Computer Weekly製品ガイド
セルフサービスでIT部門&スタッフを解放する方法
セルフサービスITの導入により、IT部門は効率を向上し、管理を従業員に委ねることができる。ただしそれは適切にやった場合に限られる。
いつでもどこからでも、さまざまな端末を使って会社のITにアクセスしたがるユーザーから、効率向上のための統合を望む組織まで、進むべき道はクラウドベースサービスにある。コンシューマーにとっても従業員にとっても、それはセルフサービスモデルへの切り替えを意味する。
その変化を誰もが歓迎しているわけではない。人間味が失われると感じる人もいれば、助けてもらうこと(あるいは自分のために作業してもらうこと)を懐かしむ人もいる。いずれにしても、セルフサービスへの切り替えを成功させるには、このプロセスをうまく進行させ、十分なサポートを提供し、十分理解してもらう必要がある。それは一般的に、適切なツールやシステム、サプライヤーを選定するということでもある。
切り替えの影響が従業員に及ぶ場合は特にそれがいえる。従業員に対して、それまで他者にやってもらっていた、あるいは大きな助けを借りていた管理業務の多くを自分たちが担うよう頼むことになる。そのプロセスは一般的に、次のような複数の明確な段階を経由する。そのほとんどは技術的理由ではなく、人とビジネスのためのプロセスだ。
- 従業員のための、1対1の管理サポート:これはサービス提供側(つまり雇用主)にとって非常にコストが高くつく
- 管理型サービス:コストは抑えられる。外部のプロバイダーに委託する場合もある
- セルフサービス:従業員が取り組みのほとんどを担う
- 自立:サポートは事前方式から事後方式へとシフトする
- 従業員主導型:サービスがユーザーによって自分たちのニーズに合うように最適化される
従業員セルフサービスへの道
従業員の日常には、セルフサービスの方が適している場面もある。特に、従業員に要求される労力が認識される価値に比べて低い場合や組織にとってのメリットがすぐ目に見える場合はそれが当てはまる。給与のような個人情報の単純な更新や閲覧への対応といった、人事や会計の中で人と接することなく定期的に繰り返されるプロセスは出発点として効果が出やすい。
この業務には、従業員50人未満の小規模企業から大企業に至るまで、人事や給与を専門とするCIPHR、Cezanne、ADP、People、Cascade、PAYLOCITYなどのサプライヤーが提供するSaaSが対応している。料金は、Cezanneの場、従業員150人以上の企業向けに従業員1人当たり1ポンドで基本的な人材、研修、人事用のポータルを提供している。
Deltek、SAP、Oracle JD Edwardsといったプロバイダーの包括的ERPに人事や給与といった従業員サービスを取り込むこともできる。こうした製品は上乗せ式で「サービスとしての」料金体系も用意しているが、より幅広いメリットをフル活用するためには、投資増大や事前のコミットメントを行って導入の幅を広げる必要が生じるかもしれない。
小規模企業にとっても、管理サービスを従業員が直接利用できるようにするための投資増大は可能であり、恐らく現実的だ。単純な情報サービスの導入が完了したら、次のステップとして休暇の登録や病欠の報告などの(依然として従業員の管理に関する)トランザクションプロセスを導入する。多くの場合、前述した人事ツールの多くでこうしたサービスを拡張機能やオプションとして提供している。
それぞれの管理プロセスの自動化は役に立つが、従業員にとっても会社にとっても即座にメリットがあり、最も長期的な価値があるのは、経費報告と管理のトランザクションサービスだ。技術を利用する機会はある。例えばスマートフォンのカメラやモバイルネットワークを使えば、経費情報をその場で記録できる。これによって従業員は申請を忘れずに済み、雇用主や税当局は申請内容の有効性を確認できる。ひいては提出された経費の精度が増すだけでなく、プロセス完了にかかる時間も短縮できる。小規模企業にとってはキャッシュフローショックを回避する一助になり、従業員に経費を支払うまでの時間も短くなる。
Concur(2014年にSAPが買収)やKDSの旅費および経費管理ツールは、事後に収集した経費の把握と分析ができるだけでなく、旅費全体の管理や予約手続きにも利用できる。
そうしたサービスが場当たり的だったりアウトソーシングされたりしていたときは、従業員が旅費や経費のガイドラインとポリシーに確実に従ってくれるとは限らなかった。しかしセルフサービスツールが手元で使えるようになれば、ポリシーが明確になり徹底できるようになる。
ただし、全ての経費やコストがそれほど直接的に処理できるわけではない。
通信などのリソースは私物端末の業務利用(BYOD)や通信料、割増のWi-Fi料金といった形で相当の個人的負担を伴うことから、そうした面も管理する必要がある。通信経費管理は、事後に請求書を確認して従業員の私的利用を差し引くだけでは到底済まない。これについては、Tangoe、Anatole、MDSLといったプロバイダーが高度な経費管理ツールを提供している。
