パブリッククラウドが正解の企業と不正解の企業
「オンプレミス環境をAWSへ」って、本当にお得なの?(2/2 ページ)
世界の航空データを収集し分析しているグローバルデータサービス会社の米FlightStatsでは、AWSをハイブリッド活用して、データを低価格で顧客に提供している。
「われわれはデータを入手し、演算処理して、当社プライベートクラウドのデータセンターで利用できるようにしている。自前のデータセンターの方がパフォーマンス当たりのコストを抑えられるからだ」とFlightStatsのプラットフォームエンジニアリング担当副社長、アレックス・ウィザースプーン氏は語る。
最も重要なのは、AWSでインスタンスを常時稼働させないことだという。「皆が苦労しているのは、AWSの料金モデルにそぐわないワークロードを配置しているからだ。そのせいで、かなりの使用料を支払う羽目になっている」と同氏は続ける。
同氏によれば、多くのIT部門、とりわけ大企業のIT部門は、大量のシングルサーバワークロードを従来のIT環境からAWSに移行して実行しようとしている。
「これでは1つのインスタンスに月額で数百から数千ドルは掛かってしまう。こうした大規模な従来型データベースの実行には、非常に多くのメモリを必要とするからだ。AWSで100Gバイトのメモリが必要となるかが判断の基準となる」とウィザースプーン氏は語る。
AWS向けのマネージドホスティングサービスを提供する米Datapipeのパブリッククラウド担当副社長マシュー・スコット氏によれば、企業は大抵、プロジェクトを通じて常にROI(投資利益率)を評価している。
「レガシーアプリケーションをあらためて見直し、考えてみるといい。クラウドでの稼働を想定していないアプリケーションをクラウドに対応させるために数百万ドルを投じることが、本当に理にかなっているのかということだ。当社は実際、多くの大規模企業との間でまずこの点を話し合っている」とスコット氏は語る。
中には、こうした投資をいとわない企業もあるだろうが、投資済みのハードウェアの償却がまだ完了していないのになぜアプリケーションを作り直す必要があるのかと疑問に思う企業もあるだろうとスコット氏は指摘する。
オンプレミスのハードウェア使用に関して契約上の義務がある場合には、この疑問が特に大きくなる。
「ユーザー企業の中には、ハードウェア購入の大型契約がまだ残っていて、契約により向こう何年間は所定の台数のサーバを購入することになっているところもある。そうしたハードウェアの使用をやめてクラウドに移行するとなれば、株価にも影響が及ぶはずだ。事業報告書に記載しなければならないので、一目瞭然となる」とDatapipeの自動化およびDevOps担当ディレクター、パトリック・マクローリー氏は語る。
Datapipeの顧客で、ゴルフ用品やゴルフウェアのメーカーである米TaylorMade-Adidas Golf Companyは、AWSを使って米OracleのERPシステムのディザスタリカバリ対策をしているが、本番サーバをAWSで実行する必要性はまだ感じていないという。
「パブリッククラウドは安いが、そこまで安価ではない」と同社のインフラエンジニアリング担当マネジャー、クリストファー・スミス氏は語る。「大量のストレージを使用し、データ入出力も多ければ、自社でサーバルームを保守する年間コストを簡単に上回ってしまう。『コストを大幅に削減できるからクラウドを利用しよう』というわけにはそう簡単にはいかない」
同社はディザスタリカバリの目的でOracle ERPシステムのバックアップをクラウドに置いているが、残りのインフラは依然としてオンプレミスにある。スミス氏はもっと多くのアプリケーションのディザスタリカバリをクラウドで実現する可能性を排除したわけではない。だが、Oracleデータベースに大きく依存している同社の本番稼働中アプリケーションを、AWSで問題なく稼働できるか確信を持てなかったという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
「身代金を支払う」以外のランサムウェア対策は本当にあるのか?
-
6
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
7
肥大化した「SFA」の沼 4カ月でBigQuery×AppSheetの新システムを構築した方法
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
ネットワールド、ICカード認証対応のシンクライアント構築アプライアンスを販売
-
10
次世代RPA「ハイパーオートメーション」が急成長か Gartnerが予測
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
4
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー