「MR」(複合現実)との組み合わせも鍵に
「モバイルAI(人工知能)」が実現する“SF超え”の生産性
「人工知能」(AI)テクノロジーは、モバイルデバイスの利便性や安全性を大いに向上させる力を秘めている。その可能性を評価し、どのように活用できるかを判断することが重要だ。
デバイスがエンドユーザーを識別し、エンドユーザーに関する情報に基づいてサービスを提供する――。そんなテクノロジーは、もはやSF(サイエンスフィクション)映画の中だけのものではない。要素となるテクノロジーは現実に存在しており、近いうちにモバイルデバイスで当たり前に利用できるようになるだろう。
Appleの「Siri」やGoogleの「Googleアシスタント」、Samsung Electronicsの「Bixby」といった音声アシスタントはこれまで、エンドユーザーとの音声でのやりとりに基づいて、Webサイトからデータを取得したり、アプリケーションを操作したりしてきた。次世代の音声アシスタントは、エンドユーザーについて学習し、デバイスとそのアプリケーションをエンドユーザー固有のニーズに適合させることに重点を置く。音声アシスタントは、エンドユーザーがどのような検索をする可能性があるかではなく、エンドユーザーが何を必要とし、何を求めているかを知るコンシェルジュのような存在になる。
こうした人工知能(AI)テクノロジーを本格的に導入することで、モバイルデバイスが使いやすくなるのは確実だ。デバイスとアプリケーションをエンドユーザーのニーズに適合させることで、個人や企業の生産性向上につながる。さまざまな機能やアプリケーションの操作に関するエンドユーザーの不満も軽減できる。
モバイルコンピューティングの次のフェーズでは、AIテクノロジーの世界に深く入り込むことになる。企業はこうした「モバイルAI」の時代を前に、自社の戦略を決める必要がある。ただしモバイルAIの取り組みは、容易ではない。
AIによる変化への道のり
現在の一般的なモバイルデバイスは、AI機能の処理に利用できる基本的なハードウェアを備える。AI関連処理に特化したサブプロセッサの搭載も進みつつある。ただし機械学習をはじめ、大量のメモリを必要とするAI機能の処理は、デバイス内ではなく接続先のバックエンドシステムで実行するのが現実的だ。「デバイス内で機械学習の処理を実行したい」と考える人が多いが、ごくシンプルな処理を除けば、必要なリソースをデバイス内に確保するのは不可能だろう。
システムの構築や運用の負荷を考えれば、オンプレミスのシステムよりも、クラウドサービスでバックエンドシステムを構築する方が合理的だといえる。企業はクラウドベンダーの協力を得て、特に5G回線のような高速かつ低レイテンシ(遅延)のネットワーク経由でクラウドサービスを利用できるようにすべきだ。
モバイルAIがもたらすメリット
AIテクノロジーは、モバイルデバイスのセキュリティを向上させる可能性もある。
真にスマートなモバイルデバイスは、デバイス内のデータが適切に使われているかどうかを認識し、今そのデバイスを利用しているのは正当なエンドユーザー/オーナーなのか、たまたまデバイスを手にした人なのかを判断する。生体情報だけでなく、エンドユーザーに関する幅広い情報を踏まえ、不審な行動を検知する。
こうした仕組みは、現在のモバイルデバイスやエンドユーザーに起因する重大なセキュリティ脅威の除去に役立つ。現行の「エンタープライズモビリティー管理」(EMM)製品などの管理製品を補完するだろう。
エンドユーザーの使い勝手を高めるには、仮想世界を現実世界のように体験可能にする「複合現実」(MR)テクノロジーが有効だ。一部のアプリケーションは、MR機能によって全く新しい体験を実現する。MRテクノロジーをうまく利用すれば、エンドユーザーに詳細なデータを簡単に提供できる。AIテクノロジーと、MR機能を手軽に実現するデバイスを組み合わせることで、小売業、製造業、ヘルスケア業、金融サービス業といった幅広い業種のシステムを強化できるだろう。
モバイルAIに備える
今後数年で、モバイルデバイスは大きな進歩を遂げると予想する。企業はAIテクノロジーを利用するための戦略を評価し、実行することが重要になる。
ベンダーとの窓口となっている担当者は、ハードウェアとソフトウェアの両面で、今後どのような機能が利用できるようになるかをベンダーに問い合わせる。IT部門は、GoogleやMicrosoft、Amazon Web Servicesなど、主要なクラウドベンダーが発表する新機能を詳細にウォッチし続けよう。オンプレミスアプリケーションを運用している企業は、ソフトウェアベンダーとの保守契約の一環として、どのような機能やアップグレードが得られるのかを調べておこう。
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