じる可能性がある。2011年のGmail機能停止は、冗長性は復旧戦略ではないことを示した」(同氏)。ゼロデイ攻撃を受けた場合、「データが複製されるところ全てで、データの完全性が危険にさらされる恐れがある」と同氏は語る。
冗長性は、低レベルのコンポーネント障害に対する優れた防御を提供する。だが障害からの復旧を保証するには、できればテストして復元できることが分かっているテープバックアップが必要だ――。ブルーム氏のこうした考えは、私の考えと一致する。
復元性は、Googleが実施したテープ戦略の中で重要な項目である。ブルーム氏は講演で、Googleが5本のテープにまたがるデータを展開させる方法の説明に多くの時間を割いた。同氏が説明したのは、5本のうち4本のテープが、データの読み取りに失敗する5番目のテープの内容を復元できるようにする方法である。これは、Googleで「年に何百本ものテープに起こる」(同氏)というメディア障害の対策だ。この数は、Googleが年間に使用するテープ数のほんの一部だという。
より興味深いのは、ブルーム氏が実施した、大規模な分散サーバのインフラで大量のデータをバックアップ/復元した方法だろう。「E(エクサ)バイトのデータをバックアップするのにはおよそ112年かかる」と同氏は指摘する。だがGoogleでは、分散処理の仕組みである「MapReduce」を使用し、バックアップジョブを多くのサーバに分割することで、7年でEバイト規模のバックアップができるという。意図的ではないとしても、同氏のこうした取り組みは、ビッグデータ分析や高性能クラスタコンピューティング向け技術の興味深い使用法だといえる。
「バックアップ、特にテープバックアップの取得が好きだという人はいない」とブルーム氏は認める。なお悪いことに、障害が発生してデータの復元が必要だという呼び出しを好むものもいない。
ブルーム氏は、Googleがメールの機能停止から回復したプロセスを詳しく述べた。あるとき、会社の多くのテープライブラリのうちの1つで、テープをピックアップして元に戻すロボットの1つに不具合があり、ロボットはテープを棚に戻し続けた。ブルーム氏はある技術者に電話をして、米オレゴン州のデータセンターに行って問題を解決するよう依頼した。
その技術者は当初、テープライブラリへの電力をシャットダウンすることを拒否。ライブラリを壊すことを恐れてロボットの爪からテープをむしり取り、テープドライブの挿入口に手動で挿入した。ブルーム氏の対応は傑作だった。「エンタープライズ号(米SFドラマ『スタートレック』に登場する宇宙船)の船長という私の権限において、敵対するロボットを無力化することを君に命じる」
バックアップやデータの復元性の確認に時間を費やすことを好む者はいない。だがそれこそが、企業が取り扱うデータに耐久性と完全性を確実に持たせたり、データの生成、処理、共有、保存、ネットワーク化に必要なシステムを確実かつ適切に保護する唯一の方法なのだ。
本稿著者のJon William Toigoは、IT分野で30年の経験を持つ米Toigo Partners InternationalのCEOであり、マネージングプリンシパルである。Data Management Instituteの会長を務める。
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