大規模環境でクラウドを安全に使うヒントがここに
「auでんき」にAWSを採用したKDDI、徹底したセキュリティ対策の中身とは(2/2 ページ)
参照可能なログサーバを分けることで、契約者情報の漏えいを防止
大橋氏からマイクを引き継いだのは、同じくKDDIの技術統括本部、プラットフォーム開発本部アジャイル開発センターの廣田 翼氏。廣田氏は、電気が身近になる「auでんき見える化アプリ」へのセキュリティ実装方法を紹介してくれた。
auでんき見える化アプリは、電気の利用実績や今後の予想利用金額を表示する機能に加え、消費電力が少ない商品の購入機能も備えたアプリだ。「契約に関する情報を扱うので、セキュリティには気を遣いました」(廣田氏)
アプリへのセキュリティ実装で特に考慮したポイントは3つ。個人情報など重要情報へのアクセス、ログイン管理、監査証跡の保存だ。アプリはスカイアーチネットワークスの協力を得て開発、運用しているので、同社からもセキュアにアクセスできる仕組みを考えなければならなかった。
トラブルシュートの際には、システムのログをまず確認することが一般的だ。しかしそこには個人情報が多く含まれているので、社外から簡単に参照できるようにはできない。そこで社内向けとスカイアーチ向けに個別のクラウド監視サービスの「AWS CloudWatch」を立て、社内向けには完全なログを、スカイアーチ向けには重要情報をマスクしたログを転送するようにした。
アクセス可能なAWS CloudWatchのコントロールは、AWSの権限コントロール機能「IAM ロール」で行っている。これにより、スカイアーチを含むパートナーにトラブルシュートへの協力を仰ぐ際にも、契約者の情報を見せずに済む。
踏み台サーバを使いアクセス経路を一本化、全リソースへのアクセスを一元管理可能に
セッション最後に登壇したのは、KDDIの技術統括本部プラットフォーム開発本部S/O・認証グループの林 奈都子氏。林氏が紹介したのは、AWS内でディレクトリサービス「Active Directory」の機能をマネージドサービスとして提供する「AWS Microsoft AD」(注)を使ったアカウントとセキュリティの一元管理手法だ。同社のオウンドメディアである「au Webポータル」や「My au」などで使われているという。
※注:正式名称は「AWS Directory Service for Microsoft Active Directory(Enterprise Edition)」。
「スマートフォン/携帯電話の利用料金や利用データ量、獲得ポイント、契約情報などを取り扱うので、社内で最も高いセキュリティが求められます」(林氏)
KDDIはログイン管理や重要情報の保護のため、前述のオウンドメディアの運用管理に利用する各リソースへのアクセス可能な端末をIPアドレスで制限している。対象となるリソースはAWS管理ツールの「AWS マネジメントコンソール」に統合監視ツールの「Zabbix」、複数のLinuxインスタンス(仮想マシン)と多岐にわたり、リソースごとにアクセス可能な接続元IPアドレスのリストを設定して管理するのは現実的ではないと考えた。そこで取った手法が、踏み台サーバを使ったアクセス経路の一本化だ。各リソースへは踏み台サーバからしかアクセスできないように設定した。踏み台サーバにアクセス可能な接続元IPアドレスのリストを管理するだけで、全リソースへのアクセスを一元管理できる仕組みだ。
踏み台サーバにアクセス可能なアカウントの管理には、AWS Microsoft ADを使用。従来のActive Directory機能に加えて、オンプレミスで稼働するActive Directoryの認証情報でAWS マネジメントコンソールへログインできるID連携機能、日次スナップショットなどの機能を提供する。
さらに踏み台サーバで起動できるアプリケーションや、Webブラウザからアクセス可能なURLもAWS Microsoft ADで制限し、情報漏えい対策に臨む。パスワードの長さなどアカウントポリシーも、AWS Microsoft ADで一元管理しているという。
こうした具体的な実装を紹介した後に再び大橋氏が登壇し、会場の聴衆に向けてこう語りかけた。
「大規模な組織でAWSのような新しい技術を安全に導入していくためには、案件ごとに変わる要件に対応できる柔軟なガバナンスが求められます。どんなに魅力的であっても、こうした整備なしに飛び付くことはできず、長い時間がかかることを覚悟してください。ただ、その第一歩は、今この瞬間からでも踏み出せます」(大橋氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
3
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
4
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
5
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
6
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
7
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
8
「IT運用・情報システム業務」に関するアンケート
-
9
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
10
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー