直販営業のノウハウ生かしリセラーを支援
直販ビジネスモデルからの大転換を果たした、デルのパートナー事業戦略(1/2 ページ)
2016年、デルは直接販売中心からパートナー販売中心へビジネスモデルを変えた。パートナー企業にとってはどのようなインパクトをもたらすのだろうか。同社マーケティング本部長の清水 博氏に話を聞いた。
「直接販売中心からパートナー販売中心への歴史的なビジネスモデル転換」──2016年、デルはパートナービジネスという大海原へいよいよ本格的に漕ぎ出す。かつて「デルモデル」という独自のPC直販モデルで一世を風靡(ふうび)し、またたく間に大成長を果たした同社。ここにきて従来の直販モデル中心のビジネスモデルを大きく転換し、パートナーとの協業に大きく重心をシフトした。
この大転換にはどのような意図や背景があり、そしてIT商材を取り扱うディストリビューターやリセラーにとってどのようなインパクトをもたらすのだろうか。同社の日本におけるパートナービジネス戦略について、マーケティング本部長の清水 博氏に話を聞いた。
注
「ディストリビューター」「リセラー」という言葉の厳密な定義付けはないが、本稿では次のように位置付けている。
- ディストリビューター:幅広いベンダーから仕入れたIT商材を自社在庫として保有し、小売業者やユーザー企業に販売する卸業者。大規模な拡販、流通の役割に軸足を置く事業者。
- リセラー: IT商材をベンダー、ディストリビューターなどから仕入れ、ユーザー企業に販売する、大規模な流通経路は持たない事業者。仕入れた商材をそのまま販売するのではなく、他のシステムと組み合わせたり機能を追加したりして付加価値を高めて販売するリセラーはVAR(付加価値再販業者)という。
「ハイブリッド時代」において価値が高まるパートナービジネス
デルを「直販の雄」から「パートナービジネス中心」という新たな路線へと導いた背景とは、一体何だったのか。清水氏はその大きな要因の1つとして、近年のIT業界を取り巻く環境、とりわけ「ハイブリッド化」「複合化」が進んでいる状況を挙げる。
「今日のIT業界は、インフラ技術がオンプレミスからクラウドへと移行する転換期にあり、オンプレミスを前提とした技術とクラウド技術が混在する『ハイブリッド時代』と位置付けられる」と清水氏は指摘する。こうした時代には古い技術と新しい技術が並び立って混在するので、双方をうまく組み合わせて活用することが重要だが、両方の技術に精通するのは容易ではない。そんなときこそ、「新旧技術双方のメリットをうまく組み合わせて提案できるパートナーの価値が求められる」というのが、デルの考えだ。
かつて、メインフレーム中心からオープン系システムへの移行期においても、双方の技術に精通したパートナー企業が一気に成長を遂げた。今日のオンプレミスとクラウドのハイブリッド時代においても、パートナー企業が自社の価値を大いに高めて成長できるチャンスが広がっていると清水氏は言う。
こうしたパートナーのビジネスチャンスを後押ししながら、自社のビジネスも一緒に成長させていく。これが、デルをパートナービジネスへの傾注に導いた最も大きな理由の1つだという。ちなみに同氏によれば、デルの製品はハイブリッド時代特有のユーザーニーズと極めて親和性が高く、デル製品を扱うリセラーにとっても「提案しやすい」「売りやすい」商材だという。その根拠として同氏が示すのが、標準技術へのこだわりだ。
「クライアントPCやサーバをはじめとするデルのハードウェアには、他ベンダー製品に見られるような独自の管理ソフトウェアやミドルウェアなどは搭載していない。その代わり、標準技術にこだわり、その品質を徹底的に磨き上げている」と清水氏は説明する。オンプレミスからプライベートクラウド、パブリッククラウドサービスなど、さまざまな環境にまたがって構築されるハイブリッド時代のITインフラにおいては、このように「標準技術だけで構成されたプレーンな製品の方が検証しやすく、使い勝手に優れている」というわけだ。
デルは製品の品質についても、強い自信を持っている。直販モデルでは、製品トラブルに関するユーザー企業からのクレームや問い合わせは、リセラーやディストリビューターを介さずベンダーに直接寄せられる。従って、品質に対しては否応なく敏感にならざるを得ない。こうして長年に渡る直販ビジネスで鍛え上げられた「品質へのこだわり」が、パートナービジネスにおいてもデルの大きな強みになっているという。実際にパートナーから、「デル製品はトラブルが少ないので、積極的に選びたい」との声が寄せられることも多いと清水氏は述べる。
デルはクライアントPC、サーバ、ストレージ、ネットワーク機器といったハードウェアから各種ソフトウェアまで、幅広い製品ラインアップをそろえている。そのため、「パートナーは、ある製品をお客さまに提案した後、関連する別の製品や上位製品の提案がしやすい」と清水氏は語る。近年は、PC事業を筆頭に利益率の低い事業部門を手放すベンダーが多い中、株式を非公開化したデルは「短期的な利益だけでなく、中長期的な観点に立って、多種多様な製品をワンストップで提供することがユーザーやパートナーにもたらすメリットを重視し、M&Aにも引き続き積極的に取り組んでいる」という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー