仮想通貨だけでないブロックチェーンの活用法
ブロックチェーンは効果的? 「文書改ざん防止システム」の作り方(2/2 ページ)
講演では続いてBCCC技術応用部会長の森 一弥氏が、文書改ざん対策にブロックチェーン技術を利用する方法について解説した。
ハッシュ値とハッシュ関数
ブロックチェーン技術は基本的にトランザクションデータを保持する。PDF形式や「Microsoft Word」形式の文書ファイルをそのまま取り込めるわけではない。「ブロックチェーン技術で管理できるのは、送信者/受信者のID、送信日時、金額、ショートメッセージといったもの。住所や電話番号などの個人情報はあまり記録しない」(森氏)。森氏は講演で、企業の既存のシステムをなるべく生かしたブロックチェーン技術の適用例として、最も一般的なハッシュ値を用いる方法を紹介した。
ハッシュ値とは、ある一定量の情報を短く要約したデータのことだ。ハッシュ値自体に意味はない。異なる情報(例えば異なる文書ファイル)から同一のハッシュ値が出力されることはなく、また一度出力されたハッシュ値を変更することはできない。この不可逆性を応用することで、情報の改ざんが発見できるというわけだ。PDFなどの文書ファイルに単一もしくは複数のハッシュ関数を使い、出力されたハッシュ値をブロックに書き込む。
ハッシュ関数には複数の種類があるが、現在主流なのは仮想通貨「ビットコイン」でよく利用されている、ハッシュ値32バイトの「SHA-256」や64バイトの「SHA-512」、20バイトの「RIPEMD-160」だと森氏は説明する。同氏によるとビットコインでは、ハッシュ値の掲載のためにSHA-256を2度使ったり、SHA-512を使った後にRIPEMD-160を使ったりと、複数のハッシュ関数が組み合わせて使われている。
ユーザーは、文書ファイルを再利用するタイミングなどでハッシュ値を確認すれば、改ざん状況が分かる。現時点の文書ファイルに対してハッシュ関数を使って出力したハッシュ値と、ブロックチェーンに記録されているハッシュ値を比べて同一であれば、改ざんがされていない、異なれば改ざんがされたことになる。
「文書管理システム監視」+「ハッシュ値作成&書き込み」が改ざん対策に効果
多くの企業では、既に何かしらの文書管理システムを利用しているだろう。「Microsoft SharePoint」のようなパッケージ製品や「Box」「Dropbox」のようなオンラインストレージサービスを使っていたり、社内の共有ファイルサーバを構築していたりする。森氏もその可能性に触れ、「ブロックチェーン技術で改ざん対策の仕組みを作るために、一から文書管理システムを作り直す必要はない。文書ファイルが保存されたり、(文書管理システムにワークフローがあれば)承認されたりした時をトリガーとし、文書ファイルからハッシュ値を作り、ブロックチェーンに書き込むようシステムを設計すればいい」と述べる。
ただし共有フォルダや文書管理システムは監視できる状態にしておく必要がある。そのために有効なサービスとして森氏は、「IFTTT」「Microsoft Flow」「ASTERIA WARP」といったサービス連携ツールを紹介する。これらは、プログラムを書くか開発画面でアイコンを並べるだけで、フォルダの監視やその後の処理(メールを送るなど)を自動化できるツールだ。
さらに「Google Apps」のスクリプトや、「AWS Lambda」「Azure Functions」といったクラウドサービスのサーバレス機能、「Node-RED」などのプログラミングツールを使うことで、ハッシュ値の作成とブロックチェーンへの書き込みが可能になる。このように、文書管理システムやフォルダの監視に加え、ハッシュ作成とブロックチェーンへの書き込みさえできれば、一から作らなくてもブロックチェーンを使った“文書改ざん対策システム”が出来上がる。
文書自体の改ざんを防ぐことはできない
気を付けたいのは、文書改ざんをできなくするシステムではないということ。当然だが、文書自体がブロックチェーンに記録されるわけではない。森氏は「文書を改ざんすることは可能だし、すぐに気付かない場合もある」と注意を促す。
改ざんされたことが即座に分かるわけでもない。改ざんされているかどうかをチェックしたときに初めて分かる。改ざんされていないかどうかは、確認のたびにシステムに問い合わせる必要がある。「改ざん防止というよりは証明書のニュアンスが強い」と森氏は指摘する。
文書は、本来あるべき電子化へ
森氏は講演で、ハッシュ値を利用する以外にも、構造化された文書をシステムで分割してブロックチェーンに直接書き込むことで、文書自体を管理する方法についても紹介した。他にも、ブロックチェーン技術を使わずに、「Adobe Sign」のような電子サイン、電子署名の技術を使う方法もあるだろう。こうした新しい文書管理の仕組みを模索する中で、同氏は「文書の在り方を見直す時期に来ている」と提言する。
「例えばワープロソフトで作成した契約書はスマートコントラクトに置き換えられるのではないか」と森氏は語る。いつどのような条件がそろった時点でいくら支払うといった一連の流れをプログラムで組めれば、契約書がプログラムに置き換わることだって有り得る。「人がチェックシートで記録するような検査記録データであれば、センサー情報をリアルタイムで直接ブロックチェーンへ書き込むことも可能になるだろう」(同氏)
紙文書を効率的に作るための電子化や、紙文書を単に電子データに置き換えただけの電子化ではなく、電子化ならではの文書とは何か、文書の在り方自体を見直す時期にきていると言えそうだ。
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