企業の導入が着実に進む
IT、金融、そしてマーケティング――各分野の人工知能(AI)活用最前線
IT分野におけるAIの活用はコンプライアンスとセキュリティに役立っている。その他、物流、マーケティング、ファイナンスなど各分野におけるAI活用の最前線を紹介しよう。
今日、最も注目されている技術の1つである人工知能(AI)については、恐らく既に多くのことを聞き及んでいるだろう。他の新興テクノロジーと同様に、AIが提供できることについては誇大に宣伝されているふしがある。
IT部門やビジネスリーダーが抱く大きな疑問は、自分の組織は本当にAIを必要としているか、そしてその目的は何か、といったものだ。その質問に効果的に答えるには、いろいろな企業がAIを導入して実行していること、または可能になることをまず理解することが必要だ。以下にさまざまな分野でのAIの活用事例を紹介する。
IT分野におけるAI
IT部門は、AIの最大の恩恵を受けている分野の1つかもしれない。Tata Consultancy Servicesのデジタルエンタープライズグループが実施し、『Harvard Business Review』で報告された世界の835社の大企業を対象とした2017年の調査では、調査の対象となった企業の3分の1以上がIT部門でAIを活用していることが分かった。
IT分野における一般的なAIの活用事例の1つは、サイバーセキュリティを強化することだ。調査対象の組織のうち、44%がAIを活用してコンピュータへのセキュリティ侵入を検出し防御するのに役立てている。
データ侵害やその他の攻撃の事例が増えるにつれ、企業はそのような攻撃の検出と防止を自動化することが不可欠となる。サイバー攻撃は、これまで以上に洗練されてきており、IT部門とセキュリティ担当幹部にとっては、最新の脅威への対処に役立つものなら何でも歓迎だ。
Tataの調査によると、IT部門は、従業員のテクニカルサポートの問題を解決したり、新しいシステムや機能強化を生産に組み入れる作業を自動化したり、確実に従業員が認定ベンダーからの技術のみを使用するよう徹底したりする用途にもAIの活用事例を見出しつつある。
マーケティング分野におけるAI
マーケティング分野でのAIの活用事例が尽きることはない。
AIに適した分野の1つは、顧客にパーソナライズした製品を推奨することだ。人口統計、行動、過去の購入履歴などの顧客データにAIと分析を適用することで、企業は個々の顧客の好みや購入傾向について多くのことを学ぶことができる。そして、企業側は、その顧客に共感を呼ぶ可能性が最も高い製品またはサービスを顧客に推奨することができる。
企業は、この手法をクロスセリングやアップセリングなどの取り組みに適用することができる。例えば、企業は、AIを活用すると、顧客が既存の製品からより先進的なモデルにアップグレードする用意ができていると推測することができるだろう。
マーケティング分野のAIは、広告出稿の意思決定時にも恩恵をもたらす。広告費用は往々にして高額になる可能性があるので、AIを活用して、どこに投資するのが適切かを判断すると、その投資の有効性を高めることができる。
ソーシャルメディアはマーケティング活動にとって非常に重要であり、AIを活用すると、企業が既存の顧客や見込み客の見解をモニターすることが可能になる。センチメント分析を通じて、企業は消費者が製品やサービスについてどのように感じているか、そして企業が改善策として何ができるかについて、豊富な洞察を得ることが可能となる。
最後に、AIは、プロモーションの成功を製品の種類、場所、顧客構成、時節ごとにそれぞれ効果的に分析することによって、マーケティング担当者によるパーソナライズされた販売促進キャンペーンの策定を支援する。
ファイナンス分野におけるAI
ファイナンス分野では、AIが数多くの用途で活用されている。国際金融システムの監視および勧告を行う国際機関である金融安定理事会(FSB)は、2017年11月の報告書でAIの活用例を幾つか提示した。
ポートフォリオ管理を含むトレーディングは、AIを生かす用途に適している。FSBによれば、AIと機械学習は従来のマーケットインパクトモデルを補完することができる。金融機関は、AIを活用して、履歴モデルからより多くの情報を収集したり、注文フローにおける非線形の関係を識別したりすることができる。
