注目は「ネットワークスライシング」機能
無線技術「5G」とは何か? 先行準備企業が語る「これまでとの革命的な違い」(2/2 ページ)
5G無線技術へと前進する通信事業者
3GPP(3rd Generation Partnership Project)によると、ネットワークスライシングは新しいサービス型アーキテクチャの部品(コンポーネント)にすぎないという。3GPPとは、7つの標準開発組織をまとめ、携帯電話通信ネットワーク技術の仕様を策定するプロジェクトだ。
2017年の暮れ、3GPPは通信事業者向けに5Gサービスの新しいモデルを発表した。この発表によれば、ネットワーク機能のモジュール性、再利用性、自己完結性などの理念を採用し、5Gの導入において最新の仮想化とソフトウェア技術を活用できるようにするためにこのモデルが選ばれたという。3GPPは、このモデルが実現する高いアジリティー(敏しょう性)により、通信事業者は企業顧客のニーズにさらに素早く応えることができるとしている。
3GPPは2018年6月、5Gの仕様を追加提供する予定だ。米電気通信事業者であるVerizonは2018年、5G標準の策定に加え、5Gネットワークのテストを11カ所の大都市圏に広げて続行する。
一方、米電話会社のAT&Tは5G無線接続のテストを拡張した。インテリアと雑貨のブランドMagnoliaがテキサス州ウェーコに出している「Magnolia Market at the Silos」という店舗をテスト範囲に含めるためだ。AT&TはWi-Fi経由で区域全体に接続を分散させるためにミリメートル波スペクトルをテストしている。また5Gの無線とアンテナを試作し、こちらにもテストを実行している。5Gネットワークのルーターとしては、ネットワーク仮想化製品である同社の「AT&T FlexWare」を使用している。無線ネットワークが高速化すれば、モバイルPOSデバイスや無線デバイスを使用して事務、管理業務を担当する従業員だけでなく、買い物客にもメリットがあると同社は考えている。
5Gサービスを商用化するには、ネットワーク事業者が何度も試行を重ねる必要がある。プロジェクトと標準の開発を試行するだけでは不十分だ。より多くのファイバー(通信用の専用ケーブル)を通信事業者が設置できるようにしなければならない。そのためには国や自治体のアクセス規制が緩和され、地域の認可が下りることも必要だ。5Gのデータ需要を満たすためにファイバーを増やす必要性を説くのは、電気通信とデータ通信に特化したコンサルティング企業CIMIの代表取締役トム・ノール氏だ。
ファイバーの増加が必要になるのは、5Gワイヤレス接続によって接続を確立できるファイバーを消費者の所在地の近くに設置しなければならないためだ。このことは、会計事務所のDeloitte Touche Tohmatsuが2017年7月に書き起こした通信インフラのアップグレードについてのレポートでも取り上げている。
今のところ、5Gへの金銭的負担を主に担っているのは通信事業者だ。企業はどこかの時点で、ファイバーのアップグレードや物理機器の5Gへのアップグレードに投資することを検討しなければならなくなるだろう。だがIT管理者は、いまだ購入すらできない5G製品とサービスに対し戦略を立てることはしていない。「まだ新し過ぎる」とノール氏は話す。
5Gの未来
5Gが抱える問題の中心にあるのは、データ需要に対応する容量だ。
モバイルデバイスでアクセスするデータは日に日に増えている。そのため、5Gはエンタープライズ用のデータセンターに対して最も大きな影響力を持つ。そう話すのは、無線とモバイルに関するコンサルティングサービスを提供するFarpoint Groupの主任、クレイグ・マシアス氏だ。5G無線ブロードバンドサービスはさまざまなトラフィック要求やアプリケーションにも対処できるだろうと同氏は付け加えた。そして、5Gの導入数は恐らく2023年まで増えることはないとも話す。使える時間や採用する戦略は企業によって異なるため、5Gの実装は誰もが同じにとはいかない。
今後、企業は5G対応デバイスのデータ需要に取り組むことを余儀なくされ、データセンターに負担がかかると予想される。だがワイヤレス容量が増加すれば、データセンターでデータ需要が増えてもボトルネックははるかに少なくなるとマシアス氏は述べる。
5Gのビジネスケースが進化するにつれ、企業は5G無線技術を活用する新たな方法を見つけていくことだろう。通信事業者が真に普及させることができれば、5GはいつかWi-Fiに完全に取って代わる可能性もあるとタウンゼント氏は話す。
それまでに企業ができるのは、ファイバーの追加と5Gデバイスへの投資を検討し、まずは5G固定無線サービス、その後にモバイル携帯電話サービスを段階的に展開する準備を整えることだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー