「次世代の教員」が知っておくべきこと【第1回】
「プログラミング教育」は“競争に勝ち抜く社会人”を育てる手段になる?(2/2 ページ)
新たなチャレンジを支える「失敗の分類」と「試行錯誤」
現場の教員の中には、ITに苦手意識を持つ人が少なからずいる。こうした教員を含めてIT活用の裾野をいかに広げていくかは、教育機関にとって大きな課題だ。教員に限らず、人は失敗を過度に恐れると、新しいことを試すのが難しくなってしまう。だが教員にとって「チャレンジしないことは一番の問題だ」と、佐賀市立大和中学校教諭の中村純一氏は憂慮する。
IT活用という新たな教育手段に挑む不安を拭い去るには、どうすればよいのか。中村氏は全ての間違いを「失敗」とひとくくりにするのではなく、不注意や勘違いによる間違いを意味する「ミステイク(mistake)」と、より深刻で意図しない間違いを意味する「エラー(error)」に分類してみてはどうか、とアドバイスする。ミステイクなら次から気を付け、エラーなら学んで直していけばよいという考えだ。
こうした試行錯誤を重ねる上で大切なのは「PPDACサイクル」だと中村氏は考えている。PPDACサイクルは、以下の順に繰り返し実施する、課題解決プロセスのことだ。
- Problem(課題設定)
- Plan(計画)
- Data(データ収集)
- Analysis(分析)
- Conclusion(結論)
大和中学校は授業や部活動で、生徒と共にこのPPDACサイクルを実践しているという。同校剣道部は、練習や試合の様子をタブレットのカメラで撮影して、選手の動きを細かく分析。こうした取り組みを経て、2017年度には全国中学校体育大会の女子団体で優勝した。同部は2016年度の同種目で準優勝するなど、もともと強豪だったが、PPDACサイクルに基づく試行錯誤が一定の成果を収めた形だ。こうした生徒の取り組みは、教員の間にPPDACサイクルに関する理解を広げる効果もあるという。
試行錯誤を繰り返す上で、タブレットなど手軽に利用できるITツールが役立つと中村氏は語る。紙芝居の作成を例に取ろう。紙を使った昔ながらの紙芝居を作ろうとすると、ペンでイラストを描いたり、せりふを書いた紙をのり付けしたりと、作成に手間が掛かる。一度作ったものを修正するのも一苦労だ。「Microsoft PowerPoint」などのプレゼンテーションツールを使ってデジタル紙芝居を作成し、タブレットで表示するようにすれば、内容の作成も修正も簡単にできる。
「自ら学ぶ力」の育成は授業や部活動だけでは不十分
教育機関における教育活動は、授業と部活動だけが全てではない。研究活動やインターンシップ、海外貢献活動なども立派な教育活動だ。こうした活動に自発的かつ自治的に取り組むためのモチベーションや“込み上げる衝動”は「生徒を枠の中に閉じ込めていても生まれない」と、広尾学園中学校・高等学校副校長の金子 暁氏は指摘する。「学校内外での幅広い、かつ本格的な教育活動が必要だ」(金子氏)
広尾学園はこうした意識の下、多様な課外学習の機会を作り出している。特定非営利活動法人(NPO法人)のAsuka Academyと共に取り組んだ、海外大学講義の翻訳は、こうした活動の好例だ。広尾学園高校の生徒が、Massachusetts Institute of Technology(MIT:マサチューセッツ工科大学)による動画教材「MIT+K12 Videos」の翻訳に挑んだ。また西アフリカのガーナでサッカーを教えた生徒が、帰国後にその経験を生かして海外チームのビジネスプランを立案したケースもあるという。
こうした活動で養われるモチベーションや“込み上げる衝動”は、何かを成し遂げるために必要な問題解決力の育成につながると金子氏は説明する。「『学力』の意味を問い直す必要がある」と同氏は強調し、今後は「生涯にわたって自分で学び続ける力」「生涯にわたって学びを拡大し続ける力」の育成が求められるようになると主張する。
新しいことにチャレンジしたり、試行錯誤をしたりする重要性は理解できているものの、目の前の仕事に忙殺され、なかなか行動に移せない教員や教育機関は少なくないだろう。ITをうまく活用すれば、手軽に試しやすくなるはずだ。
第2回ではiTeachersメンバーがお薦めする、教員が知っておきたいITツールを紹介する。
執筆者紹介
栃尾江美(とちお・えみ)
大学卒業後、ITコンサルタントとして外資系IT企業に勤務し、クライアント向けに業務システム(SAP ERP在庫購買管理モジュール)の導入などを担当。2005年にライターとして活動をスタートし、雑誌、Webなどに記事を執筆。ジャンルは多岐にわたり、働き方(女性活用、時短、リモートワーク)、IT、デジタル、子育て、教育、採用関連、経営者インタビューなど。プライベートでは2児(♂)の母。Webサイトはemitochio.net。
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「次世代の教員」が知っておくべきこと
教育機関のIT活用が珍しいことではなくなり、プログラミング教育を初めとする新たな教育課題が生まれる中、これからの教員はこうした状況にどう向き合うべきなのか。教育IT先駆者の声から探る。
この記事の著者
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