基幹DBも含めて社内システムを全面仮想化へ
【事例】NTTデータがSIerの威信をかけて構築した先進クラウド基盤
NTTデータは2013年5月に足がけ4年に及ぶ長期プロジェクトを完了させ、社内システムを全面的にプライベートクラウド上に移行する。SIerらしく顧客に向けたソリューションモデルともなる効率的な基盤だ。
社内システムをプライベートクラウドへ移行する場合、稼働後の“変化対応”も念頭に置いて基盤を設計しなければならない。その参考にNTTデータの社内導入事例を紹介する。同社がEMCジャパンのセミナー(関連記事:【事例】日通のカルチャーを変えた、クラウドを支える仮想化共通基盤)で講演した内容に加えて、筆者が独自インタビューを行った。
周知の通り、NTTデータは国内最大手のシステムインテグレーターである。連結で従業員5万9000人、売上高1兆2500億円だ。その業務を支える社内システムは当然、規模が大きく、業務システムの数も100を超える。従来はサーバも大型UNIX機が中心だった。
その社内システムのインフラ刷新は2009年に始まった。2011年5月にクラウド環境「社内システム共通基盤」をカットオーバーし、既存システムを段階的に共通基盤へ乗せ換え、2013年5月のプロジェクト完了をもって社内システム全体をクラウド上で稼働させる。
ITマネジメント室 システム開発担当 課長の佐野祥一朗氏はプロジェクト開始前の状況をこう振り返る。「グループ経営に向けた戦略的IT投資を控え、サイロ型で開発してきた社内システムを整理し、運用コストを大幅に減らす必要があった。システム・運用の統合とオフショア化をテーマに掲げ、社内システム改革に乗り出した」
プライベートクラウド、仮想化共通基盤に関する事例
社内システムを整理してから統合
プロジェクトでは最初に、EMCジャパンと協業して社内システムを整理した。まず業務プロセスを定義して各業務システムの重要度を判定した上で、それぞれがどの業務プロセス・業務重要度に関わっているかを示すマップを作成。同じ業務プロセスを担うシステム同士は統合し、逆に1つで複数の業務プロセスを担うシステムは分散させた。
別途、業務重要度に応じたシステムの可用性レベルを4段階で規定し、各レベルでの標準インフラ構成を「VMware vSphere」による仮想環境を前提に設計。各業務システムに当てはめ、それぞれに合ったサービスレベルを適用した。例えば、可用性レベル最上位では、年間故障回数1回(稼働率99.9%)、Web/アプリケーションサーバ、データベース(DB)サーバのサービス継続保障などを規定し、vSphere HAによるホットスタンバイ型冗長構成を採用した。
ITマネジメント室 システム開発担当 主任の川戸祐介氏は「2009年の設計段階でDB層まで仮想化するのはかなりのチャレンジで、もしダメなら外出しすればよいと考えていた。だが、検証で予想外に使えることが分かり、システム全体の仮想化に踏み切った」と話す。
「Oracle PeopleSoft」で構築した人事給与システムで性能を検証した結果、vSphere環境は既存環境(UNIX機の物理環境)に比べて7~8倍の性能を発揮したという。これを受けてSAPやNTTデータのERPパッケージを含め、全システムをDB層まで仮想化することになった。
環境を複雑化させない構造を採用する
NTTデータの社内システム共通基盤は仮想マシンの数が数百という大規模なプライベートクラウド環境である。実際、どのような構造なのか。佐野氏は「仮想環境は統合を繰り返すにつれて複雑化しやすい。そうならないよう心掛けた」と話す。結果的に、EMC、VMware、Cisco Systemsの構成となった。
要となるブレードサーバシステムには「Cisco UCS(Unified Computing System)」を採用した。「最も評価したのはFCoE(FC over Ethernet)によるファブリック統合。ネットワークが簡素になるのは大きな魅力だった。また、ハードウェア設定などを記述した定義ファイルで素早くブレードを追加できるなど、管理機能もずば抜けていた」(川戸氏)
