事例で分かる、中堅・中小企業のセキュリティ対策【第15回】
テレワーク導入企業が直面するセキュリティ問題にどう取り組むか?(2/2 ページ)
テレワークを活用する企業が直面するセキュリティ問題
例えば自社内やオフィス環境では、しっかりとセキュリティ対策を施していたにもかかわらず、在宅勤務中の従業員のPCがウイルスに感染してしまい、社内LAN全体にまで拡散してしまう事態が起きる可能性は否定できません。あるいは、ウイルスに感染した端末が踏み台となり、社内の機密情報や重要情報の漏えいにつながる恐れもあります。テレワークが原因で多大な損失を被ってしまっては、何のためのテレワークなのか分からなくなります。
IT活用による利便性の向上には、必ずリスクが付きまといます。テレワークを推進する企業は、必ずセキュリティ対策もセットで考えなくてはいけません。
初めてテレワークを導入する企業が最低限取り組むべきセキュリティ対策には、どのようなものがあるでしょうか。大別すると、次の3つになります。
- 技術的な取り組み
- 仕組みやルールに関する取り組み
- 人に対する取り組み
今回は「技術的な取り組み」に絞って説明します(次回以降で、仕組みやルールに関する取り組みと、人に対する取り組みについて解説します)。
テレワーク導入企業が最低限やるべきセキュリティ対策(技術的な取り組み)
テレワークを実施するときに、セキュリティ上考慮すべき技術的な要素は、次の2つです。
- セキュリティ上の抜け穴を作らないこと
- 情報流出や漏えいが起きないこと
このセキュリティリスクは、次の3つのポイントで発生する可能性があります。
- モバイルデバイス
- モバイルデバイスからインターネットへの接続時
- モバイルデバイスからインターネット、社内LANへの経路
セキュリティ担当者は、それぞれに対するセキュリティ対策を、このように施しましょう。
1.モバイルデバイス
モバイルデバイスのセキュリティ対策のポイントは、以下の2つです。
- 業務では会社支給(貸与)のモバイルデバイス(以下、貸与端末)を使わせる
- 貸与端末には基本的なセキュリティ対策を施す
従業員にWindowsのモバイルPCを貸与している場合の対策例は、以下の通りです。
- ウイルス対策ソフトウェアをインストールし、定義ファイルを最新版にする
- 「Windows Update」を実行し「Microsoft Office」関連ソフトウェアを最新版にする
- Webブラウザを最新版にし、不要なWebブラウザを削除する
- 「Java」「Adobe Flash Player」を最新版にする
- 「Adobe Acrobat Reader DC」を最新版にする
- USBメモリや外付けHDDなどの外部デバイスを貸与端末で接続できないようにする
- 不要なアプリケーションをインストールできないようにする
- 貸与端末へのログインパスワードはプライベートで使用しているものと同一にさせず、パスワードの使いまわしもさせない
- 貸与端末を紛失した場合に情報漏えいが起こらないように、HDDのデータを暗号化する
- 自宅PCでデータを無制限に印刷できないように設定する(印刷する場合はログを必ず残す、など)
- のぞき見防止フィルターなどのショルダーハック対策を導入し、外出先でも横から情報を盗み取られないようにする
2.モバイルデバイスからインターネットへの接続時
従業員が自宅の無線LAN経由でインターネットにアクセスする際の主要な注意点を以下にまとめました。
- WEPなど脆弱なセキュリティプロトコルを使わない
- 無線LANアクセスポイントのファームウェアを最新版にする(セキュリティプロトコル「WPA2」の脆弱性対策のため)
- 貸与端末でインターネットに接続する場合、アクセスできるWebサイトに制限を設ける
- メール送受信の際、会社で指定したメールサーバ以外へのアクセスはできないようにする
- メールフィルタリングソフトなどを用いて、不要な迷惑メールの閲覧をできないようにする
- ファイアウォールや統合脅威管理(UTM)などを導入し、攻撃者からの侵入を防ぐ手だてを整える
3.モバイルデバイスからインターネット、社内LANへの経路
従業員が外出先や自宅でモバイルデバイスを使い、インターネット経由で社内LANへアクセスする際の主要なセキュリティ対策を以下に示します。
- 貸与端末を社内LANに接続する際には、インターネットVPNでセキュアに接続する
- 社内リソースへアクセスする際のログインパスワードはプライベートで使用しているものと同一にさせず、パスワードの使い回しもさせない
- インターネットVPN接続の際にはワンタイムパスワードを利用するなど、2段階認証を施す
これらの技術的なセキュリティ対策は、テレワークをする上で最低限必須となる取り組みなので、しっかりと準備しましょう。
まとめ:セキュリティ担当者は、こんなふうに上司を説得しよう
- テレワークを導入することで、1社当たりの労働生産性が1.6倍になる(常用雇用者100人以上の企業の場合。総務省「平成28年通信利用動向調査の結果」による)。経営者としては検討の余地が十分にある取り組みである
- テレワーク導入企業は、情報セキュリティ対策と必ずセットで考えなくてはいけない。ポイントは「セキュリティ上の抜け穴を作らない」「情報流出や漏えいを起こさない」こと
- セキュリティリスクを事前に洗い出し、技術的な取り組みを1つ1つ実施することで、テレワークを具体的に実現する
連載について
情報セキュリティ対策をしたくても、ITに詳しい人が社内外にいなくて困っている中堅・中小企業は多いのではないでしょうか。「知識不足」と「ヒト、モノ、カネ不足」の問題が目の前にあっても、対策は待ったなしの状況。予算を握る上司を説得するために、サイバー攻撃の事例を紹介しながら、その効果的な対策につながる情報セキュリティ製品を分かりやすく解説します。
那須慎二(なす・しんじ)
大手情報機器メーカーを経て船井総合研究所に入社。ネットワークセキュリティの安全対策と解決策に詳しい。「日本一分かりやすいセキュリティ」をモットーに、中小企業を対象にしたサイバーセキュリティ問題や、対策に関する啓発活動を実施。実際に、全国の地域各社で年間100回以上開催する講演は「今まで聞いた中で一番分かりやすい!」と好評を得ている。著書『小さな会社のIT担当者のためのセキュリティの常識』(ソシム)がある。
参考リンク
「小さな会社のIT担当者のためのセキュリティの常識」(Amazon.co.jp)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
事例で分かる、中堅・中小企業のセキュリティ対策
情報セキュリティ対策をしたくても、ITに詳しい人が社内外にいなくて困っている中堅・中小企業は多いのではないでしょうか。「知識不足」と「ヒト、モノ、カネ不足」の問題が目の前にあっても、対策は待ったなしの状況。予算を握る上司を説得するために、サイバー攻撃の事例を紹介しながら、その効果的な対策につながる情報セキュリティ製品を分かりやすく解説します。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー