「kintone hive vol.3」レポート【後編】
情シスだからできた、kintoneの広く深い活用方法をDeNA、京王電鉄バスに学ぶ(2/2 ページ)
kintone導入で業務効率化を目指す文化を根付かせた京王電鉄バス
導入事例セッションの最後に登壇したのは、京王電鉄バスのシステム業務推進担当 課長の虻川勝彦氏。京王電鉄バスは新宿や渋谷から高尾方面までをカバーする路線バス、新宿を起点に全国主要都市を結ぶ長距離高速バスなどを運営する企業だ。同社も社内でかなりの数のkintoneアプリを開発しているが、最初に開発した際には苦労があったという。
虻川氏が京王電鉄バスに入社した当時は、IBMのオフコン「AS/400」などのレガシーシステムが多数稼働している状況だった。各システムは個別最適で構築されており、データ連係もできていない状況だった。「それぞれのシステムから手作業でデータを書き出して『Microsoft Excel』で集計するような非効率な業務もかなりの数残っていました」と話す虻川氏。「社内には、システムにお金を掛けるより苦労してでも手作業を尊ぶ風潮もありました」と当時を振り返る。
しかし業務効率の低下は人件費として跳ね返ってくる上、手作業によるデータ集計はミスも誘発しやすい。生産性低下を防ぐためにはシステム化による効率化が必須と分かってはいても、予算もなく、手を打ちかねていた虻川氏の目にとまったのがkintoneの宣伝ポスターだった。
「情シスだからできる改革を。」
このキャッチコピーに「キャッチされてしまった」と語る虻川氏は、kintoneについて調べ始める。汎用(はんよう)性があり、システム部門が自力で必要な社内システムを構築できるkintoneにポテンシャルの高さを感じたそうだ。タイミングよく遺失物管理システム構築の予算承認が下りたこともあり、同システムをkintoneで構築して導入することになった。
公共交通機関における遺失物は事業者側で整理した上で警察に届け出なくてはならず、「その整理のための仕組み作りに予算がついていました」(虻川氏)。早速30日間の無料試用期間を使ってkintoneを使った遺失物管理システムを構築してみたところ、業務プロセスの再検討を含めても2週間で社内プレゼンテーションにこぎつけたという。
社内のプレゼンでは開発スピードだけではなく、社内で構築することによるコスト効果を強くアピールした。「1ユーザー当たり1500円では人数が増えた分だけコストが増えるのでは」と反論もあったそうだが、「100アプリ作れば1ユーザー当たり15円になるので、社内に浸透すればするほどコスト効果が高まります」と虻川氏は主張し、経営層を説得した。
実際、最初に作った遺失物管理アプリはエンドユーザーが限られていたので、少ないライセンス数で小規模にkintoneを導入した。アプリ数が少ない間は少ないアカウント数で利用している方がコスト効果をアピールしやすい。その後アプリが増え、対象エンドユーザーが増えるに従い予算を確保してアカウント数を増やし、利用規模に応じた段階的な投資を実現してきた。
ユーザーに使ってもらうための工夫を念頭に社内への浸透に成功
kintoneでアプリを開発し、提供しても社内で使ってもらえなくては効果は生まれない。虻川氏はそれを理解した上で、エンドユーザーへのアピールポイントを初めから設定してあった。「『一度入力してもらったデータは二度と入力させない』『社内で利用する主なデータはkintoneを参照すれば常に最新の状態で存在している』『システムニーズには迅速に対応する』という3点を心掛けました」と話す。
アプリやデータのガイドラインを守るため、kintoneアプリ制作の権限を持たせるのはシステム部門のメンバーに限定した。また同じデータを二度入力しなくて済むように、システム全体でのデータ設計も行った。必要なシステムからデータを連係していったが、この作業は進めば進むほど困難の度合いを増していった。
そこで既存システムとの連係には、アプレッソのデータ連係(ETL)ツール「DataSpider」を使うことにした。データ形式の異なるシステム同士をつないでくれるので、作業の省力化とデータ鮮度の確保の2つの目的を達成できる。
その他にもkintoneアプリ開発依頼や変更依頼を管理するアプリをkintoneで開発し、開発状況を可視化するなど工夫を重ね、現在では単独のアプリであれば30分程度、kintone内連係が必要な場合は60分程度、外部システムとの連係を含む場合でも1週間程度で新しいアプリをリリースできるようになった。
アプリ開発が迅速になったことで辛くなったこともある。その1つが、マニュアル作成がアプリ開発に追い付かないことだ。開発スピードはそれくらい高まっているのだ。
「今後はインターネットに接続したセンサーで車両情報をリアルタイムに収集して故障を検知するなど、前向きな効果を生むアプリも作っていきたいです」と虻川氏は意気込みを語る。「『この業務はkintoneで自動化できるんじゃないか』と社内で提案されるほどkintoneでの業務効率化も浸透したので、不可能ではないと考えています。後は開発の道筋を付け、若者に継いで行くのが今後の目標です」(同氏)
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