ファイナンス分野のAI利用によって、企業はさまざまな市場の変化にどのように反応するかを自習するトレーディングロボットを構築することもできる。
FSBは、企業は自社の取引が市場価格に及ぼす影響についても懸念を抱くかもしれない、と報告している。その影響をより正確に推定することは取引のタイミングと取引実行コストの最小化の鍵となることから、企業は特定の取引における市場への影響を調査し評価するためにAIを使用している。
ポートフォリオ管理において、企業はAIを使用して価格動向に関する新しいシグナルを特定し、データと入手可能な市場調査資料をより有効に活用することができる。
規制管理下にある金融機関は、コンプライアンスの取り組みにAIを活用している。規制当局もまた、詐欺の発見や監督のためにAIを活用している。この技術は複雑なパターンを特定し、潜在的な深刻性をもつ疑わしい取引を強調し、より詳細な調査を実施するための令状を発行するのに役立つ。市場規制当局もまた、開示とリスク評価のためにこれらのAI技術を使用することができる。
FSBは、金融機関では顧客に焦点を合わせたAIの活用方法も挙げている。これには、信用度の評価、保険、顧客対応用のチャットbotが含まれる。金融機関は既に営業部門にAIの導入を進めており、大規模な顧客データを新しいアルゴリズムに入力し、顧客の信用リスクの評価とローン契約の価格算定の評価に役立てている。
同様に、このようなデータは、保険契約の販売および価格設定のリスクを評価するのに役立つ。また、金融機関は、チャットbotのようなインタフェースを持つAIや、自然言語を使用して顧客と対話するバーチャルアシスタントプログラムでクライアントとのやりとりを行うことができる。
物流業界におけるAI
運送業界の企業も物流のAI活用から恩恵を受けている。この恩恵を受ける領域の1つが、自律走行車両とトラック輸送だ。市場調査会社のVisiongainは、2027年までに世界の自律走行トラック市場規模が260億ドルに達すると予測している。AIを搭載する自律走行トラックの利点の1つは、人間が関わる要素を最小限に抑えることだ。ドライバーは長距離走行で過労になりがちで、過度の長時間運転は法令で制限されている。
物流におけるAIのもう1つの活用事例は、配送ルートの最適化だ。交通状況のパターン、気象条件、道路工事、その他の要因の予測分析により、商品を配送する際に最も効率的なルートを選択するのに役立つ。可能な限り低いコストで最速の配送ルートを決定することができ、小売業者、法人顧客および消費者への配送をスピードアップすることが可能だ。また、燃料費も削減できる。
さらに別の用途としては、予測アルゴリズムに基づく需要予測物流が挙げられる。これにより、物流会社は、消費者が実際に注文する前であっても、特定の商品の需要を予測し、物流の効率を向上させることが可能となる。需要予測物流は、需要を予測することによってサプライチェーン内の全ての関係者に利益をもたらし、需要が増加する前に製造業者が生産を増やすことを可能とする。
医療と医薬品分野におけるAI
AIは、ヘルスケア、医薬品、ライフサイエンスおよび関連分野の企業にとって有益となり得る。
この技術は、多くの患者の治療およびモニタリングプロセスに多く適用される。例えば、コンサルタント会社のAccentureが発表した2017年の報告書によると、ヘルスケア分野におけるAIを活用し得る最大の用途の1つがロボット支援手術だ。
ロボットは、医師が機器を使って行う操作の精度を物理的に補正する。また、医療記録の情報を操作指標と統合し、手術に生かすこともできるという。AIは、実際の手術事例からのデータを組み込んで、新しく改良された技術と洞察を知らせてくれる。
医療従事者がAIを活用できる患者治療に関連したもう1つの分野は、バーチャルナーシングアシスタントである。AIが患者の症状を遠隔から評価し、患者のケアが必要なときに医師に警告を発することで、不必要な患者の来院が減り、医療従事者の負担が軽減される。
製薬会社は、新薬の創成や開発にAIを使用しており、その有効性と安全性を予測するのに役立っている。AIツールはまた、医療記録および他の情報源からのさまざまな基準およびデータセットを用いて、特定の患者に対する臨床試験の妥当性も予測することができる。
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