【連載コラム】医療ITの現場から
クラウド時代の電子カルテに期待される変化
診療所で医療ITシステムが普及する中、法改正などの影響でシステム自体にも幾つか変化が見られている。クラウド時代の医療システムに求められる要件を整理する。
診療所における医療ITシステムの普及
診療所において、広く普及しているシステムは「レセプトコンピュータ」「画像ファイリングシステム(PACS)」「電子カルテ」「診療予約システム」の順となっています。その中でも、電子カルテは基幹システムとして中心的な役割を担っています。また、米Appleの「iPad」が2010年に販売されて以来、医療現場におけるタブレットの普及が進んでいます。現在、「タブレット型問診システム」「在宅医療システム」「多職種間連携システム」など、タブレットの活用範囲が広がりを見せています。
薬事法改正により、PACSは「電子カルテ一体型」から「連動型」に
そのような中、2014年11月の薬事法の改正によって、PACSが「医師の診断を支援するシステム」と定義され、同法の届出の対象となりました。これを受けて、電子カルテ一体型画像ファイリングシステムをのシステム構成を組み替えて提案するベンダーが増えています。具体的には、構成要素である電子カルテと画像ファイリングを別々のシステムとして切り離し、相互を連係させる「連動型」の提案が目立ち始めました。
電子カルテ一体型画像ファイリングシステムには、電子カルテと画像ファイリングシステムを一体化することで、シームレスな操作性を実現するメリットがありました。そうした製品の普及に歯止めがかかってしまったことは残念なところです。
クラウド解禁による変化
2010年の医療分野のクラウドコンピューティングの解禁以来、クラウド型システム(ASP/SaaS)が増加傾向にあります。それ以前から診療予約システムでは、クラウド型システムが一般的でしたが、診療予約システム自体が診療に直接関わるものでないことから、医療分野のクラウド解禁を待たずにサービス提供が可能だったという背景があります。
一方、診療情報のやりとりを行う在宅医療システムや多職種間連携システムといった在宅医療関連システムは、2010年の解禁を境にさまざまなベンダーから販売されるようになりました。さらに、2014年度診療報酬改定で「地域包括ケアシステムの推進」が強く打ち出されたことで、さまざまなシステムが急増しました。この動きは、2015年にはPACSにも波及しています。
クラウド時代の電子カルテに期待される変化
iPadなどタブレットの普及と医療分野のクラウド解禁、そして在宅医療の推進が相まって、診療所における電子カルテへの要望に変化が見られています。
電子カルテへの最近の要望事項
- 在宅医療の現場でタブレット端末から入力できる
- OSのバージョンアップに影響を受けない
- Webブラウザで動く
- 使用するハードウェアを自由に選べる
- 離れた複数の拠点から相互にカルテの閲覧、入力ができる
- 自宅からカルテの閲覧、入力ができる
クラウドが「システム」を「サービス」に変化させる
このように変化した要望事項を見ると、クラウドコンピューティングの利用に慣れた医師が電子カルテを「システム」として捉えるのではなく、「サービス」として捉えようとしていることが分かります。
システムは、診療所の業務システムとして購入するものであり、サービスは診療上必要な機能に利用料を支払って活用するものということになります。この変化は、電子カルテの業界構造を大きく変える可能性があります。インターネットで好きなアプリを選んで契約を結び、マスター設定を行えばすぐに電子カルテが利用できる時代も、それほど遠い未来ではないのかもしれません。
電子カルテは「業務システム」から「プラットフォーム」に
診療所における電子カルテは、診療の流れにおいて中心的な役割を担う「業務システム」という従来の考え方から、診療に関するさまざまなシステムを取りまとめる「プラットフォーム(基盤)」としての考え方に変化していくことも考えられます。
最初に電子カルテというプラットフォームを選び、それ以外のシステムを用途に応じて組み合わせていくという考え方です。例えば、オンラインサービスによくあるガジェット(小規模アプリ)のように、PACSや予約システム、在宅システムがアプリとしてラインアップされ、医師は希望に合わせて自由に組み合わせていくという考え方です。医師が「プラットフォームとして優れているかどうか」「連係できるシステムがそろっているかどうか」などを基準に電子カルテを選ぶようになるのでしょう。
著者紹介
大西大輔(おおにし だいすけ) メディキャスト株式会社 メディプラザ統括マネージャー
2001年一橋大学大学院MBAコース卒業後、同年日本経営入社。2002年に医療機関の“選ぶ”を支援する展示場「メディプラザ」の1号店を東京(神田)に立ち上げ、その後2003年にメディプラザ大阪、2005年にメディプラザ福岡を順次開設。2007年より東京・大阪・福岡の3拠点を統括する統括マネージャーに就任。専門の医療IT分野については、医師会、保険医協会などの公的団体を中心にセミナー講師を多数実施。
【関連サイト】
電子カルテ活用のためのショールーム「メディプラザ」
医師の右腕を育成する「電子カルテ+クラーク養成講座」
医院・クリニックのオフィシャルホームページ制作システム「Wevery!」
メディプラザ特設ブース「地域包括ケアで活用できるシステム」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
【連載コラム】医療ITの現場から
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
市場調査・トレンド
[コパード株式会社] 約9割が負担を実感 Salesforceのテスト業務に関する実態調査で見えた課題とは -
市場調査・トレンド
[コパード株式会社] 「Salesforce」開発・運用におけるAI活用実態調査レポート -
事例
[テクバン株式会社] 1画面でITサービスデスク業務が完結 太陽ホールディングスに学ぶデバイス管理 -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] ライセンス無料 Drupalベースの「多言語ECサイト開発用パッケージ」の実力は? -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] 日本発グローバル企業用Drupal「Risley(リズリー)」の実力とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
4
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
5
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
「レガシーシステム・老朽化システムの運用課題と刷新」に関するアンケート
-
8
「業務改善とツール活用」に関するアンケート
-
9
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
10
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の運用管理と統制機能を徹底比較
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
3
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
10
生成AIの活用を阻む「5つの壁」とは? AIネイティブ組織へ変革を遂げる方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー