野村総合研究所の調査より
デジタル変革に成功する企業の「3つの条件」とは?
野村総合研究所は「ユーザー企業のIT活用実態調査」結果を発表。デジタル化による価値創出を実現する企業の体制や、組織風土に関わる課題、IT投資が業績に結び付いている企業の条件を明らかにした。
野村総合研究所は2018年5月8日、「ユーザー企業のIT活用実態調査」結果を発表した。対象は、国内に本社を持つ、売上高上位企業3000社の中から回答があった507社。日本企業のIT活用力の実態を把握し、その向上の在り方を提言することを目指し、IT投資の現状や課題について2003年から定点観測を実施している。
直近の調査実施は2017年11月。回答企業の業種、売上規模は以下の通り。
業種
- 機械製造(14%)
- 素材・他製造(22%)
- 建設(8%)
- 流通(17%)
- 金融(14%)
- 運輸・通信・インフラ(8%)
- 情報サービス(6%)
- その他(11%)
売上規模
- 100億円未満(15%)
- 100億円以上(45%)
- 1000億円以上(28%)
- 1兆円以上(9%)
- 不明(3%)
この調査を基に同社は、デジタル化による価値創出を実現する企業の体制や、組織風土に関わる課題、IT投資が業績に結び付いている企業の条件を考察した。同日に開催したセミナーから、その内容をかいつまんで紹介する。
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AIやIoT、普及の壁
「IT優先度調査」の動向
日本企業のIT投資は堅調に推移、「効率化」に関心集まる
野村総合研究所のシステムコンサルティング事業本部で戦略IT研究室に務める有賀友紀氏は、今回の調査における論点について、次の3つを挙げた。
- デジタル化(注1)の流れの中で、日本企業はより積極的にITに投資しているか
- デジタル化にかかる新技術の活用を、CIO(最高情報責任者)やIT部門は積極的に検討、推進しているか
- 組織や体制はデジタル技術から新しい価値を生み出すために十分か
※注1:本調査では、情報技術を使った商品・サービスの改善や創造、ビジネスモデルの変革や創造、新しい情報技術の活用などの取り組みを「デジタル化」と定義している。
2018年度のIT投資額は、前年度比較で「増加」と予想した企業は44.3%、「減少」と予想した企業は10.0%だった。投資額増加を見込んでいる企業の割合は、2008年リーマンショック以降の調査において最も高い結果となり、有賀氏は「堅調な推移が続いている」と考察する。
新技術への取り組みについては、クラウド関連技術は約半数の企業が導入していたものの、モノのインターネット(IoT)の導入率は11.6%、人工知能(AI)および機械学習の導入率は8.9%だった。導入を検討中/検討したい企業の割合は、IoTで54.9%、AIおよび機械学習で58.0%だった。
AIや機械学習、IoTといった新技術に、企業はどのような期待を寄せているのだろうか。自由回答欄に回答があった68社のキーワードごとの言及割合を計測すると、上位3つは、「AI」が44.1%、「ロボティックプロセスオートメーション(RPA)」が27.9%、「IoT」が23.5%だった。内容の一部抜粋によれば、「人手不足を補う目的でAIを活用」「人手不足に対応したRPA、bot、AIの活用」など、業務の効率化や自動化を実現し、人手を代替する道具として注目が集まっていることが明らかとなった。
「調査実施に当たり、AIで新たな商品価値を高めるといったことや、新たな事業を創造するという回答を予想していたが、実際は効率化に言及した回答が多かった印象だ」と有賀氏は述べた。
デジタル化に向けた経営層の取り組みの現状は
新技術の導入や検討について、経営層はどう取り組んでいるのか。デジタル化に関する経営会議での検討時間の割合を業種別に見ると、「全業種」が5.5%、「製造」が5.7%、「流通」が6.1%、「金融」が5.6%、「その他」が4.8%という結果で、大きな違いはなかった。しかし売り上げ規模別では「全規模」が5.5%、「100億円未満」の企業が4.3%、「100億円以上」が4.8%、「1000億円以上」が5.9%、「1兆円以上」が9.7%と、売り上げ規模が大きい企業ほど検討時間も増加する傾向があった。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の2015年調査では、欧米有力企業の経営委員会がデジタル化に関して時間を割く割合は28%(N=412)であり、「この結果と比較すると、業種や売り上げ規模に関わらず日本企業の経営層がデジタル化に割く時間は少ない」と有賀氏は考察している。
同様に「CIOがデジタル化に関して活動する時間の割合も少ない」と有賀氏は述べた。CIOがデジタル化に関して活動する時間の割合(業種別)では「全業種」が12.2%、「製造」が12.4%、「流通」が16.5%、「金融」が11.1%、「その他」が10.5%だった。売り上げ規模別では「全規模」が12.2%、「100億円未満」が5.9%、「100億円以上」が10.8%、「1000億円以上」が15.1%、「1兆円以上」が21.0%という結果だった。
IT投資を業績に結び付けるためには経営陣の取り組みが不可欠
デジタル時代を迎えるに当たって、望ましい企業の組織風土とはどのようなものだろうか。これを解き明かすために、本調査では回答結果から組織風土を評価する5つの指標を抽出し、企業ごとに得点を算出した。企業風土を評価する指標は「社内共有指向」「ナレッジ指向」「スピード指向」「技術成長指向」「勘と経験指向」の5つ。
そして回答企業の中から業績を公開している企業221社を抽出し、IT投資(IT投資予算の売上高比率)と組織風土(5つの指標の各得点)が、収益性(経常利益率)と関連しているか否かを検証した。その結果、ナレッジとデータ、新技術を重視し、IT投資に積極的な企業ほど、収益性も高い傾向が見られたという。
「日本企業は、AIやIoTなど新技術への強い関心を持っているが、効率化や人手不足の解消といったリスク回避のツールと考えているのが現状だ。ビジネスを成長させるために新技術活用に挑戦する(リスクを取る)には、組織風土から変えていく必要があるだろう。それには経営陣の取り組みが不可欠だ」と有賀氏は述べた。
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