アカウント管理の日々から解放
社外とも簡単データ共有、「東映アニメーション」のアニメ制作を下支えするツールとは(2/2 ページ)
管理作業の負担が大幅に軽減
現在東映アニメーションは、複数の工程にまたがって作業する人や社外との連携が必要な人を中心にBoxのアカウントを付与し、活用している。社外の関係者へのアカウント付与は、編集権限を持った各コンテンツの責任者の裁量に任せている。万が一コンテンツが外部に漏えいしても、ログが残っているため追跡しやすいという。
Boxのアクセス権限は、共同所有者や編集者、ビュワー、プレビュー、アップローダなど、7段階で分けられるようになっている。東映アニメーションは、どのスタッフにどのアクセス権を与えるかは責任者に任せている。「あえて責任者に権限を持たせることで、セキュリティ意識も高まりましたし、これまでのようにアカウント追加の依頼もほとんど来ることがなくなりました」と賀東氏は説明し、管理負荷が軽減されたことを強調する。
クラウドを利用していることからファイルサーバのシステムメンテナンスが不要になり、バックアップもテープからBoxへと移動したことでテープの寿命を懸念する必要がなくなった。Boxの導入で40テラバイトのNASが2台不要になったという。
容量無制限というBoxの特徴が、導入前には思い付かなかったニーズの発掘につながった。これまでは最終的な納品物のみをバックアップしていたのだが、「背景の素材といった美術データのみをアーカイブとして保管しておきたい、また特定の工程でのアーカイブも残しておきたい、といった希望が出てきたのです」と賀東氏は言う。
「これまではサーバ容量の上限を気にして遠慮していたデータのアーカイブに対する需要があったことに気付かされました。Boxのかなりの容量をアーカイブ用に利用しているため、他サービスやHDDを利用した際のコストを考えると怖くなります」(賀東氏)
課題は1ファイルに対するサイズの制限
大量のコンテンツを抱える東映アニメーションにとって最適なサービスのように思えるBoxだが、サービスへの不満はないのだろうか。
実はBoxには1ファイルの最大容量制限がある。賀東氏によると、東映アニメーションがテレビ作品を納品するときの容量は「1話当たり約32GB」で、Boxが提供しているいずれのプランでも最大容量の制限を大幅に超えている。「Boxにそのまま置くことができませんし、納品前の編集作業もできません」(同氏)。現在、東映アニメーションはそのような大容量ファイルの扱いについて検討中だという。
データの転送スピードについても「クラウドとの間でデータのやりとりするため、どうしてもアップロードに時間がかかってしまいます。われわれの扱うファイルは容量も大きいため、ファイルサーバのスピードと比較すると見劣りします」と賀東氏は話す。ただし「Boxはセキュリティの高さやコラボレーションツールとしての位置付けで価値を発揮しています。安全性や容量無制限であることを考えると、他社のサービスは考えられません」と言い切る。
さらに賀東氏は、ユーザー企業側からBoxのロードマップがはっきり見えない点が気になると語るが、「基本的にBoxは、われわれユーザー企業の声をしっかり聞いてくれます。意見を言えば機能を実装してくれることも多いので、今後も使い続けたいですね」と述べている。
ワークスタイルの多様化に沿ったプラットフォームへの期待
今後も東映アニメーションは、外部関係者との連携が多い部署を中心にBoxのユーザーを増やしていく方針だ。また製作担当者以外からの利用の希望も多いため、全社的な活用も検討中だという。
賀東氏はBoxについて、「ワークスタイルが変化する中で、有機的にコラボレーションが進められるようなツールにしていきたい」と語る。
先述のように東映アニメーションの作品に関わるクリエイターは、一般企業と異なるワークスタイルで仕事を進めるケースが多い。「ガバナンスとして整備を進めるべき雇用ルールと、作品に関わる人材が好む業務時間帯にギャップがあります。そこで大事な人を大事なときに、オンライン、オフライン問わずうまく集められるワークスタイルが必要だと感じています」と賀東氏は述べる。
「必要なものを全てBoxで管理し、印刷が必要なときには社員証さえあればコンビニエンスストアでも印刷ができるような仕組みが可能になれば、会社に来る必要もなくなります。家と会社が物理的に近い必要はなくなってきているので、Boxが新たなワークスタイルに合うプラットフォームとして、クリエイティビティを支えるようになることを期待しています」(賀東氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー