超高速ネットワークの挫折と復活【第3回】
超高速ネットワークが越えられない「400Gbpsの壁」(2/3 ページ)
「今できること」で構築した100GbE
IEEE 802.11baつまり100GbEが案外にあっさり決まった理由は、基本的に10Gbps用ケーブルの通信に据え置いたことにある。100GBASE-SR10の場合、マルチモードの光ファイバーを使い、12対(24芯)中10対(20芯)を利用して、それぞれの芯線が10Gbpsで通信することで、トータルのデータ伝送速度を100Gbpsとしている。これは100GBASE-CR10も同じで、10対(20芯)構成のツイストペアケーブルを使い、それぞれの芯線が10Gbpsで通信する形だ。この場合、コネクターそのものは従来と互換性がないが、送受信部は10GBASE-SRのものを10個並べるだけだから、コストはかかるが技術的難易度は低い。同じように40GbEは全て10Gbps用芯線4対(8芯)で、こちらは送受信部を4個並べるだけだから、100GbEと比べてコストも低く抑えられる。
もっと正確に言えば、最初は1対(2芯)の芯線だけで達成できないかどうかを検討したが、100Gbps用芯線はおろか40Gbps用芯線も難しいということでこれを放棄。次善の策として4対の芯線で実現する形を考えた。40GbEなら10Gbps用芯線4対で技術的な難易度は低いし、100GbEは25Gbps用芯線4対とすればケーブルの交換は必要だが、40GbEの4対ケーブル用配線をそのまま流用できる。だが実際に検討してみると、芯線1対当たり25Gbpsでの送受信を可能にする発光/受光部の開発を含めていろいろな仕掛けが必要になる。最終的にこれら25Gbpsでの送受信関連を全部IEEE 802.3bjに追いやってしまい、10Gbps用芯線10対の構成で実現してしまったのがIEEE 802.3baだと考えればいい。
ただしSRに関しては、利用する光ファイバーを増やすのはそれほど難しくない。長距離向けのLR/ERに関しては、既に敷設してある光ファイバーの再利用を考えると、いきなり10対にするのは無理がある。そこでこちらは4種類の光(波長1295.56ナノ、1300.05ナノ、1304.59ナノ、1309.14ナノの光)を1本の光ファイバーに通すWDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)を利用することで対応した。これだと25Gbpsといっても、1つの波長当たりのデータ伝送速度は実質4分の1の6.25Gbpsに落ちるから、実現は容易である。もちろんWDMにすると合波器(Mux:マルチプレクサー)や分波器(DeMux:デマルチプレクサー)が新たに追加になるからコストは上がるが、ケーブルを敷き直すよりも、はるかに低コストである。
25Gbpsでの送受信を取りあえず外すことでIEEE 802.3baが完成した一方で、外された方の25Gbpsでの送受信に関する部分は改めてIEEE 802.3bjとしての仕様化がスタートした。1対の芯線で25Gbpsを実現できれば、同じデータ伝送速度でも芯線の数を減らすことができ、配線がすっきりする。特にCRは銅配線ということもあり、光ファイバーよりも一般的にずっと太くなる。KPとKRの主要用途であるバックプレーンは、複数の回路基板をコネクターに挿入することで相互接続を実現するため、配線が増えがちだ。こうしたこともあり、芯線の数を減らしたいのは間違いない。IEEE 802.3bjは2014年に仕様策定が完了している。
ちなみにIEEE 802.3baとIEEE 802.3bjのもう1つの大きな違いは、エラー発生時に受信側で元データを復元できるようにする「前方誤り訂正」(FEC:Forward Error Correction)機能の有無だ。IEEE 802.3baにはこの機能は含まれておらず、802.bjで追加された。
話を戻すと、まずは100GBASE-SR10のマーケットが立ち上がったが、初期の製品に利用されていた光トランシーバー(電気信号と光信号を相互に変換する送受信機器)はCFP(C Form-factor Pluggable)というかなり大きなものだった。業界団体のCFA MSA(Multi-Source Agreement)によると、標準の筐体仕様は144.8(奥行き)×82(幅)×13.6(高さ)ミリ。続いて、その筐体の幅を半分、4分の1に抑えたCFP2、CFP4が登場する。その後QSFP28という、より小型の光トランシーバーが登場して本格的に100GBASE-SRの普及が始まることになった。このタイミングで100GBASE-SR10は次第に姿を消してゆき、100GBASE-SR4が主流になっていった。
このQSFP28は40Gbps帯でも利用可能であり、また100GBASE-SR4だけでなく100GBASE-LR4や100GBASE-ER4、さらには100GBASE-CR4用の光トランシーバーも提供されるようになった。スイッチやネットワークカードはQSFP28用のインタフェースを装備し、後は距離に応じて必要なQSFP28光トランシーバーを装着するという、自由度の高い環境が2015年後半あたりから広く普及することになった。現在のデータセンターでの主流となっている。
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超高速ネットワークの挫折と復活
ITシステムが扱うデータが爆発的に増大している今、超高速ネットワークへの期待は大きい。しかし10Gbps級ネットワークの普及は遅れている。その原因と克服への挑戦を追う。
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