「cybozu.com カンファレンス 2015 東京」事例リポート
業務を年間1万時間効率化、サイバーエージェント他2社のkintone活用法(2/2 ページ)
NKアグリ:業務品質を底上げする社内的な議論の“基盤”に
写真処理機器などを手掛けるノーリツ鋼機の社内ベンチャーとして2009年に設立されたNKアグリは、野菜の生産を手掛ける企業だ。自社工場でのレタスの水耕栽培を皮切りに、2014年からはリコピンを豊富に含む「リコピンニンジン」など、提携農家とともに機能性野菜の生産にも乗り出した。流通先となる量販店は40店舗に上る。
kintoneを利用したきっかけは、NKアグリの代表取締役社長である三原洋一氏が、自身を含めた社員の出張に伴う時間やコストを削減したいと考えたことにある。NKアグリとノーリツ鋼機はそれぞれ本社を和歌山と東京に置き、三原氏は普段は東京で働く中で、月に数度、和歌山へ出張していた。一方、社員12人のうち半数は生産工場に勤務する。残る社員で生産以外の業務をカバーしており、社員の出張も非常に多かった。三原氏は、「社長には契約や生産、資金などに関する承認を行う業務がある。しかし、それらの業務をkintoneで行えれば、出張は不要となりコスト負担を軽減できる。また、会社全体を考えれば、経費精算など経理業務の効率化も見込めた。そこで、私自身で必要な仕組みの整備に着手した」と説明する。これには現場も相次いで乗った。
kintoneを利用する動機は部門によって異なるという。管理部門の主たる目的は、いわば判子が押されるまでの時間を短縮すること。生産部門では、農業という特性上、今年の経験を来年の同時期にメールで通知することなどであり、プロセス管理機能やリマインダ―機能から徐々に利用が広がっていった。
そして今、kintoneは同社の業務に欠かせない情報共有基盤にまで進化を遂げている。その成果の一端は、売り上げ速報データや収穫データを基に、生産側と営業側で、今後の出荷予測などの議論が活発化し、生産工場での廃棄ロスが0.04%にまで低下したことにも表れている。「これまで部門ごとにデータを作成していた。それがkintoneによって、一元化された共通の数値で議論することが可能になった。適宜、コメントを補足できる機能も議論の深化に大いに役立っている」と三原氏。
NKアグリでは今後、作物の収穫時期の相談などのため、契約農家にもkintoneの利用を拡大する考えだ。
中島工業:開発に社員を巻き込み業務改革を短期達成
kintoneによる全社的な業務改革で大きな成果を上げたのが、工場向け水源開発から水質管理、排水処理までの一貫した運用と設備建設で強みを誇る中島工業である。社員数約100人の規模でありながら、その独自のポジション故にメーカーとの絆も深く、全国に14拠点を構える。
同社は一般的に建設業に分類されるが、実際には、顧客の水にまつわるあらゆる悩みに応えるというサービス業の色が濃い。サービス品質を高めるには、各現場に寄せられる多様なクレームや要望を本社でくみ取る仕組みが重要だ。だが、「社員は昔気質でITに抵抗があり、拠点に分散しているため情報共有は遅々として進まなかった。業務も属人的で、社員の記憶頼りによるメンテナンス漏れなども危惧されていた」と中島工業 BIリーダー 普天間 大介氏は振り返る。
情報共有化のため、業務標準化を選ぶ道もあった。だが、一方的に進めれば長年の口伝による“秘伝のタレ”、つまり他社との差別化に欠かせぬノウハウが失われる可能性があった。
普天間氏は試行錯誤を繰り返す中で、kintoneに出合う。その印象を普天間氏は「他製品と比べ、機能開発に要する手間が格段に少なく、試行錯誤のしやすさに驚いた。ITスタッフが不在で、要件定義も困難な当社でも、これならシステム化に着手できると確信した」と説明する。
定額契約の開発部隊を外部から迎え、社内の暗黙知を形式知化するために社員も参加する形で開発はスタート。その過程では、独自ノウハウが失われる可能性がある業務は、システム化をあえて見送った。作業開始からわずか3カ月後には約80のアプリケーションができあがり、業務プロセスの多くがシステムに置き換わった。
ただし、これには裏もある。「7割程度の完成度であえてリリースに踏み切った。当然、あらゆる部署からクレームが寄せられ、270機能の改善が必要となった。しかし、本当に必要な機能を短期間に見極めることにもつながった」(普天間氏)。そして、要求を全て満たした新バージョンを2カ月後に発表すると、社員のシステムを見る目が変わった。システムは現場に面倒な入力作業などを強いるものでなく、現場を支援するものであるという見方に変わったのだ。その結果、各種システムに入力されるコメントが着実に増加し、念願の情報共有も行われるようになった。
普天間氏によれば、システム導入を成功させるポイントとしては、現場にいる声の大きい人を見方に付けることだという。「やりたいことは山のようにある。関係者をどれほど巻き込めるかが鍵を握る」(普天間氏)
以上、3社の事例をリポートした。いずれも、単なるシステム開発ではなく、スピード経営、ワークフローの効率化、情報共有によるチームビルディングといった経営/業務課題改善に向けた取り組みであり、業務部門を巻き込んだ開発であることが特徴的だ。
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