IT部門もアジャイル、DevOpsで行こう【第1回】
求められるのは“スピード基準” IT部門が開発部隊になれない2つの壁(2/2 ページ)
DevOpsで脚光を浴びるDocker
ここまでIaaS活用したDevOpsを紹介してきたが、近年脚光を浴びているテクノロジーがある。それが「Docker」だ。
Dockerは米Dockerが開発しているコンテナ型仮想化実装である。一般的なIaaSが採用しているのは、サーバそのものを仮想化してしまうハイパーバイザー型だが、コンテナ型ではOS内に隔離された空間を用意し、その空間内でプロセスを動かす手法をとっている。OSイメージから動かさなければいけないハイパーバイザー型と異なり、コンテナ型ではOSを共有しているため、極めて軽量かつ高速にアプリケーションの仮想化を行うことができる。
コンテナという考え方や実装自体は新しいものではない。実際、Linuxでは2008年からコンテナを利用できるようになっており、軽量・高速なアプリケーションの仮想化はそのときから実現可能であった。それではなぜ、Dockerが注目されるようになったのだろうか。
それは、Dockerがコンテナ技術だけでなく、「Dockerfile」というインフラのコード化を実現する仕組みや、コンテナイメージの差分を再利用したりシェアしたりする仕組みなどを提供しており、DevOpsの実現に最適なツールだからだ。
Dockerは比較的新しいLinuxであれば動作する。消費するリソースも少ないため、実機にLinuxが入っていなくても、仮想マシンでLinuxを立ち上げてDockerをインストールすれば良い。その辺りの環境を一度に設定してくれる、「Docker Toolbox」というツールもリリースされている。
開発者はDockerで動くようにソフトウェアの開発を進めれば良い。前述したDockerfileを利用すれば、どういったイメージをベースにして、どういったパッケージを追加し、どうやってソフトウェアを配置するかをコードで記述することができる。
そうやって出来上がったソフトウェアとDockerfileをCIでテストする。CIでテストが完了したら、Dockerイメージを作成し、運用に引き渡す。自動化が行われていれば、そのままリリースすることも可能だろう。
このように、開発からリリースまで、全てのサイクルをDockerのエコシステムに乗せたまま回せるようになった。DevOpsという時代の要求に見事にマッチしたのが、Dockerが人気となった理由だといえるだろう。
DevOpsの鍵、PaaS
DevOpsを実践していく上で、もう1つ忘れてはならない技術がPaaS(Platform as a Service)である。
Platformという言葉が指す範囲は広く、PaaSと呼ばれるサービスは世の中に多く存在する。特に有名なのが、アプリケーションPaaSと呼ばれる、ソフトウェアの実行環境を提供するサービスだ。米Salesforce.com「Heroku」や米Google「Google App Engine」、米Microsoft「Azure App Service」といったサービスの他、米Cloud Foundry Foundationが開発するOSS「Cloud Foundry」もこれに当たる。
IaaSはインフラの構築を代行してくれるが、開発したソフトウェア向けの実行環境の構築やデプロイ、そして運用は自分で行わなくてはならない。Dockerは、IaaSよりも上のレイヤーで便利な仕組みを提供し、環境構築やデプロイを簡略化してくれる。しかし、インフラのコード化や運用は自分で行わなくてはならない。
ではPaaSはどうか。PaaSは、環境構築から運用まで、全てをサービスとして提供してくれる。ユーザーが行うのはソフトウェアの開発と、ほんの少しのデプロイ作業のみだ。
IaaSやDockerが行ってくれない運用フェーズの作業には、死活監視、ログの収集、パフォーマンスの計測などが存在する。PaaSはこれらも代行してくれるため、企業はソフトウェアの開発に集中することができるわけだ。運用(Ops)の作業を究極まで減らすことでリリースサイクルの高速化を図る。これもまた、1つのDevOpsの在り方だといえるだろう。
また、近年ではDockerを利用できるPaaSも登場している。環境構築を代行してくれるPaaSと、インフラのコード化や作成したイメージのシェアが行えるDocker。サイクルにおいて担う領域が重複しているようにも見えるが、果たしてどうすみ分けているのだろうか。次回以降、PaaSとDockerの仕組みやその関係性について、より詳細に見ていくこととしよう。
ツールや手法はスピードを基準に採用すべし
これまで紹介してきたアジャイルソフトウェア開発やDevOpsといった手法、そしてIaaSやDocker、PaaSといったテクノロジーは、いずれもスピードを上げていく上で優れた方法だ。
何をどう採用し、組み合わせるか悩むことも多いと思うが、ユーザー企業が最も意識しなければならないのは、「世の中のスピードに付いていき、新たな価値を提供し続ける」ことだ。ツールや手法の導入を目的としてしまうのではなく、何をどう取り入れれば自社のスピードを最速化できるかを考えて採用していくと良いだろう。
草間一人(くさま かずと)
ICT企業でPaaSの開発を主導。その傍らで、古今東西さまざまなPaaSとその関連技術を扱う勉強会「PaaS勉強会」を主宰。また、日本Cloud Foundryグループの理事も務める。
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IT部門もアジャイル、DevOpsで行こう
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