時間も重要なリソースだ。ゼロ・アワー契約(訳注)を含めた雇用モデルの変化で、時間管理や出勤記録は多くの業種で従業員にとっても雇用主にとっても役に立つものになった。この分野ではKronosやChronologic、WorkForce Softwareなどのツールが、モバイルおよびWebベースのアクセスを実現している。
訳注:英国の雇用形態の1つ。従業員が「好きな時間に働くことができる」制度だが、雇用者側が不要と判断すれば働きたくても働くことができず、批判も多い。
CRM
社内の管理負担に加えて、ほとんどの従業員が共有しているのが顧客との関係を支援するための情報だ。これはもはや個々の営業チームやカスタマーサービス担当者に限られた問題ではなくなり、顧客関係維持の責任は全従業員に及ぶものになった。大量の顧客を抱える組織であれば、セルフサービスアクセスを通じてSage、ServiceNow、Salesforce.comといったプロバイダーのアプリケーションを使うメリットがある。特にSalesforce.comは、同社独自の機能や「Salesforce1」のパートナーアプリケーションを通じて幅広いエンタープライズアプリケーションを網羅している。
クラウドベースのセルフサービスアプリケーションは、導入のしやすさでIT部門の負担を軽減し、ユーザーは必要なときにサービスにアクセスできる。レガシーアプリケーションが従業員によるオンデマンドアクセスに対応していなくても、サービスインタフェースなどを通じて他のアプリケーションと組み合わせることもできる。この種の分散型アプリケーションアクセスは、長年の定評がある仮想デスクトッププロバイダーのCitrix SystemsやMicrosoft、VMwareの製品が典型的だ。最近のオンデマンドワークスペースプロバイダーではCentric Software、Workspot、RES Softwareなどが挙げられる。
メリット、課題、実践
従業員が自分のことを自分でできるようにするシステムの導入は、管理負担を当事者個人に移すという点において、そして自分に関わるデータの詳細を本人にチェックさせるという点において、組織にとって多くのメリットがある。だが、利点は組織の効率性や精度の向上にとどまらない。
個人に直接アクセスさせることで、いつ、どのように利用するかを含めたプロセスを、従業員がコントロールできるようになる。ただしプロセスの合理化ではなく、不必要あるいは面倒な負担と見なされると緊張が生じる。
では、組織はどのようにして従業員向けのセルフサービスツールを導入すればよいのか。
- 可能であれば、導入済みの他社を探して話を聞く。定評のあるサプライヤーは多いので、その顧客と話をする
- 最初から従業員の支持を取り付ける。もし何らかの業務負担を負うことが予想される場合、たとえコントロールが強化できるとしても、その理由を知り、自分たちにとってどのようなメリットがあるのかを従業員に理解させる必要がある
- 特定のアプリケーションだけでなく、システム全体の理解を徹底させるための研修。ほとんどのシステムは使いやすさを念頭にうまく設計されている。だが実装方法や個々の企業のプロセスとの組み合わせ方はさまざまだ。プロセス全体の仕組みについての理解を従業員に徹底させる必要がある
- ポイント製品ではなく、統合を拡張できるシステムに投資する。たとえ従業員セルフサービスの1つの要素から着手したとしても、ほとんどの企業はそれを増やしていくための戦略が必要になる。個別にアクセスする必要が生じるのではなく、全サービスを提供する単一の従業員ポータルに、全ての要素を統合できるよう気を配る
- 「Web」か「モバイル」かで考えず、「オムニチャネル」として考える。多くのセルフサービスタスクは1回のセッションでは完了せず、各段階で場所や端末が異なることもある。どの段階においても最も適切な端末に切り替えられるよう、従業員にとって使いやすいシステムを選ばなければならない
- カスタマーエクスペリエンス管理と従業員の間の重複を考慮する。多くのセルフサービスオプションが、従業員と顧客との境を曖昧にしているのには、それなりの訳がある。組織の外縁は曖昧でも、従業員もコンシューマーも同様に、コンシューマー級のアクセスのしやすさと使いやすさを期待する。重要なのはエクスペリエンスだ
管理機能のコントロールとアクセスは、人事、会計、さらにはITといった個別の社内サービスから、急速に従業員の手やデスクトップPC、モバイル端末へとシフトしつつある。これは組織の効率性を高め、個人の力にもなる。ただしそれはうまくやった場合に限られる。この道を採る組織はスムーズな移行を心掛け、たとえ異なるシステム間であっても一貫性を保ち、従業員がそれをどう活用するかを十分に理解した上で、そのコントロールと柔軟性の恩恵を受けられるよう配慮しなければならない。
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