人事部門が企業の戦略的なパートナーに
「企業のビジネスを先導するのは人事」を裏付ける4つのトレンド(2/2 ページ)
人事の未来は従業員エクスペリエンスが土台
「過去10年間にわたって、仕事と生活を統合するという考え方がますます重視されてきた」とオンライン調査サービスを提供するSurveyMonkeyのCPO(最高人材活用責任者)のベッキー・カンティエーリ氏は語る。彼女は優れた従業員エクスペリエンス(従業員の体験)を構築するには革新的で先進的な方法が必要になると考えている。
多くの企業とその人事部門は自社に優秀な人材を集めることができるようにカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の分野に目を向けている。
従業員コミュニケーション基盤を提供するSocialChorusで通信およびエンゲージメント戦略を担当する副社長、ソニア・フィオレンザ氏は次のように語る。
「企業はカスタマーエクスペリエンスやカスタマージャーニー(顧客が購買に至るまでの一連の流れ)を重視している。顧客との接点を把握し、この接点が自社にどのような影響を及ぼすかを分析するのが一般的だ。ここ数年で、従業員に対しても同じアプローチを取るメリットを理解する企業が増えてきた」(同氏)
人事部門の助言によって、企業は、通信やITなどを含むさまざまな分野を統合し、従業員との全ての接点を最適化していると同氏は語る。それにより従業員と企業、つまり自社との距離が近くなったと感じるという。
「従業員は自社の繁栄に貢献したことをもっと知り、評価されていることや自社の事業に関わっていることをさらに実感できるようになる」(同氏)
従業員エクスペリエンスにはさまざまな要素が含まれることを忘れてはならない。自由な勤務体系(フレックスタイム)から会社の風土など考慮すべきことは多い。従業員エクスペリエンスを前向きに捉えている企業では、全ての幹部がこのエクスペリエンスに注目しつつある。
人材管理サービスを提供するKeystone Partnersで業務執行社員を務めるイレーヌ・バレラス氏は次のように語る。
「経営幹部は現在、取締役会で企業文化について議論し、自社文化をより良い方向へ進化させられるビジョンを持った人事統括者を採用している。より良い自社文化が事業を成功へと導くと認識している。求職者も仕事であれば何でもよいわけではなく、自分が企業に深く関与し、付いていきたいと思えるリーダーがいる企業を探している」(同氏)
雇用者や雇用企業の人事部門としては、自社で採用者の人材育成をする必要がある。優れた企業は将来的に採用したい人材との間にパイプラインを持っていると同氏は語る。
「幹部としての素養を持ち、自社文化に貢献する人材は重要だ」(同氏)
財務のアウトソーシングを行うPaychexのトム・ハモンド氏(企業戦略や製品管理を担当する副社長)はバレラス氏と同じような考えを持っている。
「従業員エクスペリエンスは規模の大小にかかわらず、ビジネスの一部だ。従業員エクスペリエンスが素晴らしければ、中小企業であっても従業員の採用や維持において大企業と同じ土俵で戦えるようになる」(ハモンド氏)
この従業員エクスペリエンスが、従業員の維持やビジネスの成長に大きな影響を及ぼし得ると考え、適切な人事ツールを使用すれば、従業員エクスペリエンスの向上に役立てることができると、ハモンド氏は考えている。
「現在、このエクスペリエンスの一部には、人事タスクを自身で管理することができるツールの提供も含まれる。例えば給料明細を閲覧したり、休暇の残り日数を確認したり、出退勤の時間を記録したり、休暇を申請したり、スケジュールの変更を管理したりするなどだ。使いやすいツールを従業員に支給することは、従業員エクスペリエンスを向上させるだろう」(同氏)
売り手市場や転職によって変わる人事担当者の未来
人事担当者の未来は仕事それ自体が変化している。
現在、従業員のキャリアパスは昔よりもずっと流動的と言えそうだ。人事担当者にとって、この状況は難題だ。従業員が容易に転職をしたり、起業家のようなアプローチを取ったりする状況で、どのようにして従業員を自社に維持させればいいのか。
「キャリアはもはや、これまでとは違うようだ」とセントジョセフ大学のルーシー・フォード氏は言う。同氏は同大学の人的資源管理者であり、ケーブルテレビ事業のComcastやヘルスケア製品を扱うJohnson & Johnsonで数十年間人事のエキスパートとしてコンサルタントを務めてきた博士号取得者である。
「ミレニアル世代の最後の世代が労働力になってきた直近10年間でキャリアは急速に変わってきた。キャリアはすでに垂直的(上位の役職に上がり続ける)でもなければ、1社でずっと働くわけでもない。人事部門は、従業員に会社が決めたキャリアを進ませるのではなく、その個人の目標を達成するための学習機会を確保できるようにしなければならない」
雇用者は依然として学位や学歴を重視しているが、一方で柔軟に対応する雇用者も増えてきている。これは、仕事の性質が急速に変わっていることや、仕事に就けないことで奨学金の返済に困る学生を救いたいという考えからだ。
失業率が過去最低水準を維持している現状では、全ての求人に対して適切なスキルを持った労働者数は十分ではない。そのため企業は雇用過程において求人の応募要件を緩めざるを得なくなっていると、人材紹介会社であるModisで副社長を務めるトッド・ウェネック氏は語る。
例えば、雇用者はオンライン学位を10年前と比べると「ずっと肯定的に捉えている」(同氏)という。企業の中には学位をあまり重視せず、仕事の応募者が有する過去の職歴または訓練すればものになる可能性により関心を持っているようだ。
「ニューカラー(new collar)という用語が話題になっている。これは、成長の機会が提供される技能職のカテゴリーを意味し、公式な学位を必要としない」とウェネック氏は語る。同氏は多くの大手雇用主がこのニューカラーという概念を支持しており、非営利団体とパートナーを組んで、これら需要の高い労働者向けの訓練プログラムを構築すると考えている。
実際に、仕事の性質が変化したことで人事担当者の仕事は大きく変わってきている。
フォード氏は、ギグエコノミー(インターネットを介して行われる経済活動)のディスラプションや工場労働への技術の大規模導入を指摘した。同氏は多くの工場労働者でさえもロボットを操作するコンピュータスキルが必要になると言う。
「現在、10年前には恐らく想像することさえできなかった技術が利用されている。募集中の仕事に問い合わせた時に人工知能とやりとりをしたことがあるだろうか。または、自分が人工知能とやりとりをしたことがあることに気付いてさえいないかもしれない」(同氏)
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