年間4900万リットルを浪費するという報道も
サーバの水冷却方式に“不都合な真実”、水不足で批判相次ぐ(2/2 ページ)
代替冷却手法を使用するデータセンターを紹介
代替冷却手法を使用しているデータセンターの代表的な例には、次のようなものがある。
- 米クインシーにある米Vantage Data Centersのデータセンターでは、スウェーデンMuntersの間接蒸発冷却システムを使用している
- 英ロンドンにある米Rackspaceのデータセンターと、アイルランドのダブリンにある米Digital Realtyのプロファイルパークに位置するデータセンターでは、天井設置型の間接式外気テクノロジーと英Excoolの蒸発冷却を組み合わせて使用している
- 米オレゴン州プラインビルにある米Facebookのデータセンターは、第1フェーズで直接蒸発冷却/加湿方式を採用している。小さなノズルを送水管に取り付け、細かい霧を空気経路に噴霧し、空気を冷却しながら湿気を加えるというものだ。第2フェーズでは、湿らせた媒体を使用している
- 米アップステートニューヨークにある米Yahoo!の「Chicken Coop」データセンターの設計では、気象条件に問題がなければ直接外気冷却が用いられている
- オーストラリアの通信会社であるMetronodeは直接外気冷却を利用している(また、補助的に直接蒸発冷却と直接膨張システムも使用している)
Facebookが同社のプラインビルのデータセンターで採用している冷却システムでは、冷却機と冷却塔を使用する従来型のシステムで必要とされる量の10%しか水を使用していないと発表している。Excoolは間接蒸発冷却製品のマーケティングにおいて、同社の方式によって1Mワット規模のデータセンターで消費される水は年間約98万リットルで、従来のデータセンターにおける水の消費量のたった3.3%だと主張している。またドライクーラーによるシステムを採用しているデータセンターでは水の消費量がさらに少なくなる。
全てのデータセンターで採用されない理由
本稿で紹介した新しい冷却設計では電力と水の使用量を大きく削減できるにも関わらず、全てのデータセンターがこうした設計を採用していないのはなぜだろうか。
これらの冷却システムでは従来の冷却方式に比べて1.5~2倍のコストが掛かる。詳細な財務分析については、「断熱冷却(蒸発冷却)システムに対する投資の潜在的不利益に関する米Compass Datacentersの調査報告)」(訳注:英語)を確認されたい。そもそも、現在は運用で使用する電力も水も安価に手に入る時代だ。いずれ今のリソース消費の代償を払うときがくるだろう。だが、それまでの間に話を限定し、このようなコストが掛かるシステムでROIを達成できるとしても、経済面を考えると目標達成までに何年も要するだろう。
また新しい冷却システムは非常に広い空間を必要とする傾向もある。従来の水冷式冷却システムであれば、データセンターの所有者が建物の外装を変更しなくても比較的少ない占有面積で限度容量を詰め込むことができる。そのため、多くのデータセンターでは従来のシステムの方が理にかなっている。
Uptime Instituteの「Tier Certification」を取得したいデータセンターの所有者にも影響がある。Uptime Instituteの「Tier III Constructed Facility」の認定を取得するには、冷却システムの各コンポーネントが全て独立しており、設定した日中の冷却温度に影響が出ないことが条件となる。つまり、データセンターの所有者は、冷却設備や制御システム、補給水のタンクと配水、熱交換器が停止しても耐えられるようにしなければならない。また、「Tier IV Fault Tolerance」は、システムが個々の重大な事象にも耐え、重要な環境に影響が出ないことが認定の条件になっている。新しい冷却設計を採用しながらUptime Tiersの認定を受けているデータセンターは多数存在するが、認定を受けるまでのプロセスがある程度複雑であるのは紛れもない事実だ。
企業は気温の要素も考慮した上で決断を下さなくてはならない。入ってくる空気の温度を22度に調整した状態でサーバを実行する準備が整っていない場合は、追加投資で得られる見返りはそれほど大きくない。企業はまずコンピュータルームを適切に管理し、コストを押し上げる可能性のある汚染物質を処理しなければならない。例えば、気流を最適化することで冷却効率を改善するなどだ。それに加えて、暖かく湿度の高い気候では、このような新しい冷却システムの一部はそもそも機能しない。
新しいテクノロジー全般にいえることだが、代替的な冷却システムに運用の難しさは付き物だ。また、不慣れな機器構成の運用と管理を行うために企業で新たにトレーニングを実施する必要が出てくるだろう。ミッションクリティカルなデータセンター領域に初めて導入する特定ベンダーの製品に対して、企業は特に徹底的な適正評価を実施すべきである。実際に購入してしまってからでは遅いのだ。
最後に、水の保全についてはデータセンター業界全体が無関心であることを指摘しておきたい。Uptime Instituteの調査データによれば、水の使用を追跡したり、米Green Gridの「Water Usage Effectiveness:水使用効率性」指標を利用しているデータセンター運用担当者は全体の3分の1にも満たないという。また、Uptime Instituteの「2015 Data Center Industry Survey:2015年データセンター業界調査」によると、データセンター運用者が最も重視している指標を尋ねる質問では、水の使用の優先順位は最下位も同然であった。データセンターの管理者の関心が水の使用を下回っていた指標は二酸化炭素排出量だけだった。
ただし、データセンターで使用されている大量の水や電力は世間からやり玉に挙げられやすい。従来型の水冷却システムを選択するのが適切な理由は数多く存在し、特に既存のデータセンターに対応する場合は十分な理由がある。だが、新たにデータセンターを建設する場合は、代替的な冷却設計を検討すべきだろう。全体的なビジネス要件に照らし合わせて検討する必要があり、全体的なビジネス要件に持続可能性の要素が盛り込まれている可能性も否定できない。
Uptime Instituteは、データセンターにおけるリソース消費の削減に対して何十年にもわたって調査を実施してきている。水の問題は現在カリフォルニアで深刻になっているが、ITの効率化に向けてさらに広い枠組みの包括的なアプローチを採用し、この問題を評価することが必要だ。この枠組みがあれば、データセンター管理者は、ビジネス要件の正当性を適切に説明できるようになり、自分たちの環境や企業のリソースに対して責任を持って取り組めることを実証できるだろう。
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