紙の伝票が当たり前の社内をIT化
おしぼり業界の革命児、藤波タオルサービスがkintoneによる情報共有を根付かせるまで(2/2 ページ)
社外、海外とのコミュニケーションにも活用
「使えなければすぐにやめればいい」と考えて始めたkintone活用だったが、現在は当初の2倍以上にまで契約ユーザー数を拡大している。今では社外のパートナーにもアカウントを発行している。
コンサルタントやITコーディネーター、広報パートナーなど「社員ではないけれど社内のことをよく知っておいてほしい方にもアカウントを発行して参加してもらっています」と藤波氏は説明する。「週に2日とか3日しか立ち寄らない方でも社内の動向が見えやすくなり、また社外からの視点で意見をもらえるようになったことで、より強固なパートナーシップを組めるようになりました」(同氏)
同じ場所にいられる時間が短い人との距離感を縮めるのは、ITの得意分野の1つ。藤波氏は海外拠点とのコミュニケーションにもkintoneを使っている。同じように社内にいる時間が少ない配送スタッフともkintoneで結びたいと考えているが、レンタルおしぼりの配送業務は激務だ。帰社後に日報を書いてもらう取り組みはしているものの、それさえも負担にならないようごく短文でいいと指導している。「kintoneを使う習慣は身に付けてもらいたいけれど、主業務以外に負担を増やすことは極力したくない」という。
情報共有と主業務とのバランスを考えながら、少しずつkintoneを浸透させていけばいいというのが藤波氏の考えだ。そのバランスが良かったのか、営業システムを管理するプロモーション課 主任の唐沢志乃氏は、ここにきて「社内に情報共有の文化が定着してきました」と語る。失注理由など、これまではあまり共有されてこなかったネガティブな情報を書き込む人も増えてきたという。「失注理由は業務や商品の改善につながる貴重な情報ですから、これは大きな変化だと思います。情報が蓄積されて可視化されることの効果に、だんだん皆が気付いてきたようです」(唐沢氏)
唐沢氏は営業会議で現場の声を聞きながら、その場でkintoneのアプリケーションを手直しして要望に応えている。今は要望された機能が一通り実装され、次はここに蓄積された情報をどのようにして活用していくか現場で知恵を絞っているところだ。
「要望があればすぐにアプリケーション化できるので、何にでもトライしやすくなりました。毎回何百万円も掛かる開発では、そんなことはしていられないでしょう」(瀬尾氏)。一方で、作ったものの使わなくなったアプリケーションが増えている点は課題だ。
本業でもIT化でも業界ナンバーワンを目指す
藤波氏が当初目指した情報共有は確実に浸透し、社内の風通しも良くなった。社内の様子や事業の現状を把握するのが難しかった社長就任当時とは大きく変わり、今はむしろ情報が溢れている。むしろ、その中から有益なものを拾い上げてビジネス拡大に生かしていくことに専念する段階にきているという。海外展開などのスピードが高まっているのも活用が進んだ証左だといえるだろう。
管理会計の仕組みも導入し、「それらと合わせて見たいものがある程度すぐに見られるようになりました」(藤波氏)。次はkintoneのインタフェースの良さを生かして、会計システムと連係した経営ダッシュボードの実現も検討しているという。
おしぼりは日本のおもてなし文化を体現する商品であり、これをグローバルに展開していく企業の社員だという自覚と誇りを持ってもらいたい――藤波氏はそのためにもkintoneが役立つと考えている。「海外の営業会議情報が、気軽に投稿されてフラットに共有される。そのことで『グローバルな会社にいるんだ』という感覚が自然に養われるのです」と同氏は語る。
国内外を問わず、自社の社員とITを使ってコミュニケーションを取ることで、互いの距離感が埋まっていく。「フェースツーフェースでの会話を超えるツールはありませんが、ITは物理的な距離をぐっと縮めることができます。いわば、良いメンバー同士を結び付ける接着剤がkintoneなのです」(藤波氏)
kintone導入によって社内の雰囲気と文化を変えて来た藤波氏だが、ここまでの成果で満足しているわけではない。おしぼりを中心とした事業はもちろんのこと、社内のIT化においても業界ナンバーワンを目指したいと力強く語る。売り上げ成長やユーザー数増加、IT活用の成熟度に従って、kintoneの活用の仕方が変わるかもしれない。一部をSalesforceに戻す可能性もゼロではないだろう。今後も同社のIT活用に注目していきたい。
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