モバイルデバイスのコンプライアンスに苦心するIT管理者【後編】
「iPhone」「Android」ユーザーの“わがまま”を放置すると法令違反を招く?(2/2 ページ)
抵抗の問題
モバイルデバイスのコンプライアンス違反の主要な原因として、誰もセキュリティとコンプライアンス維持の責任を取ろうとしないことをビーバー氏は挙げる。意思決定者が、モバイルデバイスのコンプライアンスに関する法令に従うための取り組みや予算計上をしようとしない場合がある。さらに複雑さや従業員数の多さから、スマートフォンやタブレットのコンプライアンスには手を出さないIT管理者もいる。この傾向は特に大企業で見られる。「IT管理者は職務を果たそうとするが、経営幹部からの支援を受けられないことが多く、なるがままにしておく他ない」(ビーバー氏)
さらに大きな問題は、IT部門と主要なグループ(コンプライアンスの担当者や社内監査担当者など)とのコミュニケーション不足だとビーバー氏は指摘する。「誰もが自分勝手に作業を進め、各自の職務を全て順調にこなしていると決めてかかっている」と同氏は語る。
個人が所有するデバイスのコンプライアンス維持に関して、企業は従業員からさまざまな抵抗も受けている。多くの場合、パスワードの使用や特定のアプリケーションでのコンテンツ共有制限などのセキュリティ要件を満たす責任は従業員にあるが、必ずしもその規則に従うわけではない。
「コンプライアンスは従業員にとって大きな負担だ。あらゆるセキュリティに関する責任を従業員に帰するべきではない」とビーバー氏は忠告する。
ジェンキンス氏は、特にモバイルデバイスでの企業データへのアクセスや共有の自由を従業員に与えすぎることが惨事の原因であるとし、コンプライアンス規則に関する従業員への教育の必要性を説いている。
「さまざまなコンプライアンスに関する取り組みが、従業員の認識と教育に向けられるようになっている。モバイルは新しいコラボレーション環境である。特にスタートアップ企業はコラボレーションの過剰な取り入れによって、自社を危険にさらしている」(ジェンキンス氏)
従業員のデバイスを管理する公式のBYOD要綱を企業が定めていなくても、従業員が個人のスマートフォンから暗号化されていないメールを送信した場合には、企業が責任を問われる。セキュリティ侵害が発生した場合、法執行機関にはデバイスに保存されている情報を調査する権限がある。
「個人所有のデバイスを会社が管理していなくても、IT管理者が責任を逃れられるわけではない」とジェンキンス氏は言う。
モバイルコンプライアンスに役立つツール
幸いなことに、企業はコンプライアンスを現実的な問題として捉え始めているとジェンキンス氏は話す。IT環境を詳しく把握して適切なセキュリティ対策を講じる一助となるツールは数多く存在する。
その最たるものとして、ジェンキンス氏はMDMソフトウェアを挙げる。他にも、モバイルデバイスのアプリケーションとデータを仕事用と個人用に分離する「コンテナ化」「デュアルペルソナ」といったテクノロジーが役立つという。「多くの企業では、このようなテクノロジーを導入することで、コンプライアンスを維持しやすくなる」(同氏)
ただし、全ての企業が従業員のデバイスのローカルに管理ソフトウェアをインストールしようと考えているわけではない。一般的に、エンドユーザーはIT部門に個人情報を監視されることを嫌うものだと、米国の新興クラウドアクセスセキュリティブローカーであるBitglassのCEO、ナット・カウシク氏は話す。
管理ソフトウェアの代わりに、データの暗号化サービスを提供するクラウドアクセスセキュリティブローカーがゲートウェイの役割を果たすことができる。データはクラウド経由でルーティングされ、エンドユーザーのデバイスに到達するまで暗号化される。クラウドアクセスセキュリティブローカー市場には現在、Adallom(Microsoft傘下)、Bitglass、CloudLock、Elastica、Netskope、Imperva、Skyhigh Networksなどの企業が参入している。ベンダーによっては、リモートワイプ機能も提供しており、紛失したり盗まれたデバイスのデータを保護できる。
従業員の動作を追跡してセキュリティ要件が満たされているかどうかを確認するには、監視ツールやレポートツールも非常に重宝する。また、アプリケーション内分析を使用すると可視性が高まるので、従業員のデータへのアクセス方法やアプリケーションの操作方法を把握して従業員がネットワークとパスワードの規則に従っているかどうかを確認するのに役立つ。
セキュリティをさらに強化するために、Travelportは仮想デスクトップインフラ(VDI)を使用しているとジェンキンス氏は話す。同社は機密データの扱いが必要な従業員に仮想アプリケーションを提供している。そのアプリケーションはデータセンターでホストされているので、IT管理者が配信方法を制御して、従業員のデバイスのローカルには何も保存されないようにすることができる。
「IT管理者は、情報の印刷やダウンロード、従業員による画面キャプチャーの可否を制御できる」(ジェンキンス氏)
プライバシー法は進化し、デバイスの増加によって管理上の課題はさらに増えている。それに伴い、今後数年の間にモバイルデバイスのコンプライアンスに関連する多くの課題が生じるのは避けられないだろう。ただし今のところは、全従業員の協力が得られれば、コンプライアンスを維持する方策はいくらでもある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
AIで人を減らした企業がもう心変わり 「AIブーメラン現象」の実態
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー