超高速ネットワークの挫折と復活【第3回】
超高速ネットワークが越えられない「400Gbpsの壁」(3/3 ページ)
越えられない「400Gbpsの壁」
100GbEはこうして普及期に入ったわけだが、これに先んじてIEEEは次のイーサネットの規格策定を始めていた。テラビットイーサネット(TbE)と呼ばれる次世代イーサネットは、2012年ころからGoogleやFacebookといった大手事業者からそのニーズが上がっており、これに応える形でIEEEもまず「IEEE 802.3 Industry Connections Ethernet Bandwidth Assessment Ad Hoc」という名称のインダストリーコネクション(業界連携委員会)で、ニーズを吸い上げるとともに簡単なケーススタディーを開始した。2013年3月にIEEEは、このニーズ調査やケーススタディーを基に400Gb/s Ethernet Study Groupというスタディーグループ(研究委員会)を立ち上げた(400Gb/s Ethernet Study Groupの公式サイト)。この段階で明らかにしたのは「400Gbpsまでは既存の技術の延長で実現できるが、その先はまったく新しい技術が必要」と判断したことだ。
TbEについてはいったん棚上げとし、まずは200Gbpsと400Gbpsのギガビットイーサネット規格(以下、それぞれ200GbE、400GbE)の実現を急ぐことになる。このスタディーグループの成果を基に、2014年3月にはタスクフォース(プロジェクトチーム)の「IEEE 802.3bs Task Force」が構成される。現時点ではまだこの802.3bsは標準化作業中の段階であり、まだ審議が続いている(参考:IEEEのタスクフォースのWebページ)。ただし今はどちらかというと細部を詰めている段階で、基本的な部分はほぼ固まったと考えてよいだろう。規格としては以下の表4に示した7種類をまず用意する模様だ。
| 規格名 | ケーブル構成 | 最大伝送距離 |
|---|---|---|
| 200GBASE-DR4 | 50Gbps×4対(8芯) | 500メートル |
| 200GBASE-FR4 | 50Gbps(WDM)×4芯 | 2キロ |
| 200GBASE-LR4 | 10キロ | |
| 400GBASE-SR16 | 25Gbps×16対(32芯) | OM3タイプの光ファイバーが70メートル、OM4タイプの光ファイバーが100メートル |
| 400GBASE-DR4 | 100Gbps×4対(8芯) | 500メートル |
| 400GBASE-FR8 | 50Gbps(WDM)×8対(16芯) | 2キロ |
| 400GBASE-LR8 | 10キロ |
このうち400GBASE-SR16に関しては既存の100GbEの技術をそのまま利用した形だが、大きく仕組みが発展したのは400GBASE-DR4と200GBASE-DR4である。どちらも信号の変調方式としてPAM4(PAM:パルス振幅変調)を採用している。一般的な変調方式であるNRZは、信号レベル(光の振幅)をオンとオフの2段階で示す。PAM4はNRZとは異なり、信号レベルを2段階ではなく4段階に変更するので、信号1サイクル当たり2bitを送信できることになる。200GBASE-DR4で例えると信号周波数は25GHzで、25Gサイクル毎秒のペースで信号を発信するので、データ伝送速度は光ファイバー1芯当たり
- 25Gサイクル毎秒(信号周波数)×2bit毎サイクル(PAM4)=50Gbps
となる仕組みだ。400GBASE-DR4なら50GHzで光ファイバー1芯当たり100Gbpsとなる。信号周波数が50GHzに達することになり、当初はかなりの価格になると考えられる。これは高い信号周波数を使うと信号がノイズに弱くなる特性があり、ノイズを抑えるために高い品質のケーブルを使う必要があるためだ。
この802.3bsの標準化完了時期は2017年末が予定されているが、既にベンダーの中には製品投入を始めているところもある。例えばイスラエルのMellanox Technologiesは2017年7月に400GbEに準拠したイーサネットスイッチ「Spectrum-2」を発表した(Spectrum-2に関するMellanox Technologiesのプレスリリース)。米MACOM Technology Solutionsも400GBASE-DRに向けた、光ファイバー1本当たり100Gbpsを実現するコンポーネントを発表済みである(MACOM Announces Industry’s First and Only End-to-End 100G Single Lambda Solution Scalable to 400G for Cloud Data Centers)。本格的に市場が立ち上がるのは2018年以降になると考えられるが、100GbEのときよりも立ち上がりは早い可能性がある。
さらにその先は、というとEthernet Allianceが発表した2016年度ロードマップでは、2020年以降にイーサネットのデータ伝送速度は800Gbps、1.6Tbps、3.2Tbps……と、最終的には10Tbpsを超えると説明する。
10GbEから100GbEのような10倍はもう無理で、倍々ゲームでデータ伝送速度を高めてゆくのが基本方針のようだ。ただしIEEEで具体的に検討が始まっているわけではない。通例だと、802.3bsの標準化作業が終わる2018年あたりから、こうした作業が始まると推測する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
超高速ネットワークの挫折と復活
ITシステムが扱うデータが爆発的に増大している今、超高速ネットワークへの期待は大きい。しかし10Gbps級ネットワークの普及は遅れている。その原因と克服への挑戦を追う。
この記事の著者
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
AIで人を減らした企業がもう心変わり 「AIブーメラン現象」の実態
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー