直販営業のノウハウ生かしリセラーを支援
直販ビジネスモデルからの大転換を果たした、デルのパートナー事業戦略(2/2 ページ)
2社のディストリビューターと新たなパートナー認定モデル
では、デルは具体的にどのようなパートナービジネスモデルを構築しようとしているのか。まず最も大きな変化は、これまでは設けていなかったディストリビューター制度を取り入れたことだ。デルは2016年1月にダイワボウ情報システム(以下、DIS)とソフトバンク コマース&サービス(以下、ソフトバンクC&S)の2社とディストリビューター契約を締結した。以降は一部の販売チャネルを除き、リセラーによるデル製品の取り扱いは、基本的にこの2社を介することとなった。
「これまでの直販中心モデルでは、どうしても物流能力に限界があった。DISとソフトバンクC&Sの2社と組むことで、両社の全国を網羅した流通チャネルにデル製品を載せることができる」(清水氏)
ディストリビューターが間に入ることになっても、これまでデル製品を扱ってきたリセラーに対する卸値が高くなるようなことは一切ないという。それどころか、リセラーに対する支援は大幅に強化される。
まず、デルのリセラーは「Premierパートナー」「Preferredパートナー」「Registeredパートナー」の3つの認定レベルにカテゴライズされる。大まかに説明すると、トレーニングコース受講や一定数の担当エンジニアの確保、収益目標の達成といった要件を満たすごとにRegistered→Preferred→Premierの順で認定レベルが上がっていく仕組みだ。リセラーが得意とする製品分野に対する支援策を手厚くしたり、デルの専門チームをアサインしたりと、各リセラーに適した支援策を提供するという。
| パートナー区分 | プログラムの内容 |
|---|---|
| Premierパートナー | デルの担当営業チームによる営業支援。マーケティング施策、共同ファンドによる営業支援。デモ用の評価機器(無償)の優先利用が可能。 |
| Preferredパートナー | デルの担当営業による営業支援。マーケティング施策による営業支援。デモ用の評価機器(無償)の利用が可能。 |
| Registeredパートナー | パートナー向けポータルサイトへのアクセスが可能。オンライントレーニングが可能。 |
デルは「これまでは規模の大小を問わず、全てのリセラーに対して一律のサポートを実施していた」と清水氏は説明する。今後は全体的に支援を増強するとともに、「新たなプログラムの枠組みの中で各リセラーに最適化したきめ細かなサポートを提供していく」と意気込む。
具体的には、製品に関する教育トレーニングの提供や、製品を提案する際に有用な技術検証資料の提供などを実施する構えだ。「デルはこれまで、他ベンダーより多くの技術資料を公開してきたという自負がある。ただし、それらがパートナーの目に触れる機会が少なかったのは事実だ」と清水氏は明かす。今後は、より多くのパートナーがすぐに情報を手に取れるよう、パートナー向けポータルサイトの準備を進めていくという。
清水氏は「『デルの中にいるエンジニアの顔が見えない』という声も多くのパートナーから寄せられていた」と語る。そこで、2016年2月から開始したパートナー向けのトレーニングプログラムでは、デルのエンジニアとの交流の機会を増やすよう工夫していく考えだ。
デルとパートナーの共同セールスチームで“顧客志向”を追求する
一般的に直販とパートナービジネスの両方を行っているベンダーは、同じ顧客に自社の営業とパートナーの営業が同時に売り込みをかけ、バッティングしてしまうことが起こり得る。デルはこれまで直販の営業力で知られてきたベンダーだ。しかし、今回のビジネスモデルの転換により、デルが直接担当している顧客がパートナー経由の商流であってもデルの担当営業の成果になった。つまり、商流により成果を区別することがないのだという。
デルの顧客担当者自らが製品を販売するケースと、パートナー経由で販売するケースのどちらもデル側担当者の評価に反映されるよう、社内制度をダブルカウント型に変えたことが、その骨子だ。「デルの担当者とパートナーが同じ顧客に対して商談をするときは、共同セールスチームとして考える。互いに協力しながら商談を進めていくことで、真の互恵関係を築くことができる」と清水氏は説明する。
例えば、リセラー経由でもデルの営業担当者が顧客に訪問することもある。デルの拠点数はまださほど多くないので、きめ細かく地域密着した応対が必要な場面では、デルの発掘した商談でもリセラーが対応するケースが少なくない。こうした体制の下では、自ずとデルの担当者もリセラーに対する協力を惜しまないようになる。リセラーにとっては、これまでデルが長年に渡り独自の直販チャネルを通じて積み上げてきたノウハウを、そのまま引き継いで自社のビジネスに生かすことができるのだ。こうして互いの強みを生かしながら協力し合うことで、成約率を高めることができるという。
デルはテレセールス(電話によるセールス)にも長年取り組んでおり、全国の30万社にも及ぶ顧客の詳細なプロファイルを保有している。この情報をリセラーの提案活動に生かしたり、あるいはリセラーが得意とする製品やサービスと組み合わせてデルからテレセールスで提案したりすることもできる。「これは、今までにない新たなパートナービジネスの姿だと自負している」と清水氏は胸を張る。
ユーザー企業にとって最も価値のある環境を模索して提案することは、顧客の要望や環境を理解できるほど関係が密でないと難しい。直販ビジネスに長年取り組んできたデルは、パートナービジネスを主流としてきた他のベンダーと比べて、“顧客志向”の知見を豊富に蓄積してきたはずだ。デルはその知見をパートナーと共有してともに成長を目指そうとしている。この取り組みが実を結ぶかどうか、今後に注視したい。
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