AWSのアンディー・ジャシー氏CEOにインタビュー
AWSによる市場独占はあり得ない、ユーザー企業のマルチクラウドニーズとは?
「Amazon Web Services」(AWS)はクラウド市場で首位の座に君臨している。だがオンリーワンの存在にはならないだろう。企業のマルチクラウド戦略の下、複数のサービスが求められるからだ。
クラウドベンダー大手、Amazon Web Services(Amazon)のCEO、アンディー・ジャシー氏は、「Amazon Web Services」(AWS)が「相変わらず世界で最も売れているクラウドサービスである」と確信している。同CEOが繰り出す発言は楽観的なものだった。
だがAWSは世界で唯一のクラウドプロバイダーではないとジャシー氏は話す。
「成功を収めた唯一の企業になるつもりはない」というのは、2017年10月2日に開催された「Gartner Symposium/ITxpo 2017」でのジャシー氏の発言だ。アプリケーションとデータをクラウドへ移行する企業は、大手プロバイダー(Microsoft、Google、IBMなど)の中から2社以上選定するだろうと同氏は予測している。
だが、多くの企業にとってのマルチクラウドは、異なるプロバイダーにワークロードを均等に振り分けることを意味しないとジャシー氏は話す。多くのCIO(最高情報責任者)やIT部門のリーダーは、初めはそう考えるが、「それを最後まで貫き通すことはほとんどない」という。
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均等なマルチクラウドはなぜ実現しないのか
理由の1つは、複数のクラウドプラットフォームを扱うことは、クラウドチームが複数のシステムを学習してその違いを理解しなければならないということにある。また、クラウドプロバイダーは企業にボリュームディスカウントを提供する。つまり、クラウドを多く利用するほど価格は安くなる。だが、ワークロードを振り分けると、そのメリットを失うことになる。
そこで、多くの企業はプロバイダーを1社選定してから、ワークロードのごく一部を2社目のプロバイダーに振り分けている。こうすることで、ベンダー1社に縛られることがなくなり、最初に選んだベンダーが値上げをしたり、ビジネスから撤退したりしても、乗り換えのオプションが手元に残る。
AWSクラウドプラットフォームは多くの企業が1社目のクラウドとして選定するだろうとジャシー氏は話す。それは、AWSが「競合他社よりもはるかに多くの機能、はるかに大規模でより成熟したエコシステム、そしてはるかに成熟したプラットフォーム」を備えているためだという。
AWSは2006年にリリースされ、競合他社はその急成長とイノベーションの速度に追い付こうと必死だった。だが2017年8月、Gartnerのクラウドプロバイダーの年間ランキングでは、最善のクラウドプラットフォームとしてAWSと「Microsoft Azure」が首位を分け合った。
顧客のニーズを重視する
Gartnerのアナリスト、ダリル・プラマー氏は、ステージ上で数千人のCIOとITリーダーを前にジャシー氏にインタビューし、AWSがこのように大規模かつ急速に成長した要因を尋ねた。
「当社が何を構築するかは、その約90%が当社の顧客が直面している問題によって決まる。残りの10%は顧客に慎重な聞き取りを行って、顧客が何を解決しようとしているかを理解することで決める」とジャシー氏は話す。AWSでは、これを製品開発で実践する。新しい製品やサービスをリリースしたら、顧客の意見に耳を傾け、調整し、再び試す。
AWSが他とは異なるもう1つは、「Trusted Advisor」という顧客サポート機能にあるとジャシー氏は話した。Trusted Advisorは、顧客がどのようにAWSを使っているかを調べ、「最適とはいえない方法」でAWSを使っている顧客には通知を送る。
例えば、顧客がAWSのクラウド内に多数の仮想マシンを用意したにもかかわらず、それらを利用していない場合、「弊社への支払いを見直してください。必要であれば支払いを再開することもできます」という注意が送られる。
AWSはここ数年、こうした通知を何百万通も顧客に送り、その結果、年間約5億円が削減されたと同氏は話す。
だが、AWSには顧客からの苦情もある。プラマー氏が行った約75人を対象にした非公式の調査では、AWSのクラウドプラットフォームの多過ぎる機能と、分かりにくい請求明細に不満を抱いていることが分かった。
「何に支払っているのか分かっていない」(プラマー氏)
ジャシー氏によれば、多くの新しい機能やサービスに遅れずについていくことは企業によっては「難しいこともある」という。そのような機能とサービスの数が2016年は1000を超えた。さらに、2017年末までにこれが1250に増える見込みだ。顧客はこうした機能から得られるコスト削減とイノベーションに満足していると同氏は話している。だが、AWSにシンプルさを求める顧客もいる
「当社はかなりの進歩を遂げたと思っているが、課題はまだ残っている」(ジャシー氏)
クラウドへの要求
ジャシー氏は、聴衆の中にサシ・ピレー氏を見つけた。現在、ITサービスの副社長とワシントン州立大学(WSU)のCIOを兼任している同氏は、クラウドコンピューティングを長年にわたって支持してきた。
ピレー氏は航空宇宙局NASAのCTO(最高技術責任者)として、局外のWebサイトをAWSに移行した経験を持つ。同氏は今、WebサイトをオンプレミスでホストしているWSUで同じことをやろうとしている。
「長期ビジョンとしては、できるだけ所有するIT資産を少なくし、顧客にソリューションを提供することに力を注ぐ」(ピレー氏)
ピレー氏は、教授、職員、学生がテクノロジーに何を求めているかを判断するために、IT部門が作業グループ、学部長、大学首脳とプロジェクトについて議論する際のガバナンス構造を合理化することに努めてきた。また、学生へのアンケート、学生が投票できるITプロジェクトの対話形式の一覧、IT部門が後に導入できるモバイルアプリケーションを開発するハッカーソンも進めている。
ピレー氏はWSUを形作っているパートナーシップと、AWSが顧客と締結しているパートナーシップの間に明らかな類似点を見ている。
「こうした顧客とのパートナーシップこそがAWSの目指すことだと考えている。単なるサービスプロバイダーではなく、戦略的パートナーになることだ」(ピレー氏)
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