「Open Compute Project」がSDN分野に参入
Facebookが主導するデータセンターの「ノーブランド化」
「Interop 2013」の基調講演では、Open Compute Projectがネットワーク分野に拡張すると発表された。これによりデータセンター業界のOpenFlow/SDNへの流れが加速する可能性がさらに高まった。
米Facebookの技術者がデータセンターの機器用に作成したオープンなハードウェアデザインカタログである「Open Compute Project」(以下、OCP)は、その対象が拡大し、トップオブラック(ToR)スイッチも含まれることになった。
Facebookでハードウェアデザインとサプライチェーンオペレーションを担当するフランク・フランコブスキー副社長は、「Interop 2013」の基調プレゼンテーションで、OCPをネットワーク分野に拡張する方針を明らかにした。今回のプロジェクト拡張の狙いは、任意のネットワークOS上で動作するスイッチを設計し、データセンター運用者がネットワーク内でハードウェアとソフトウェアを切り離せるようにすることにある。
「今、何か新しいことをやらなければ“インターネットを拡張し人々に素晴らしいエクスペリエンスを提供する”という目標に対して、独自仕様の閉鎖的な技術開発手法が制約要因になる可能性がある」とフランコブスキー氏は語る。
OCPは、インフラに対する需要の増大に対処するために、ソフトウェアやサーバなどのデータセンターコンポーネントの設計と構築をカスタマイズするというFacebookの取り組みから発展した。
OCPはこれまでに、サーバなどのコンポーネント用のデザイン仕様を作成した。台湾のQuanta ComputerをはじめとするODM(Original Design Manufacturer:製品の設計から生産までを行う)企業は、Facebookなどの大手インターネット企業向けの機器の製造でこれらの仕様を採用し、その結果、顧客企業は既存のハードウェアベンダーに頼らなくても済むようになった。フランコブスキー氏によると、Facebookはこの2年間で自社データセンターの設備投資コストを24%削減するとともに、データセンターの運用効率を38%改善できたという。これは“サーバ、ソフトウェア、データセンターのノーブランド化”によるコスト削減効果だとしている。
OCPはこの2年間で、Facebookのプロジェクトという枠を超えて拡大した。現在では、米Rackspace、米Goldman Sachs、米Arista Networksなどの企業がメンバーとして名を連ねている。同グループは他のオープンソースソフトウェアプロジェクトとの共同作業を通じて、データセンター運用者がエネルギー効率に優れたサーバや、安価で持続性に優れたブロックストレージの開発を支援している。
フランコブスキー氏によると、OCPはサーバとストレージに“オープンソース型”アプローチを持ち込んだが、これまでデータセンタースイッチが話題に上ることはなかったという。
「残念ながら、ネットワークハードウェアとネットワークOSは今日でもブラックボックスとして販売されている。スイッチを購入すると、OSが組み込まれた状態で提供されるのだ」とフランコブスキー氏は指摘する。
Facebookでは、OCPのビジョンをネットワーク分野にまで拡張することにより、データセンター管理者がスイッチをラック内のサーバと同じような感覚で扱えるようにする考えだ。「プリブート環境にベアメタルデバイスを導入し、そこにOSはダウンロードできるようにすべきだ」と同氏は語る。
OCPのスイッチがオープンネットワーク技術に与える影響
Software Defined Network(SDN)ネットワーク業界は既に、ホワイトボックス(ノーブランド)のデータセンタースイッチ用のオープンソースのネットワークOSを幾つか出している。Flow Forwarding.orgの「LINC」ソフトウェアや米Big Switch Networksの「Switch Light」などだ。また、SDNベンダーのBig Switch Networksおよび米Pica8は、オープンソースのネットワークソフトウェアを動作させるためのデザイン仕様をODM向けに開発した。OCPがこの分野に参入したことで、業界がオープンネットワークプラットフォームに向かう流れがさらに加速する可能性がある。
フランコブスキー氏によると、米Intel、米Broadcom、米VMware、Big Switch NetworksもOCPのネットワーク構想に参画しているという。米Googleの元技術者と米Cisco SystemsのフェローであるJ.R.リバーズ氏によって創設された新興企業の米Cumulus Networksも関与している。OpenFlowおよびSDNの推進団体であるOpen Networking Foundation(ONF)およびSDNのオープンソースプロジェクトであるOpen Daylightも参加の予定だ。
「われわれは開発とリリースをオープンにしており、この方針は今後も変わらない。ウィッシュリストを作ってサプライヤーに開発をお願いするというようなことはしない。供給側が開発しないのであれば、われわれが開発するまでだ」とフランコブスキー氏は話す。
OCPネットワーク構想は、2013年5月16日(米国時間)に米マサチューセッツ工科大学で開催された初の「OCP Engineering Summit」で正式に発表された。同構想を率いるのは、Facebookのネットワーク技術チームを統括するナジャム・アーマド氏だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー