クラウド時代にネットワークを再評価する
なぜシスコは中堅・中小企業向けブランド「Cisco Start」を立ち上げたのか?(2/2 ページ)
売り上げではなく製品スキルによってパートナーを評価する
シスコのパートナー制度には認定制度が設けられており、一定の条件をクリアするごとに「セレクト」「プレミア」「ゴールド」と認定レベルが上がっていく。上位になるほどシスコから手厚い支援が受けられるようになっている。例えば、上位のパートナーになれば、より詳細な技術情報にアクセスできたり、シスコと共同で新規ビジネスを開拓できたり、あるいはマーケティング活動の支援が受けられたりする、といった具合だ。
ただし、パートナー認定の昇格基準では、製品の売上高だけでなく、製品/サービスに関するスキルレベルも条件として重視している。特定の製品領域の深いスキルや経験を持つパートナーの価値を高く評価して、製品価格のディスカウント率が大きくなるような優遇制度もあるという。例えば「自社のビジネスにIoTを組み込む」といった顧客の課題があるとする。その課題解決に貢献するために、自社の技術やノウハウを駆使し、シスコ製品の価値を高めるような導入事例を実現したパートナーを評価する仕組みだ。
現時点で登録済みのシスコのパートナーは、ネットワーク機器やセキュリティ製品の分野に強みを持つ企業が大半を占めているというが、高橋氏は「今後は他の製品や業務領域で積極的にパートナーを発掘していきたい」と語る。例えばサーバ分野では、シスコはこれまで主にデータセンター業者やサービスプロバイダー企業に向けて、サーバ製品「Cisco UCS」を提供してきたが、今後はこれをベースに構成されるハイパーコンバージドインフラストラクチャ「Cisco HyperFlex Systems」を中堅・中小企業向けに積極的に提案していく構えだ。エントリーモデルは既に、Cisco Startブランドの一環として提供している。
ネットワークと同様に、コラボレーションツールも“インフラ”だ
中堅・中小企業向けの低価格なビデオ会議システムは各社からさまざまな製品/サービスが登場しているが、提案や導入をためらうパートナーは少なくない。なぜなら、会議室の規模に合わせた音響設備の選定、ネットワークの帯域設計など、導入や運用には独自のノウハウが必要だからだ。
Cisco Startシリーズには、ビデオ会議やチャットを中心としたコラボレーションツールもある。2016年10月には、ビデオ会議システムのディストリビューターであるプリンストンと提携し、パートナーを支援する体制を強化した。
シスコは長年、ネットワーク機器を主力製品に据えていたからこそ、Cisco Startシリーズのラインアップにコラボレーションツールが加わっていることを不思議に感じる向きもあるかもしれない。その意図を、高橋氏は次のように語る。「近い将来、IoTが広く普及する時代がやってくる。IoTの価値は、人と人との自由なコミュニケーションの中から生まれてくるだろう。そのような時代には、ネットワークがインフラであるように、コミュニケーションプラットフォームもインフラと呼べるほど重要なツールになっているはずだ。だからこそ、コラボレーションツールをラインアップに用意して、あらゆるネットワークの安定稼働を支援することがシスコの大きな強みになると自負している」
「中堅・中小企業」といっても、その規模感はさまざまだ。例えば30人程度しかいない地方の支店・営業所といった環境であれば、個人事業主向けのネットワーク機器で十分と考えるIT担当者もいるだろう。しかし同じ状況でも、「リモート拠点から本社サーバの業務アプリケーションへアクセスしようとするとネットワークが遅い」「本社が導入したクラウドサービスにアクセスしようとするとつながりにくい」といった課題が出る可能性は否定できない。中堅・中小企業のニーズと課題はかくも多種多様で、ベンダー側の認識と、ユーザー企業側のニーズには一定のギャップがあるものだ。それが大きくなり過ぎないようにパートナーと協業し、顧客の声に耳を傾けることが重要だろう。
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