価格差は平行線のまま
SSDとHDDの性能とコストを徹底比較、“王位継承”は起きるのか?(1/2 ページ)
SSDはHDDと比べると桁違いに高速だ。データセンターではSSDの採用が増え、DRAMの導入も始まっている。それでも当面のところ、HDDは生き残っていきそうだ。
HDDは60年前からある古い方式の記憶装置だ。他の新しい方式と比べてアクセス速度が遅く性能も低いが、記憶容量当たりの価格は安い。SSDに押されてHDDは数年以内に姿を消すといわれて久しいが、2017年現在もまだ、HDD vs. SSDの議論に決着は付いていない。PCやサーバの分野では依然としてSSDよりHDDが主流であり、HDDの販売台数は2005年とあまり変わらない水準を維持している。
なぜ市場はSSD一色にならないのか。簡単に言えば、SSDの最も有効な用途はHDDを代替することではないからだ。図1は、メモリとストレージの各タイプが構成する階層を示している。HDD vs. SSDの構図は重要だが、この階層全体の中では一部にすぎない。この構造を詳しく見ていこう。
このグラフの横軸はギガバイト単位の価格、縦軸は帯域幅を表す。最大値と最小値の差を見やすくするために対数目盛(10の3乗=1000、10の4乗=1万……)を使っている。
この階層の左下の先端に位置するテープは、最も低速で最も安価な方式であり、現在も広く普及している。右上の先端にあるL1キャッシュは、最も高速で最も高価だ。この両端の間に左から右へ向かってHDD、SSD(このグラフでは「NAND」)、ダイナミックRAM(DRAM)、各レベルのキャッシュが順に並ぶ。それぞれ右隣が上位で左隣が下位であり、右側より左側が低速で安価、左側より右側が高速で高価だ。
アクセス頻度の高いホットデータを高速で高価なメモリやストレージへ、アクセス頻度の低いコールドデータを低速で安価なメモリやストレージへ自動的に振り分けるアルゴリズムも、この順位に沿っている。キャッシュとDRAMの間やキャッシュのレベル間の振り分けはキャッシュ管理ロジックで行う。DRAMとHDDまたはSSD-NANDの間の振り分けは、仮想メモリの実装方法であるデマンドページングのオペレーティングシステム(OS)で行う。SSDは比較的新しいため、SSDとHDDの間はOSではなくキャッシュソフトウェアが管理する。テープとHDDの間のデータ管理を自動化しているシステムはほとんどない。
システムの価格性能比を高めるには、用意するメモリやストレージの容量のバランスが重要だ。あまり大量に用意すると必要以上にコストがかさみ、少な過ぎると性能が不足する。
DRAMの代替としてのSSD
DRAMはHDDよりおよそ100万倍も高速なので、以前はHDDの遅さを補う目的でDRAMを増設することが多かった。安価なSSDが登場すると、同じコストでもDRAMよりメリットの大きいSSDが使われ始めた。つまりこの場合、SSDはHDDの代替というよりDRAMの削減のために採用されている。
このややこしい状態を簡単な計算で考えてみよう。大ざっぱな前提として、DRAMはSSDより1000倍速く、SSDはHDDより1000倍速いとする。また、100ドル分のNAND型SSDは、同価格のDRAMと比較して10倍の容量を提供するものとする。
ソフトウェアからメモリやストレージへのアクセス回数はベル型曲線に近い曲線を示す。一部のバイトは短時間に頻繁にアクセスされるのに対し、それ以外のバイトにはあまりアクセスがない。図2がこれを示している。
図3は、基準とするDRAMの容量を黄色の帯で示している。アクセス分布が狭いソフトウェアの場合は、相対的に少ない容量のDRAMでも効果があるが、アクセス分布が広いソフトウェアの場合は、DRAMの容量をもっと増やさないと十分な効果を得られないことが分かる。
図4はDRAMの容量を2倍にした場合だ。アクセス分布が狭いソフトウェアの場合はこれで大半をカバーできるが、アクセス分布が広いソフトウェアの場合はまだ大部分がカバーされないままだ。SSDを使わない構成では、どちらの場合も100万倍のレイテンシペナルティーが残る。
では、DRAMを2倍にする代わりに、同価格のSSDを追加したらどうなるか。図5では、黄緑色の2つ目の帯が大幅に太くなっている。SSDなら同価格でDRAMの10倍の容量を購入できるからだ。ただし、DRAMよりは低速になる。
この構成なら、アクセス分布が狭いプログラムと広いプログラムのどちらの場合も、大部分のアクセスを向上させることができる。100万倍のレイテンシペナルティーが残るのはほんの一部だけだ。このように、どちらのシステムでもDRAMよりSSDを選ぶ方が効果は高い。
これを数字で見てみよう。アクセス分布が狭いソフトウェアの場合、基準容量のDRAMでは約55%のアクセスを向上させることができる。図3で、黒い線がDRAMの帯に収まる部分がこれに相当する。2倍の容量のDRAMでは90%のアクセスを向上させることができる。図4で、黒い線がDRAMの帯に収まる部分がこれに相当する。DRAMを追加する代わりに同価格のSSDを追加した場合、HDDへのアクセスは1%しか残らない。図5で、両方の帯から黒い線がはみ出している部分がこれに相当する。
表1は、HDD、SSD、DRAMの割合に基づいて計算した平均レイテンシを示している。これらの数値はDRAMのレイテンシを基準としており、SSDのレイテンシは10の3乗でDRAMの1000倍であり、HDDのレイテンシは10の6乗でDRAMの100万倍だ。
DRAMの容量を2倍にすると全アクセスのうち90%を向上させることができ、レイテンシ100万倍のHDDの割合は10%だけになる。これでも十分に思えるが、レイテンシ100万倍の影響は大きい。この場合のシステム全体の平均レイテンシは10の5乗でHDDの約10分の1、DRAMの10万倍だ。
DRAM倍加分の代わりにSSDを使えば、DRAMのカバー分は55%、SSDのカバー分(レイテンシはDRAMの1000倍)は44%、HDD(レイテンシはDRAMの100万倍)の割合は1%だけになる。平均レイテンシは104でDRAM倍加時の10分の1に下がる。
アクセス分布の広いソフトウェアの場合、DRAMの増設でカバーできる割合はもっと小さいため、SSDを採用するメリットはさらに大きくなる。
ソフトウェアのアクセス分布が広いか狭いかを判断するのは難しい場合もある。そこで多くのシステム管理者は、さまざまな容量のDRAMとSSDを試して、どの組み合わせの価格性能比が最適になるかを調べている。
このように、サーバとストレージの分野では、HDDの代替としてではなく、大容量のDRAM増設より効果的な手段としてSSDが採用されている。多くのシステム管理者がそれに気付き、HDD vs. SSDよりSSD vs. DRAMに関心を移している。
最適なシステムを構築するには、単一のタイプのメモリやストレージに依存せず、複数のタイプをバランスよく組み合わせて最高の価格性能比を引き出すことが重要だ。
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