インフラ基底のストレージにはEMCのミッドレンジ製品「EMC Celerra」「EMC CLARiX」を選んだ。スループットが違うSATA/FCドライブ、SSDで“階層ストレージ”を実現できるのが大きな特徴である。アクセス頻度によってデータを配置する階層(ドライブ)を分けることで、仮想環境でボトルネックとなりやすいストレージ性能を確保しやすくなるわけだ(さらに、物理I/Oが多いオブジェクトはオンメモリ化することで対処している)。
ソフトウェアとしては、サーバOSをRed Hat LinuxとWindowsの2つに絞った。その狙いを川戸氏はこう説明する。「OSを標準化することでミドルウェアやアプリケーション開発も規定される。業務要件でどうしても商用製品を使わざるを得ない場合以外、OSからミドルウェアまでオープンソースを活用するという方針を徹底している」
そして統合運用管理には、NTTデータが開発して後にオープンソース化した「Hinemos」を使い、ジョブ管理と運用監視に用いる。基盤システム事業本部 システム方式技術ビジネスユニット 第二技術統括部 第二技術担当 課長代理の平岡義規氏はこう話す。「全体で9000件もの監視項目があり、プロジェクトが進むにつれて管理対象システムも増えていく。これに対応するためHinemosの管理サーバを階層構造にして、監視ログを出力するシステム側でフィルタリングしてから転送し、Hinemos側の負荷を減らしている」
“運用統合”でオフショア化率を高める
こうして社内システムのインフラを標準化・統合化した共通基盤は、2013年5月の全面稼働を待たずして既に大きな利益をNTTデータにもたらしている。
クラウド環境への移管に伴う基幹システム更改の初期費用は、物理サーバの低廉化・集約化、ソフトウェア費用の圧縮、サービスレベルの適正化などにより従来比で約60%減となった。5年間利用時のTCO(総所有コスト)も従来から半減する見通しだ(保守費用17%減、データセンター費用58%減)。連動してCO2排出量も8割も減る計算になる。
このTCO削減には、プロジェクトテーマとして掲げた運用統合とオフショア化も効いている。佐野氏は「業務システム横断でインフラが統合されたため、レイヤーごとに一元的にスペシャリストを配置すればよく、運用要員を減らせた。また、運用統合で運用業務を北京(のNTTデータチャイナ)に大幅に移管できたことが大きい」と説明する。
基盤の柔軟性をさらに高める改善も
2013年5月でプロジェクトが完了する社内システム共通基盤だが、今後に改善の余地も残している。その1つが仮想環境の使い勝手を制約するストレージだ。
川戸氏は「手動で行っている階層ストレージへのデータ振り分けはかなり煩雑。これを自動化するため、EMCストレージに備わるFAST(Fully Automated Storage Tiering)機能の活用を検討している」と話す。FAST機能は異種ドライブ間(SATA/FC/SSD)にまたがる論理ボリューム内のデータを1Gバイト単位でスライスして状態監視し、設定ポリシーに沿って階層を自動的に振り分けるものだ。実現すればI/O負荷の調整が容易になる。
ジョブ管理、運用監視に用いるHinemosの適用範囲を広げる可能性もある。「Hinemosは仮想環境対応の機能が拡充してきた。今はvSphere側で行っている仮想マシン管理などをHinemosに統合していくことも検討している」(平岡氏)
さらに、ストレージと並んで仮想環境で大きな制約となるのが物理ネットワークだ。HinemosにはOpenFlowベースのネットワーク仮想化機能があり、これも技術検証の対象となっている(関連記事:【技術解説】OpenFlow/SDNの自在な経路制御を実現する技術)。現状はvSphere標準やCisco Systems製の分散仮想スイッチによってネットワークを仮想化しているが、「ベンダーに依存せず、最適な技術を採用していく」(佐野氏)
こうした改善がなされるとNTTデータの社内システム共通基盤は、さらに柔軟性が高く、効率的なクラウド環境になる。これらのノウハウは自社のクラウド構築ソリューション「BizXaaS構築・運用サービス」(関連記事:“SIerとしてのクラウド”、NTTデータの「BizXaaS」)にも反映されるという。
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