「kintone hive vol.3」レポート【前編】
東急電鉄がシェアオフィス事業でkintone活用、増加する“業務部門主導IT”とは?(2/2 ページ)
塩漬けのまま更新を続けていた業務システムをkintoneで一新
業務部門での活用事例セッションは東京急行電鉄に続いて、同じく公共交通関連の企業から担当者がステージに上がった。ANA成田エアポートサービス 精算管理部の長谷川 純子氏だ。ANA成田エアポートサービスは、新東京空港事業、ANAエアサービス東京、ANAエンジニアリング成田が合併して2013年に誕生した企業で、全日本空輸(ANA)便を中心として成田空港に就航する数多くの航空会社の空港ハンドリング業務を請け負っている。
航空機の誘導やカウンターでの接客業務など、航空機運航に必要な陸上業務を多くの航空会社から請け負っている。「コストの9割が人件費という事業なので、要員の適切な配置や管理を重要視しています」(長谷川氏)
その管理を任されているのが、現在長谷川氏が所属している精算管理部だ。長谷川氏が旅客部門から異動してきた当初は「NTON(ニュートン)」の愛称で呼ばれる旧生産管理システムが稼働しており、実績管理や勤務管理、請求帳票作成などの業務に使われていた。
「このシステムがないと請求業務ができないという重要なシステムなのですが、お世辞にも使い勝手がいいとはいえませんでした」と長谷川氏は当時を振り返る。「システムに助けられているというよりも、実際の業務との乖離を人間が埋めてシステムを助けながら仕事をしているような状況。特に請求処理を行う月初はNTONに縛られた各種業務で忙殺されていました」(同氏)
そんなNTONの保守期限切れを秋に控えた2015年4月。長谷川氏は、決して使いやすいとはいえない現状のシステムの契約を更新して、これ以上コストを掛けることに疑問を抱いたという。
「自分なりに調べて、システムを新たに開発するには多大なお金が掛かることは分かっていました。けれど、NTONにこれ以上コストを掛けるのも得策とは思えませんでした」と語る長谷川氏は、思い切って新システムに移行することを進言したという。
要件定義1カ月、開発2カ月はkintoneならではのスピード感
長谷川氏らがまず手を付けたのは、新システムの構築方針を決めることだ。旧システム時代は複数のシステムに情報が分散しており、なおかつ各システムで情報を重複して持っていたので、これらを統合することにした。これによって現場スタッフも同じ情報をあちこちのシステムに入力しなくてよくなる。
また旧システムはアクセスできる端末が限られていたが、新システムは社内の通常PCから利用できるようにしたいと考えた。NTONに入力しなければならないデータがあり、端末が空くのを待つことが珍しくなかったためだ。請求業務の内容が毎年1回程度の頻度で変わっていくので、運用開始後のメンテナンスでそれらの項目を容易に変更できることも求められた。2015年5月は、これらの方針決めに費やした。
こうした基本方針よりも「さらに大切だった」と長谷川氏が語るのが、運用保守が安価かつ簡易であり、しかも旧システムの保守期限が切れる2015年9月までに運用開始するという条件だった。このような厳しい条件に対して、開発を委託している内田洋行から提案されたのがkintoneだったという。
長谷川氏はkintoneの無料試用期間を使って機能を確認し、その汎用(はんよう)性とメンテナンス性を実感して導入を決めたという。そのころには既に2015年6月になっていた。そこから実際にkintoneで実現すべき機能要件の策定に進んだが、これはかなり難航したようだ。
長谷川氏は本当に必要だと考える機能をピックアップし、旧システムが持つ20機能のうち5機能に絞り込んで移行することにした。それに対して、機能整理を不安視する声が多数挙がったという。また古い機能については必要性を理解している人が既におらず、「必要性の確認や説得に苦労しました」と長谷川氏は語る。
経営層からも、新たにシステム開発にコストを投じることや、システム資産を増やすことに対する反発があったという。だがシステムが使いにくいことで人件費が無駄に掛かっている現状や、クラウドなので資産は増えないことを訴えて理解を得たとのことだ。
実際の開発にかけた期間は、2015年7月から8月にかけての2カ月間。その後、旧システムとの併用期間を経て、2015年10月にはNTONからkintoneへのシステム移行に成功した。そして今回のシステム移行は、社内の多くのスタッフに好影響をもたらした。
ライン担当者は通常のPCから入力作業ができるようになったこと、業務日誌や作業内容の記録など重複して複数のシステムに入力していた作業を一本化したことなどから、残業を相当数削減できた。入力画面も見やすいと好評だそうだ。
「他にも入力したい項目があるなど運用開始後に現場から挙がってくる声にもすぐに対応できるのがkintoneのいいところ。運用する方も楽で、現場からの評判もいいですね」と長谷川氏は感想を述べる。
これまでは複数のシステムに散在していたデータをkintoneに統合して、生産管理部の業務も効率的になった。「現場の肌感覚だが、20%くらいは業務量が削減されているのではないか」と長谷川氏は言う。それでいて開発コストは当初の更新予算より40%も低く、ランニングコストは85%も削減されているという。
「kintoneは新しい価値を創造していけるサービスだと感じています。今回は生産管理部の業務に特化した事例を紹介しましたが、既に他部門でも使いたいという話が出ています。社内だけではなく委託先にも展開できれば業務の在り方がかなり変わっていくでしょう」と締めくくった。
後編では、情報システム部門だからできるkintoneの広く深い活用方法をディー・エヌ・エー(DeNA)、京王電鉄バスに学ぶ。
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「kintone hive vol.3」レポート
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