連載「最新のOpen Compute Projectで何が変わった」第4回
Open Compute Projectが目指した「データセンター電力効率99%超」、その成否は?(3/3 ページ)
「外気を取り込んでデータセンター全体を冷却」まで細かく定義
この第1世代の電源構成はOCPが2012年9月に公開した「Facebook V1」仕様に準拠する。Facebook V1には「Open Rack Hardware Specification」「Power Shelf Specification」「AC/DC PDU assembly CAD」などの個別規格がある。続いてOCPは2015年に「Open Rack V2」「Facebook V2」を公開した。こちらも構成要素ごとに規格を用意している。
2015年に登場した規格ではPDU(Power Distribution Unit)という電源タップについて、AC230ボルト/AC277ボルトと併せてDC48ボルトのPDUも定義して、データセンター内をDC48ボルトだけで供給することも可能にした。更にリチウムイオンバッテリーを搭載した3600ワットのバッテリーユニットの仕様「3600W BBU」(Battery Backup Unit)も定め、UPSの代わりに利用できるようになった。このバッテリーユニットはラック内に格納できるため、大型のUPSが必要なくなり、効率を下げてしまう元凶だったAC/DC変換、DC/AC変換の変換ロスを省くことが可能になった。
冷却に関しても、外気を利用する方式を標準化した。外気を利用する冷却にはさまざまは方法があるが、Facebookが定めた方式では、外部から取り入れた空気を冷却する手段として水を使い(Misting System:水をミスト状にしたカーテンを作り、ここに外気を通すことで温度を下げる)、冷却した空気をデータセンター内に供給する。
データセンター内を冷却して熱くなった空気の大半は、そのまま外部に排出するが、一部は還流する。これは外気温の変化に対する調整をするための仕組みだ。データセンターの温度は低ければいいということではない。適切な温度や湿度の範囲が決まっている。ここから外れると故障率が上がる。外気温が極端に低い場合は、排気から還流に回す量を増やすことで取り込んだ外気の温度を適温まで引き上げ、逆に外気温が高い場合は還流する量を絞ることで外気の温度を下げる。冷却用のファンも小径ファンを高速回転するのは効率が悪いので、大径ファンをゆっくり回して、低い回転数(消費電力が少ない)でも送風できる外気の量を維持している。細かい所では、照明は全て発光ダイオード(LED)を利用するといった仕様も定めている。
Facebookが2011年に開設したデータセンターではFacebook V1の仕様に準拠して機器を導入している。ここは当初のPUEが1.08、後にこれを1.07まで引き下げ、Facebookはこのデータセンターを積極的に公開した。ある意味プロモーションともいえるこのアピールが、IT業界でOCPの仕様を採用する機運を高めたのは間違いない。Facebookはほぼ同じスペックのデータセンターを米国ノースカロライナ州に開設済みだ。
OCPが2016年3月に開催した年次会合「OCP U.S.Summit 2016」では、GoogleがOCPへの参加を表明した。Googleが考案したDC48ボルトラックのデザインをOCPに寄贈することも発表している。ただし、この仕様は既存のOCPのラックデザインと互換性がないため、OCPは新しい規格として公開する見込みだ。
OCPが公開した電源やデータセンターの仕様を利用すれば誰でもPUEが1.1以下の構成を簡単に作れるというほど話は簡単ではない。それでもデータセンター事業者には大きな影響を与えている。新規データセンターの開設で外気による冷却を導入するのがここ数年来のトレンドになっていることはその典型的な例だ。DC48ボルトの普及はゆっくりではあるが、対応機器やコンポーネントは次第に増えてきており、今後浸透していくと考えられる。
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