価格差は平行線のまま
SSDとHDDの性能とコストを徹底比較、“王位継承”は起きるのか?(2/2 ページ)
TCOの観点
ここまでは購入コストと性能の関係だけを見てきたが、総保有コスト(TCO)を考えた場合もSSDは有利だ。TCOを計算するには、Storage Networking Industry Associationが無料で提供しているExcelスプレッドシートなどのコストモデルを使うと便利だ。
SSDを導入すると、消費電力や冷却のコストを削減でき、状況によってはメンテナスコストも削減できる。そのため、設備投資コストと運用コストが同じ予算枠にあればSSDは有利だ。大規模データセンターなどがこれに該当するが、それ以外のほとんどの場合は設備投資コストと運用コストが別枠になっていてTCOが考慮されていない。
ストレージの選択にTCOを考慮する場合でも、計算に使う数値次第で結果は変わってくる。大手銀行のCitiは同行の全データセンターを段階的にオールフラッシュへ移行することを決定した。CitiはHDDの平均寿命を2年、SSDの平均寿命を5年と想定するTCOモデルに基づき、寿命に達したHDDベースシステムを順次フラッシュに入れ替えていくという。この計算にHDDメーカーは納得できないだろう。HDDメーカーとしては、HDDとSSDを同じ寿命で計算すべきだと言うだろうし、その場合のTCOはHDDに有利になると主張するのではないだろうか。
PC分野のHDD vs. SSD
では、PC分野ではどうだろうか。現在販売されている多くのPCが今もHDDを搭載しているのはなぜなのか。
PCを購入するときにHDDとSSDのどちらを選ぶかは、価格性能比より消費者の購買パターンが大きく影響する。一般に、PCの広告には価格とメーカー名が最も大きく書かれている。次にプロセッサ名、その後にDRAMとHDDの容量が続く。それ以外は全てその下に記載される。広告のサイズによってはそれ以外の仕様や説明が入ることもあるが、記載場所はこれらの情報より下だ。
技術的なことにあまり詳しくない消費者は、こうした限られた情報に基づいてPCを選ぶ。価格が500ドル、DRAM 2GB、HDD 1TBのPCにするか、それとも、価格もDRAM容量も同じでSSD 128GBのPCにするか。あるいは、500ドルでDRAM 2GB、HDD 1TBのPCにするか、それとも900ドルでDRAM 2GB、SSD 1TBのPCにするかといった選択になる。
こうした情報に基づいてどの構成が最も価格に見合うかを考えた場合、SSDはあまり魅力的に見えないだろう。SSDの利点をよく知らない場合や、SSDを使った経験はあっても、PCの起動とプログラムの開始が速くなることしか実感できなかった場合はなおさらだ。ハイエンドゲームを使うなら別だが、ほとんどのPCワークロードは比較的小容量のDRAMで十分対応できるため、SSDでそれ以外の速度向上を実感できることはあまりない。
そう考えれば、大多数の消費者がSSDよりHDDベースのPCを買うのも容易に理解できるのではないだろうか。
SSDはいつHDDより安くなるのか
SSDを支持する人々は、SSDとHDDの価格差は急速に縮まり、いずれは差がなくなってHDDは競争優位性を失うと予測している。そう言われ始めて10年以上がたつが、この予測が現実になる日はまだ先のようだ。
図6は、HDDとNAND型フラッシュの価格の推移を示している。
このグラフをよく見ると両方の線は少しずつ接近しており、15年から20年で合流するかもしれないが、全体としてはほぼ平行に進んでいる。これには次の理由が考えられる。
- SSDの価格はムーアの法則に従っており、1年に約30%ずつ下がっている
- ASTC Technology Roadmapによると、HDD1台の記憶容量は1年に30%ずつ増えている。最大容量のHDDは、どの時点においても容量単価が最も低くなり、同程度の価格(約50ドル)で販売される傾向にあるため、価格も毎年同程度ずつ値下がりする
こうした理由から、まだしばらくの間、SSDの価格がHDDと真っ向から対抗することはなさそうだ。
HDDの存続可能性
結論として、データセンターとPCの分野でHDD vs. SSDは次の方向に進むと考えられる。
- データセンター分野では、最適な価格性能比を維持するために、今後もHDDを利用しつつ、さまざまなタイプのメモリやストレージをバランスよく組み合わせていくだろう
- PC分野では、容量単価の優位性から今後もHDDが好まれるだろう。ただし、上級ユーザーはSSDのメリットを選ぶ場合もある
HDDは、SSDと共存しながら、まだしばらく生き残っていきそうだ。
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