両者の役割分担は?
「IBM Watson」×「Salesforce Einstein」 AI連携が生む価値(2/2 ページ)
WatsonとEinsteinの役割分担
2社のAI関連製品/サービスが連携することが発表されたとき、多くの人が関心を持ったのは、両者の役割分担だろう。浅野氏は、Salesforce.comのCRMアプリケーションで、社外のデータから得られるWatsonの予測インサイトと社内の顧客データから得られるEinsteinの予測インサイトを組み合わせることで、企業は迅速な意思決定とアクションに役立てることができると話す。
WatsonとEinsteinのインサイトを組み合わせたインテリジェントなCRMの活用は、さまざまな業界にメリットをもたらす。その中から代表的なユースケースを紹介した。
投資アドバイザー会社のユースケース
金融サービスの適用例の1つに、顧客への投資アドバイス業務がある、多くのクライアントを持つファイナンシャルアドバイザーが「税制改革が起こりそう」というWatsonのアラートを受信した。つまりWatsonは、クライアントの投資先である環境保全テクノロジー関連の銘柄やファンドの収益性に影響することを予測したわけだ。
ファイナンシャルアドバイザーとしては、クライアントと今後の投資方針を検討したい。そこでEinsteinは該当するクライアントとのスケジュールを確認し、予定している打ち合わせを1週間早く実施することを提案した。この例ではWatsonは法規制動向をトリガーに、クライアントの投資ポートフォリオへの影響度の大きいイベントをEinsteinに教えている。一方Einsteinはイベントの発生で影響を受けるクライアントを特定し、ファイナンシャルアドバイザーにアクションを促している。もちろん法規制動向以外では、サプライヤーの倒産情報、気象情報などもトリガーになり得る。
損害保険会社のユースケース
次に、損害保険会社がWatsonの気象警報サービスをビジネスに利用する例だ。気象情報はセールス活動と顧客サービスに大きな影響を与える。Watsonが今日の午後3時から高い確率で雹(ひょう)が降ることを予測したとしよう。すると、Einsteinは雹が降る可能性のあるエリアにどのぐらいの保険契約者がいるかを特定する。
保険会社としては、保険金支払いが発生した場合に備え、支払額を最小限に抑えるようにしたいところだ。マーケティングオートメーション製品である「Marketing Cloud」の「プレディクティブジャーニー」機能を使うと、Watsonが雹を予測したタイミングで該当エリアにいる契約者にお知らせを送ることができる。Einsteinはこれまでの顧客とのやりとりを学習して最適なチャネルを選び、「バイクにカバーをかけてください」「オープンカーをガレージに入れてください」と、一人一人にパーソナライズしたお知らせの配信を支援する。保険会社は保険金請求を減らすことができるだけでなく、契約者との間に信頼関係を醸成することにも役立つというわけだ。
日本でもBluewolfがAI活用を進める企業を支援
2社のパートナーシップで、ユーザー企業はWatsonの新しいインサイトを直接Salesforce.comのCRMアプリケーションに組み込むことができるようになった。
IBMは、企業がAI技術を活用して顧客体験の価値を高めることができるようサポートを拡充している。2017年6月30日には、「Bluewolf」のブランドの下でSalesforce関連サービスを日本でも本格的に提供開始することを発表した。BluewolfはSalesforce.comのパートナー企業の1つで、2016年5月にIBMが買収している。同社は創業以来16年間にわたりSalesforce.comのサービス群の導入コンサルティングおよびシステムインテグレーションサービスを提供し、全世界1200社以上の導入実績を持つ。特に、スクラッチ開発のものを含む既存のCRMシステムとSalesforce.comのCRMの連携支援に力を入れるという。
浅野氏は、数年内に国内でもBluewolf専門チームを大きな組織に育て、Salesforce.comと一緒に顧客体験向上につながるサービスを提供していきたいと抱負を述べた。
ひと口にAI技術といっても、それを提供する企業によって、その開発思想や得意とする領域は異なる。お互いの強みを生かすことで新しいビジネスが生まれ、さらに豊かな顧客体験が生まれていくことに期待したい。
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